英雄と王冠の飾り
お読み頂き有難う御座います。
上にも下にも突っかかる系パワハラ男が出てまいりますね。
私の名前か? 私はヴォルグ・グイル。グイル子爵家の一子だ。
我がグイル家は元は準男爵で、四男だったが、兄達は夭折。だが、内乱での我が功により父が子爵位を賜った。
もっと高位を私自身に授けて頂くべきだとは思ったが、父祖の誉れとなるならば……まあ、仕方ないな。いずれもっと上に行くのだから、過程としてはまあ我慢しよう。
私自身の功績は……まあ、有名だろうが話してやってもいい。
知っての通り、我が国は群島だ。それぞれの領地を治めているのは、国の大半を占める下級貴族。
単なる纏め役に過ぎない王は、我らが豊かになるよう予算を汲むべきだろう。個人の贅沢など以ての外。王として働くのに、華美など要らない。
百年程はキチンと、我らへの下へ意向と機嫌を伺いに来ていたと聞いている。
無能に王冠を与えてやったのだから、当然だ。それが履行されないから内乱となった。
私のような相応しい者が上へ行く。単純な話だろう。仕方ない。
多少田畑は荒れて町は焼けたが、理想の為にはそういうものだろう。民草が実を粉にして働けばいいのだ。
まあいい。
そう言えば、先日無礼な寸足らず女が来たな。
私はああいう賢しげな女が苦手なんだ。
欲を解消する相手、としてだけならいいが、けたたましくて嫌になる。知恵もない分際でな。
しかし、平民女は汚らしいし、貴族女は金が掛かる。勇敢で漢らしい私に相応しい妻は何処にいるのだ、と悲嘆に暮れた時もあったな。
だがまあ、リン様は素晴らしい。
手足は短いし、碌な手入れもしていない見目だったが、性根は修道女らしく弁えていたしな。
庶子とはいえ、王女らしく平民よりもよく働いていて、私に敬意をよく払う。
つい先日まで王冠の飾りだったボンクラ共と違いは明らかだった。
私の全てに感動し、私を讃える。リン様は私の理想的な妻となるべき方だったんだ。
あれなら多少磨くだけで、誰よりも輝けるだろう。いずれ私の被る王冠の飾りとして、隣りにいるのに相応しい。
彼女の言葉は、態度は実に身に沁みた。
他の神職共の甘っちょろい話よりも、私の求めるものを分かっていた。
神によって作られた愛は見えない。だから、唯一を見つけた時に胸に刺さるのだと。
まさしくリン様と私は、分かたれた愛を持つ者同士。選ばれし者だ。
ただ、可哀想に彼女は常に怯えていた。
何に? だと。
あのだらしない王国産の貴族女に、決まっているだろう。
国から堕落の烙印を捺されながらも、のうのうと修道院の庇護に縋る寄生虫のような女。
修道院にいた割に、肉の付いた体をしやがって。
リン様に世話されていたらしいから、無理矢理哀れを誘っていたのだろう。
ああいう女は本当に良くない。物欲しげな目を、私の鍛えた体に向けていたからな。
リン様に嫉妬していたのだろう。
あのような清らかな方と、あの女の価値などガラクタと宝石よりも差があったからな。
追放の理由?
国でも、あの体で婚約者や他の男を操っていたのだろう。決まっている。
それにしても、そなた。中々いい体をしているな。そのようなつまらん話よりも、我が軍に入れ。
きっと仲良くやっていける。
リン様を失って、寂しいからな。下賤な生まれでも、男なら兵隊として歓迎だ。
ああ、リン様。清らかな私だけの女。
あの女がしたり顔で手を下したに違いない。早く始末しなければ……。
パワハラ男俺様風味ですね。顔はいい方ではありますが。




