√D.偽りの虚飾
―4人目はね異常殺人者なんだって―
彼の名は堂島桐也はこの高校の二年生だ。
容姿端麗でイケメンの部類と称される程美形と周りからも言われている。
放課後だが、彼は現在は旧校舎前に居る。両手には黒い手袋をしている。
すると、偶然こげ茶色の髪色を持つサイドテール女子生徒が通りかかった。こんな時間だ。部活の人だろうと桐也は察する。
好都合、そう思い。袖口から折り畳み式ナイフを取り出す。柄の方を向け、築かれない様にその女子生徒に峰打ちをし、気絶させた。
女子生徒を肩に担ぎ、屋上に行ける様にさっきまでロープを張っていた為それを掴み、壁を蹴りながら上に上がる。ロープを引っかけた、踏み台にする壁は内層的に階段の部分であり、窓が一番少ない場所である為事前にここを選んだ。
屋上まで付くと、さっきまで使っていたロープを引き上げ屋上まで持ってきた。
その気絶した女子生徒の首にロープを巻きつけ、さっきまでロープを固定していた、落下防止でもある、格子にひっかけ、丁度一階の窓から見える様にセッティングした。
本来なら、彼自身が首つりを仕様としたが、計画を変更させた。
屋上でのやることを全て、終わられアリバイ工作をしに、階段を下りる。
ギシギシと桐也が動くごとに大きな音で床が鳴る。年期の入った建物の為、倒壊の噂もされているが、旧校舎であるものの実際は今でも使われており、理科の教材や美術の作品などが置いてあり、校舎内で出来ないものづくり部などは|旧校舎(こちら側)に来て制作している。噂の絶えないお約束の旧校舎とは違い結構な割合で生徒や教員が出入りしている。
三階建ての二階まで降りると、彼が居るはずと、前屈みになり声を出した。
「……無いなーどこに落としたんだろう?」
旧図書室からやはり、男子制服のブレザーをボタンをすべて止め、襟部分を着くずしたシャツをその中に着て、衿には赤いネクタイを結んでいる。血のように真っ赤な格子柄の指定のズボンを履いている。セパレート・ウエストバンドに向かって右側にウォレットチェーンが付いてある制服を着た、黒髪で癖毛より寝癖に近い髪を持ち、目付きは悪く三白眼気味の目であり、目の下に隈があり、やる気の無さとけだるさが見える、ネオが出てきた。桐也の心からの友と呼べるのはネオぐらいだろう。他の男子生徒も女子生徒も教師も親だって上辺だけの付き合いだ。桐也自身演技力は高いと自負しており、友情や行動は全て演技でしかない。だが、ネオと接するときだけは何処か素に戻れる。そのため、ネオを友と呼ぶが、本人はあまり好いてはいない。
「あ。ネオ」
そう、あくまで軽快に接した。
「どうしたんだい?こんなところで会うなんて?」
「お前に言われたくない」
「え?あ、うん。そうかもね」
確かにそうだ。戸惑いを隠せない演技をしながら、一つ間を置き、もう一度話しかける。
「でさ、「やるせないパンだ」のキーホルダー見なかった?」
桐也の趣味は変と言われる語源でもある、やるせないパンだ、とはその名の通り横たわったパンを食べるパンダのグッズである。そこまでは名前を含み可愛いものの、ビジュアルが何と言っても可愛い。横たわった三等身弱のパンダが横に横たわりこちらを向いて口から血をたらしている。黒い斑点模様はあるものの目の下には大量の隈があり鋭い目つきで見てくる。そこがネオみたいで可愛い。昔を辿れば、ネコタマンと呼ばれる猫は許せるものの妙にグログロしい幽霊のストラップや、やる木梨と呼ばれる梨の顔だけのビジュアルが可愛かったため言って集めていた。だが実際商売的には失敗だったらしく直ぐに消えていった。この様な趣味を持つ事はクラスのメンバーは知っている為に、残念なイケメンが定着しかけているのが現状。
「あれか……?オレは見てないが、ここで落としたのか?」
「そう見たいなんだよ。……困ったな……」
と、遠回しに助けてくれと言っている様なそぶりを見せつつも、ソッポを向き右手で腰を押さえ左手で頭を掻いた。
「見てないんならいいよ」
それじゃあ、とネオを真っ直ぐ通り過ぎていった。
廊下と歩く。
――悲鳴が轟いた。
校舎内の遠くの方から聞こえたが、あまり大広間というわけではないため、声が分散されず反射し奥の声が聞こえたのだろう。声は前から聞こえた。
さすがに、あんな悲鳴を聞いたため見て見ぬふりも出来ない。そう思った桐也は、聞こえた方に向かって走る。
一人の女子生徒が居た。
この学校の女子生徒のブレザーを着て、リボンを襟に結んでいる。制服の下にニットカーティガンを着て、その下にシャツを着ている。ローライズ並の短さのプリーツスカートで血のように真っ赤な格子柄。セパレート・ウエストバンドに向かって左側にウォレットチェーンが付いてある制服を着た、足にはタイツを履いている。目つきは大きな双眸でややつり目気味で、黒髪かつロングヘアーで、後ろ髪も切りそろえている 姫カットと呼ばれる髪形だ。その髪を両側面から後頭部にかけてまとめ、後ろで1つに赤いリボンで結んでいる。
あの後ろ姿は恐らく、クラス内でも人気の者でモテている女子生徒の羽場識乃。識乃さんは目を見開き、死んだ魚の様な目になり、腰が抜けた様に両足の間にお尻を落として座っている。「ど、どうしたの?」
最低限優しく声をかけたが、識乃さんは放心状態となっているようだ。
「大丈夫?」
識乃から目を放すと、ようやく築いたかの様に愕然とした。
窓の外には、サイドテールの女性が首を吊った状態で死んでいる。
後から来た、ネオは死体に驚いた。
ネオが来た事は築いているが、桐也はお構いなしに、右手で格子柄の赤いズボンからパッションオレンジと言う名称の色である携帯電話を取り出し、先ほどからポケットから外に出さない左手に、電波をジャミングする機械のスイッチを入れた。二つ折りの全面がオレンジ色の何処かレトロ感がある携帯を開き、触り始めたがその指を止める。
「…………っ!」
と、あくまで驚きと同時に唇を噛んだ演技をする。
「ど、どうしたんだ?」
「……あ、いや。……まあいいか、携帯持っているか?」
ああ、とネオは言い、スクールバックから取り出す。ネオはフューチャーフォンではなくスマホだ。そのスマホを起動させた。
「どうだ?繋がるか?」
「……無理みたいだ」
電波が通じないみたいだ。
「そうか……窓の外には死体……繋がらない電話……」
小声でブツブツと言うと、
「要するにっ!」
歯を食いしばり、時計回りに一回転しその勢いで踵でガラスを蹴ったが、ヒビ一つはいらなかった。勢いよく見せつつも、軽く踵落としをした。
「何故に踵落とし??」
「だって突き指したくないからね」
「そ、そうなのか??」
と、ネオは首を傾げた。
「……でも、やっぱりか。これで分かった事が少し増えたね」
あくまで、一人だけ納得した演技をする。
「どういうことだよ」
「閉じ込められたんだよ」
ネオは呆然とする。
「ほ、他の窓も駄目なのか」
「……でも、これは僕の推測でしかないけどね。全部のガラスを見たわけじゃないから」
親指を唇に当て悩んでいる。
「手分けし――」
「それは危険だと思うよ」
と、ネオを遮って割り込む。
「現状、固まっていた方が安全だと思うよ。今、この旧校舎がどうなっているのか分からないからね」
ネオも言い返すことは出来ないみたいだ。まあ、実際は窓に触れられてほしくないんだけなんだけど、と心の中で本心をもらす。
「ならどうする?」
「助けを呼びようがないからね」
「分かりきってることだろ?」
あくまで、悩みこむが、結論は出さず。
「安全そうな部屋にいた方がいいかもしれないけど……まあ、ここに居てもな。部屋と出口を探すぞ」
と、放心状態の識乃さんを桐也が背中に背負い走り出した。ギシギシと物凄い音を立てている。
「お、おい!あんま走るな、落ちたらどうする」
「その時はその時だよ」
走り回ること数分が経過しただろうか?廊下の突き当たりを曲がろうとするが、桐也は何かに築いた様でネオの前に手を出して動きを止めた。
「どうかしたか?」
「聞こえないか」
すると、別のところからギシギシと足音が聞こえてくる。
オドオドするネオとは反面、薄っすらとだが、好都合と言わんばかりの笑みを浮かべる。
「……うっううっ」
と、いまにも泣きだしそうなその声はこちらに近づいてくる。
「ど、どこだよ~ここ?」
弱々しいその声の人物は角を曲がってきた。
「ひゃっ!?」
その角を曲がった直後に桐也が居た為に驚きのあまり、尻もちを付いた。
その身体はガクガクと震えている。
「お、落ち着いて、ね?」
あくまで、子供をあやす様にしゃがみ込んだ。
識乃さんと同様に女子制服のブレザーを着て、リボンの代わりにクロスタイをしている。ローライズ並のこのプリーツスカートで血のように真っ赤な格子柄。セパレート・ウエストバンドに向かって右側にウォレットチェーンが付いてある制服を着た、足にはルーズソックスを履いている。頭にはバッチやチェーンを付けた猫耳の耳カバー付き帽子をかぶっている。少し垂れ目気味でけだるそうな印象与える。赤茶の外はねショートヘアーの女子生徒だ。猫崎明日葉さんだ。彼女も小柄な体格ながらも列記とした同級生のほとりだ。
「ところで明日葉さん、外に出られる出口見なかった?」
「ぼ、ボクは、そこから入ってきたけど」
と、さっき来た場所を差した。
「裏口だね。……行ってみようか」
と、桐也はまた走り出した。
その、裏口の前まで来ると、ドアノブ式の扉が合った。
桐也はそのドアノブを握り、がちゃがちゃと引いたり押したりする演技をする。もちろん開かない様にしている。
「……やっぱりだめか」
「えっ?そんなっ?!ボクが来た時は確かに開いてたのに」
と、こっそりと付いて来た明日葉さんが、急に出てきたためネオは焦る。
「脅かすなよ」
「これじゃあ、本当にクローズド・サークルのなりかけみたいじゃないかっ!」
と、桐也が投げ捨てる様に苦い顔で言った。
「く、くろーずど・さーくる?」
「オカルトには無いの?」
と、聞いたが、
「オレが知ってるのには無いな」
と、返答された。そうか、と一呼吸置き、
「クローズド・サークルまたはClosed Circleって言われている、何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指したミステリ用語の一つだね、まさしく今がその状況に近いんだよ。まあ、この中では事件は起こってないけど、その外では起こってるみたいだけどね」
「どういうことだよ。オカルトならまだしも「ミステリー」って何でそんな事になってるんだよ」
「僕に聞かれても知らないよ。まあ、それよりも、どうやって脱出するよりも、どこで考えるかだよ」
「どうしてだ」
「こんな所で立ち話するのかい?僕は嫌だよ」
あくまで、誘導する。
「……わかったよ」
あまり乗り気ではないみたいだが、渋々付いてきてくれるみたいだ。
探し回る。
と、旧校舎にある元教室を探す。
「ここは?」
一指し指でネオが差したのは旧理科室だ。
薬品などが管理されている教室だ。今でも準備室として使われている。
「……ここはかなりまずいよ」
あくまで、態と口元を制服の袖で隠す。
「危険物類が充満してる。微かだけど漏れだしてる。設備的には申し分ないけどここは離れた方がいいよ」
と、すぐさまその場を離れた。
「……でも、おかしいな。理科準備室として使われてるはずなのに、こんな状態になってるなんて」
桐也は独りごとの様にぼそぼそと言う。
「……なら、旧図書室は?あそこなら問題ないよね?」
ネオはまた提案した。
「行ってみるか」
と旧図書室に向かった。
埃だらけなのが何分問題だが、広々とした空間である。
「ここなら問題ないと思うよ」
もう少し面白い謎に出来たらよかったんだけどね。僕が死ねなかったから。急遽仕立て直したけど、面白みに欠けるな。
埃を払い四つの椅子を座れるようにした。そこには円を描く様に時計回りに桐也、目が覚めた識乃さん、ネオ、明日葉さんの順に座った。
「まずは、この状況をどうしようか」
まずは桐也が喋り出した。
「どうもこうも、脱出するに決まっている」
「でも、どうやって?」
「ここに来るまでどこも開いてなかったらしいですね」
と、ネオ、明日葉さん、識乃さんの順に次々に口を開く。
「じ、地面を掘る?」
「どうやって?」
「……壁をぶち抜く?」
「そんなことしたらこの建物自体が倒壊しかねないですよ」
ことごとくネオの案は論破される。
「ならどうしろって言うんだ」
「だから、それを考えてるんだろ」
あくまで、少し怒った様に言う。ネオは渋々大人しくしたみたいだ。
「……では、気を取り直して。クローズド・サークルじみているらいしですが、殺人が起こる可能性はあるのですか?そうなれば本当にクローズド・サークルになってしまいます」
「真っ先にそれを言っちゃうの?」
ド直球な識乃さんの回答に首を傾げながら呆れた表情の明日葉さんが言った。
「さあ。わからないね。相手の深層心理が読めないと、どうとも。まあ、僕的には何事もなく皆で脱出できればいいけど。人間ってものは恐ろしいからね。言葉ではそう言っても追い詰められれば何をするか分からない」
あくまで、他人事のように演技する。
「それでは、おちおち寝ていられませんね。夜更かしはお肌の天敵ですが」
と、少ししょげた表情を浮かべた。
「まあ、それが一日で終わればだけど」
それに止めの追い打ちをかける様に明日葉さんが言った。
「そうだね。一刻も早く脱出できればいいけど。もしかしたらこのまま――」
遮る様に大声で、
「も、もうやめてください!!」
識乃さんは目を閉じ必死に耳を両手で押さえた。
「……そうだね。話を戻そうか。まずはどうやって脱出するか、だね。何かある?レディーファーストで」
桐也が右手を出した。
そして、識乃さんが先陣をきる。
「そうね。ここの扉と窓本当に開かないの?」
「ああ」
「でも、今までの話を聞いて思ったんだけど、それって、桐也君しか触ってないんだよね?それっていくらでも誤魔化し様が出来たんじゃないの?」
「え?何で僕が皆を騙す必要があるのさ?」
あくまで、おぼけた様に少し焦り気味に演技するが本心では冷静なまま。
後に椅子から前のめりになり明日葉さんが続いた。
「それもそうだよ」
首を傾げながら、
「考え過ぎなのかな?」
「そうだよ」
「まあいいけど」
と、その話はそこで終わった。
「なら次ボクね」
はいはーい、という感じで明日葉さんが手を上げた。
「あの旧理科室についてなんだけどさ。やっぱおかしいよね。確かに桐也の言うとおり微かにだけど嫌な臭いがしたけど。あの旧理科室は未だに準備室として使用されてるって、桐也もあの時言ってたしさ。あんなんじゃ、準備なんてどころじゃないよ。……まさか薬品でも割れたのかな?」
ムスッとした。
「さすがにそれは確かめようがないね。でも、もしかしたらあの中本当にやばいかもしれない」
だが、明日葉さんの耳と鼻は動物並と噂されている為、既にバレているだろう。
「まあ、ボクもあんまり深い事はわかんないんだけどさ。はい、ボクの話し終わり」
と、自分で終わらせた。
「じゃあ、僕だね。扉と窓と理科室は言われたけどまだおかしな点はあるよ」
「何なの?」
と、明日葉さんが聞いた。
「どうして僕らが集まったってこと」
「確かにあまり疑問には浮かばなかったけど、言われてみればそうね」
俯き右手を口に当て識乃さんは悩む。
「偶然にしては出来過ぎだしね」
桐也は話を続ける。
「どういう経緯でここに来たのか、教えてくれる?まずは僕からね。僕は今日の理科の準備でここに一度来てたんだ。授業が終わって築いたことなんだけど僕の携帯ストラップが無い事に気が付いて、放課後旧校舎と通った場所を探してたんだ。結局今も見つかってないんだけどね」
あくまで、苦笑しながら頭を掻いた。
「それってどんなの?」
「「やるせないパンだ」っていう奴」
「んー。どれかはさすがに分かんないけど見てないな」
「私も見てないわ」
「どこ行っちゃったんだろ。本当に、まいったな。それを探している最中に旧図書室で会ったのが、ネオなんだけど」
「ネオ?」
「居たっけそんな人」
と、識乃さんと明日葉さんが顔を合わせた。
「…………喋っていい?」
「あ。音遠君のことですか。いいですよ」
と、識乃さんに優しい声で言う。
「オレは旧図書室で本を見てたよ」
「そうなの?」
「でも、今日はあんまり見れなかったけど。堂島と悲鳴のせいで」
「ごめんなさい」
と、識乃さんが謝った。
「私は美術の時間の美術品を旧校舎に戻して帰ろうとしたら、出くわしたのよ。アレに」
アレと言うのは多分窓の外に会った死体だろう。
「それだけ?」
識乃さんに対してはどこか辛口な明日葉さんだ。
「ボクはものづくり部に行こうと思って旧校舎まで来たんだけど、よくよく考えると今日部活ない事に気が付いて帰ろうとしたときに、桐也達に会ったけど」
「だから泣いてたのか」
と、あざ笑う様にネオが言った。明日葉さんは顔を赤く染め、
「し、仕方ないでしょ!恥ずかしかったし!」
「でも、どうして裏口からきて表口に来てたの?」
今度は桐也が聞いた。
「ただの癖なの。部室は裏口から言った方が近いし、帰り道は表口の方が近いから」
「そうなのか」
自己満足したのか桐也はバッサリと切った。
「それじゃあ、全員それぞれの理由があったということか」
「みたいですね」
「ようは収穫ゼロ」
「だね」
と、明日葉さんはつまんなそうに頭の後ろで腕を組んだ。
そろそろ暗くなってきた。電気はあるものの、年期が入っている為、電気さえつかない。そもそも、電線が繋がってるのかも不明だ。そこまではさすがに確かめようがない。普段からさほど明るくは無いため、懐中電灯を持参していたネオは懐中電灯を点けた。形状は少し変わっており、ランタンの様な懐中電灯だ。
「でも、一日だけだとしても男女が一緒ってのは色々まずくないのか?」
と、ネオが言いだした。
「なら、一応探してみるか?」
「こんな暗い中をどうやって?懐中時計はもう無いが」
「携帯で何とかなるだろ」
桐也はポケットから携帯を取り出し明かりとして前を照らした。それにつられる様にして、ネオも、携帯を取り出し前を照らした。
「それじゃあ、何かあったら呼んでくれよ」
そういい、桐也とネオは部屋を後にした。
「うん」
「わかりました」
明日葉さんと識乃さんは同時に返事をした。
床はギシギシと音を立てる。明かりは二つの携帯の小さな明かりしかないため、かなり暗い。
「……やっぱり暗いな」
「なら。引き返すか?」
あくまで、平常通りに。だが、桐也自身暗所恐怖症とまでいかないが、暗いところはあまり好かない。
「どうかしたのか?」
「ん?いや。何も無いけど?」
あくまで、ネオに感付かれないようにおとぼけ、空元気の様な微笑を浮かべる演技をする。
「そうなのか?いつもと雰囲気が違う気がするが……」
「そう?こんなものだと思うけど」
ネオは首を傾げた。
――女の悲鳴が轟く
その声がした方を向いた。その方向は旧図書室の方向からだ。
「あっちって!」
と、ネオが言いながら、桐也を残し一人で突っ走る様に引き返した。
ネオを見て、呆れ半分で頭を掻いた。
「まあ。いいか、予想は出来るしね」
誰もいないためか、素で独り言を言っている。
「これからどうしようか。追い駆けてもね、跡からかけ付けたみたいなヒーローキャラでも無いが」
どうでもいい事で、腕を組み悩む。
まあいいか、そう言い。早歩きで歩き出した。
ようやく追いついて来たかの様に桐也は息を荒くしドアの角を掴んだ。
「……ど、どうした?――!!」
あくまで、識乃さんに築いた演技をする。
桐也も旧図書室の中に入ってきた。
「どうなってるんだ!!……本当に死んでるのか?」
「……何で見ただけで信じるってわかるだんだお前は?!」
「少し冷静になった方がいいよ、疑心暗鬼になったらまた起きるよ」
ネオを黙らせた。
桐也は一度息を整え、識乃さんの前に片足を付き座り込んだ。
ドラマの見過ぎかと思われそうだが、見よう見まねながら、
「……い、息はしてないみたいだね。心臓も動いてない。脈もだね。身体も少し冷たい。致命傷は恐らくこの刃物だろうね。死後から、それ程時間は経ってないってことだね」
あくまで、平常心で淡々と識乃さんの身体を触り確かめる。
「当たり前だ。オレ等が出てってからそんなに時間は立ってない」
「だね。でも、この刃物って言うかナイフかな?いや、工具?みたいな形状だね。この形……アーミーナイフの一部か?」
「アーミーナイフって確かツールナイフみたいな奴だよな」
ネオは知っている知識を掘り出した。
「まあ、一緒のものだからね。なんで、アーミーナイフの一部があるんだ?持ってきたのか?誰が?」
「知らないから」
「……まあ、そうなるよね」
腰を上げ、立ち上がった。
「でも、ここに居たのって。君だけだよね」
と、右の腰に右手を当て、猫崎の方を向いた。
「ボ、ボクじゃない!?」
「でも、君しか考えられないんだよ。明日葉さん」
これも、ドラマの見過ぎと言われそうだ。
「ボ、ボクは覚えてないんだ!」
「覚えてない?ショックで記憶を失ったのか?」
明日葉さんの顔が真っ青となり、
「で、でもこれだけは覚えてる。記憶を失う前、識乃が襲いかかって来たんだ!本当だ」
「……帰り討ち」
ボソッと小声で音遠が言う。
「……え?」
桐也が考えるのをやめ、ネオの方を向いた。内心、来た、と思った。
「「致命傷」「血痕」「凶器」「工具」「アーミーナイフの一部」「私物」「殺人」「計画」「失敗」「図書室」「異常な理科室」「ものづくり部」「やるせないパンだ」「開かない窓」「閉じ込められる」「窓の外の死体」「繋がらない携帯」「偶然の出会い」」
「な、なんなの?」
明日葉さんは動揺を隠せない。
「「嫌がらせ」「悪口」」
「僕は巻き込まれるのは嫌なんで、これで」
あくまで、桐也は何かを知っている様な口ぶりで旧図書室から出た。
「クッ、クヒッ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
盛大にお腹を押さえ、高笑いをする。
教室の声がここからでも鮮明に聞こえてくる。
「――障害」「人格」「解離性人格障害」「二重人格」」
「な!どうしてそれを。――――な~んて言うと思ったのか?」
明日葉の口調が豹変した。噂のもう一つの人格だろう。
猫耳帽子の中から、カッターナイフやホッチキスなど文房具がボロボロと出て来る。その中から、右手でハサミを取り出す。そのまあ、ネオ、心理操作のスペシャリストに襲いかかる。
だが、華麗に避け続ける。
「「10分もたたない」「帰り道」「廊下」「走る」「死体」「発見」「血だらけ」「誰の血」「明日葉」「明日葉」「猫崎」「猫崎明日葉」「死」「ハサミ」「切る」「七刀る」「キル」「車斤る」「斬る」
ハサミを付きつけるが、当たらない。と言うか、少しづつだが明日葉の動きが鈍くなる。
「――停止」
ピタッと動きが止まる。身動きが取れなくなる。
「右手斬れ」
明日葉は言われるがまま、自分を切った。
そこから、血が溢れ出す。そのまま、明日葉は倒れた。
「……自分は手を汚さない。なんて、殺人鬼何だ。君は。憧れちゃうね」
被害を受けないように廊下の壁に持たれていたが、
「……さてと。憧れる君を僕が殺すけどね」
両手に黒い手袋をして、旧図書室内に入る。
袖に隠し持つ、折り畳み式ナイフを取り出す。そのまま、前に走り出した。
「殺」「人」「鬼」「斬る」
「残念。僕には効かないよ」
「まあ。首を切り落としても良かったんだけど」
片腕が吹っ飛んだ。
「い、異状」「しょ、正気」「ひ、否定」
「君がそれを言うのかい?まあ。冥土の見上げって言うのかい?僕は居たって普通だよ。これだけは本当さ」
そう言うと、ナイフを下ろした。もう致命傷を負っている為、傷つける必要はないと判断したのだろう。
新しいロープを出し、ネオを椅子に座らせ、縛り付けた。その下に、ネオが好きだった、オカルト集シリーズの一冊を置いた。
袖に仕込んであった複数のナイフを床一面にばら撒き、その近くに余った椅子を置いた。また新しいロープを取り出し、首つり用ではなく、窒息しかけるほど、きつく締めあげる。かすれる視界の中、そのナイフの海に飛び込んだ。絶命するまでに、椅子を蹴り飛ばした。
――そこから、後の事は記憶にない
『ニュース速報です』
『昨晩何者かに殺された4人の男女の死体が発見されました』
『4人は同じ学校の学生であり、交友関係は不明とのこと』
『少年は首に紐が巻かれ、体中でナイフが刺さった状態で発見された』
『警察は事件の線で捜査を進めている模様』
『現在、4人以外にも居たのではないかと捜査中の事ですが、難攻が予想されるでしょう』
『――それでは、次の演目です』