002 契約履行
遅くなりました。
「は?」
「だから、私は神様です。」
そう言ってのけた彼女は、ダダの子供の霊にしか見えなかった。しかし目は真剣そのものである。
「ふーん……。」
とりあえず、俺の経験が嘘を言っていないと教えてくれる。
「え?疑わないの?」
「ああ、お前は嘘を言っていない。」
「あ、そう。こんな簡単に……。」
なにやら思考しているアレを放っておいて、俺はふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。
「お前ってさ、名前あんの?」
そう、俺はコイツの事を「アレ」呼ばわりしていた。もし仮に、この方が天照大神あまてらすなどであった場合、神を信じる俺はどうなるのだろう?俺はとある神を信仰している。
もし、仮にハーレムの神様にこの事が伝わってしまったとしたら……?
「お、俺のハーレム計画がぁぁぁぁ!」
こ、こうしては居られない。今までの目に余る行いを
「すいませんでした!」
謝罪せねば!俺は、たぶん人生で始めての、そして最後になるであろう土下座をした。そして驚いているであろう彼女に問いかける。
「失礼を承知でお聞きしますが、貴方はどういった神でいらっしゃいますか?」
「私?ああ、名前は無いよ。」
「え?」
「あのさ、日本には数多の数の神が居るの。あなたも八百万やおよろずの神って言う言葉は、聴いたことあるでしょう?アレと同じでね、神にも色々居るの。まず一番身近な……。」
それはそれは長い話であった。簡単に言うと
神の種類として
1.自然物や自然現象を神格化した神
2.思考・災いといった抽象的なものを神格化した観念神
3.古代の指導者・有力者などを神格化したと思われる神エウヘメリズム
4.万物の創造主としての神(ここにおいてはthe Godである)
5.万物の創造主・主宰者としての全能の天
のように分かれており、彼女は恋愛の思想が具現化した観念神であるが、同一神おなじたちばのかみに立場を取られ、名を奪われたらしい。そうして名を持たなくなった彼女は、名を奪い返すため人間の願いをたくさん叶えたい。その手駒として
「俺をほしがった……と?」
「そうなるわね。」
「概要は理解した。しかしなぜ俺なんだ?説明にあった通り恋愛の思想を持った人というのなら、他にも居ただろう。だから、決め手となる何かがあるんじゃないか?」
「えーと……。」
先程まで饒舌であった彼女は、その話題を出したとたんに暗くなった。
「……どうしたんだ?」
何か言いにくいことでもあるのだろうか?
「うーんと、それはアレだよ。うん。それで、まだ契約は完了させないから。一度お試しって事でどう?」
うーん。話をそらされた気がするが、言いにくい事なのかも知れない。仕方ないか。
「いいよ。それは俺が恋のキューピッドになるという認識で良いんだな?」
「ええ。」
「よし、やってやろうではないか。」
「え?もっと考える時間をとってもいいんだけど……。」
「逆に今すぐが好ましい!」
「そう、だったらよろしくね。」
「おう。」
こうして俺は恋のキューピッド(仮の)となった。
「で、何をすれば?」
「うーん、具体的には明日の学校、誰かの恋を成就させるのが目的になるわ。」
成るほどそれなら高校生の俺にも出来そうだ。
そんなことを考えながら、ふと時計を見るとすでに12時を過ぎている。俺はこの一日を全て神様の話に費やしてしまった。
「あーあ。疲れたから俺は寝る。お前は?俺と一緒にnへぶっ。」
痛い。こいつに冗談が通じないのはよく分かった。もうやめておこう。
「嘘だって、何をしてても良いが俺の家族には見つかるなよ。」
「分かってます。」
その言葉を聞いた俺は、安心して眠りについた。
まだ、何がなにやら分からないと思いますが、次回にご期待ください。