輝く瞳の涙
少女は続ける。
声はまだ震えていて、涙が頰を伝う。
「マリーちゃんが悪いの。私のお人形を取ったの」
『何か』は静かに頷く。
優しく、穏やかに。
「うん。お人形を取るのはダメだね。それはマリーちゃんが悪いね」
少女の目から、涙が次々と零れ落ちる。
一度溢れた感情は、もう止まらない。
「そうだよね……マリーが悪いよね…… 私、悪くないよね……?」
『何か』は繰り返す。
潰れた瞳に、変わらぬ優しさを宿して。
「うん。それはマリーちゃんが悪いよ。勝手に人形を取るのはダメだ」
少女は泣きながら、唇を強く噛む。
そして、ぽつりと、しかしはっきりと零す。
「だから、私、マリーの耳を噛み千切ってやったの」
『何か』の思考が、一瞬、止まる。
少女は続ける。
彼女の声に、かすかな強さが混じり始める。
「マリーの耳を噛み千切ったら、ショーンがやって来たの…… マリーが悪いのに、邪魔したの……だから、私、ショーンの目を潰してやった……!」
風に揺れる葉の音だけが、鮮やかに聞こえる。
『何か』は、それ以外の音を捉えられなくなる。
目の前の少女の発している言葉がよくわからない。
だが、少女の言葉は止まらない。
「倒れたショーンの頭に、私、花瓶を叩きつけてやったの。ショーンの頭から、赤い花が咲いたの。凄く綺麗だった……!」
少女の瞳が、輝き始める。
涙の向こうで、純粋な喜びのように。
『何か』は想像する。
それは、綺麗ではない。
血と肉片と、崩れた骨の破片。
「周りの皆は泣いてた。綺麗な花なのに」
少女は淡々と続ける。
『何か』は思う。
そうだ。自分の想像の中でも、皆、泣いている。
それなのに、少女の瞳は、ただ輝いている。




