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1.彼なら
1.彼なら
――彼なら、そうすると思ったんだ。
僕は心の中で、誰にともなく言い訳をした。
――そう、彼ならそうすると思ったんだ。
けれど僕の訴えは誰にも聞こえない。当然だ。僕は声を発していない。それに、発したとしても誰にも届かない。何故なら、僕の周りには、もう誰もいないのだから。
――彼なら、そうすると思ったんだけどなぁ。
人間のいない地球。
僕は、彼もリセットを、デリートを望んでいると思ったんだ。遊びで作ったものがゴミになる。よくあることだ。ゴミは焼却せねばならない。僕は、彼の代わりにそれをしただけだ。この、手元のスイッチで、世界中の人の機能を停止させた。
彼は喜んだだろうか?
しかし、肝心の彼は僕に何も言ってくれない。
仕方がないので、僕は仕上げに自分を停止させることにした。
さよならだ、地球。