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委員長の通信簿 5

 今日の天気は快晴。

 昨日の晩の天気予報どおりカラッと晴れた朝だ。

 チラッとカバンの中身を確認する。

 昨日姉貴と一緒に見た恋愛指南書(女の子用)が入っている。

 ただ一つ誤算があるとしたら、昨日中々姉貴が寝かせてくれなかったってことだ。

 10時ごろから見始めて、読み終わったのが夜中1時。

 普段12時には必ず寝ている俺からしたら、かなりの夜更かしだ。

「ふぁぁ~」

 たまらず、あくびが出る。

「また夜更かししたの?昨日から連続じゃない。なにか悩みでもあるとか?」

 隣を歩いていた佐奈が、たずねてきた。

「いや、そんなことは無いんだけど。昨日姉貴が中々寝かせてくれなかったからな。かなり寝不足だ」

「ふ~ん、瞳姉が寝かせてくれなかったんだ。……姉弟で、そんな関係なんだ。いやらしぃ~」

 汚らわしいものを見るような目をして、俺からササっと距離をとった。

「おい!何を想像したんだ?!」

「うわ、女の子にそんなこと言わせるんだ……この変態!」

 いきなりの罵倒。理不尽だ。

「言葉に出来ないようなことを想像するお前のほうが変態だ!」

「あ、秋彦に変態って言われた!?変態に変態といわれるなんて……屈辱!」

「いつから俺が変態になったんだ!?」

「そんなの、人類が誕生する前から決まっていたことよ。今更言ってんの?」

「マジかよ!!」

「嘘に決まってるじゃん!ばっかじゃないの?しかも、今のやり取り全部冗談だしね。もしかして、ほんとに私が変なこと想像してたとでも思ったの?」

 ばかだなぁ~って、笑顔で言いながら俺から走って逃げていく。

 寝不足で追いかける気力も起きない。

 はぁ~、昨日も言ったけど、あいつのああいう顔を見ると特に起こる気力もなくなってしまうし。まったく、ずるい奴だ。

 とにかく、今日は佐奈にかまってられない。とりあえず、今井と話さないと始まらないよな。

 店長に色々言われたけど、この計画をやめるつもりなんて毛頭ない。

 毎日が退屈なら自分が行動を起こして変化をさせる。

 このことを俺はキサラの言葉で気がついた。

 だから、今井もこのことに気がついたらあんな顔をすることも無くなると思う。

 よし、一つ気合入れていきますかね?

 

 ◆


「あれ?今日は夫婦で一緒に登校しなかったのか?」

 教室に入ると北原がいきなり話しかけてきた。

 今井が座っている席のほうを見ると、いつもどおり今井が北原を見ている。

 ただ、いつもと違うのは俺の視線に気がついたのか、あわてて視線を逸らした事くらいだ。

「毎日ずっと一緒にいるわけじゃないぞ?」

「そうか?俺にはずっと一緒にいるっていうイメージしかないんだけど。まぁ、お前と平久保さんが離れてくれてるほうが、俺には好都合なんだけどな!」

「そうか、それは良かったな」

「うわ、何その言い方は?全然ライバルとして見られてないってことか?!」

「そもそも、なんのライバルだよ?」

「もちろん、平久保さんを巡る争いのライバルに決まってるじゃねぇか!」

「あほらし」

 そう言うと、俺は北原に背中を向けて自分の席のほうへと向きを変えた。

「余裕ぶっこいていられるのも今うちだからな!すぐに、その余裕そうな顔を悔しそうな顔に変えてやるよ!」

 北原が何か言ってるけど無視だ。相手にしてるだけ無駄だし。

 北原を無視して歩き出そうとしたときに、先に学校についていた佐奈が話しかけてきた。

「ずいぶん楽しそうな話してるね。秋彦遅かったじゃん。てっきり追っかけてくるもんだと思ってたから、突然居なくなったみたいで結構びっくりしたんだよ?」

「こっちは寝不足でしんどいんだよ。走る元気なんて無い」

「そっかそっか、まぁいいや。別に用事があるわけじゃないし。それじゃ」

 そういうと、佐奈は自分の席へと向かっていった。ふと、妙な威圧感を感じたので振り向くと、ものすごい形相の北原が居た。

 むしろ、鬼がいたって言ってしまってもいいくらいすごい顔をしている。ヤバイ、噴出して笑い出してしまいそうだ。

「くそ!すぐ近くに俺もいたのにスルーかよ!ちくしょー!!」

 北原がそう叫びながらいつもどおり教室から走り出していった。

 毎日毎日良くやるよ。

 例の如く、今井は……以下略。

 そんなに、気になるなら直接話すればいいのに。

 まぁいい、とにかく行動を起こすのは昼休みだ。

 午前中の授業の間に、どうやって話をするか考えないとな。


 ◆


「なぁ、佐奈。どういう風に話しかけられたら、女子ってついてくるんだ?」

 どういう風に今井に話しかけるかを、午前中の授業中ずっと考えていたんだけど結局答えが出なかった。

 そして、藁にもすがる気持ちで佐奈に聞いて今に至る。

「秋彦、もしかしてナンパでもするつもりなの?」

 軽く引きつった顔をした佐奈が尋ねてくる。

「いや、そういうつもりは無いんだけどな。ちょっとした興味って言うか」

「ふ~ん、そうなんだ。っていうか、面識の無い人から話しかけられても絶対私なら無視する。係わり合いになりたくないし」

「じゃあ、面識ある奴ならどうなんだよ?」

「ん?それって、友達って事でしょ?じゃあ、普通に話し位するわよ。例え北原君でも」

「ここで俺の名前が出てくるか!?」

 突然、隣に座っていた北原が大声を出して立ち上がった。迷惑だから、騒がないで欲しいんだけど。

「よかったな、話しかけられて。今の気分はどうだ?」

「ものすごく複雑だよ!!」

「突然ただのクラスメートに話しかけられたら、複雑な気分になるらしいわよ?」

 弁当を食べながら、さも当たり前のように言う佐奈。

 小さいときから口が悪いとは思っていたけど、ここまで悪いとは思ってなかった。

 というより、最近はこの毒舌の標的になってなかっただけなんだけど。なんというか、北原ご愁傷様だな。

「まぁ、冗談は置いておいて、私は弓道のミーティングがあるからそろそろ行くね。あ、北原君」

「はい!なんでしょう?」

「あんまり大声出すと迷惑だから、食事中はあんまり騒がないようにしてね」

「どちくしょー!!!」

 そう叫ぶと、北原は例の如く教室から走って出て行ってしまった。

 まぁ、あれだけおもちゃにされたんだから、誰でもああなってしまうだろうな。

「う~ん、最近北原君のリアクションにも飽きてきた。どうしてリアクション芸人ってワンパターンばっかりなんだろうね」

「いや、あいつ芸人じゃないし」

「そうなんだけど、どうしても上○竜平みたいな気がするのよね。まぁいいわ、とりあえず私いくから。秋彦はしっかり噛んでご飯食べるように。それじゃ」

 そういうと、忙しそうに佐奈も教室を出て行ってしまった。

「さて、と」

 残っていた弁当を口の中へ掻き込んで、教室を見渡して今井を探した。

 いつも食べている女子の集まりの中には居ないみたいだな。じゃあ、あいつの席は……あ、居た。

 自分の席で本を読んでるみたいだ。

 う~ん、本を読んでるときに人に邪魔されるのって、ものすごく嫌な気分になるからなぁ~。

 けど、今を逃すと放課後までチャンスないし。……よし!とにかく行ってしまおう!

 そうと決まれば、さっさとやってしまおう。

 俺は弁当を片付けると、そのまま今井のほうへ歩いていった。

 

 今井のほうへ近づいていった俺は、今井の読んでいる本を見た。

 ちょうど挿絵のページが開かれていて、その絵は俺も見たことのある絵だった。

 ブックカバーで表紙は隠されているけど、確実にそれはライトノベルと分類される本だ。

「その本って、もしかしてと○ドラ!か?」

 本に集中していたのか、俺が近づいていたことに気がついてなかったらしい。

 俺が声をかけたときに、肩をびくっとさせて驚いていた。

「な、なに?なんか用?」

 読んでいた本を慌てて胸の前でぎゅっとかばうように隠した。

「その小説、おもしろいよな!俺もハマって一気に最後まで読んだよ」

「そ、そう?」

「おう、そうだよ。っていうか、今井もそういうの読むんだな。もっと、普通の文学小説とか読んでそうなイメージだったんだけど」

「別にいいでしょ。……こういう小説の挿絵って絵が可愛いじゃん」

「まぁ、確かに可愛く描かれてるよな。ターゲットが男の子だし」

「私ね、こういう可愛い絵が好きだったりして、結構読むのよ。内容もおもしろいし」

「確かに面白いよな。厨二設定とかハーレムとか多いけど」

「厨二ってなに?良くわかんないけど、まぁ、そのこういうのが好きなのよ。なんかオタクっぽくて恥ずかしいけど」

 あ、そういう自覚はあるんだ。

「恥ずかしいんだったら、家で読めばいいだろ?こんな見つかりやすい場所で読まなくてもさ」

「あんたも言ってたでしょ?一気に読んだって。それくらいおもしろいんだから、続きが気になって仕方ないもん。とにかく、他の人には内緒だよ?知られるの恥ずかしいから」

 お前はツンデレか?俺にデレても仕方ないんだぞ?わかってんのか?

「誰にも言わないよ。あとさ、今からちょっとだけ時間あるか?すこし話があるんだけど」

「話って私に?まぁ、いいけど。少しだけだよ?続き読みたいし」

「じゃあ、とりあえず屋上に行こうか」

 こうして、俺は今井と屋上へと向かった。 

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