49 1年後とそれぞれ(他者視点)
彼の突然の死から1年経った。
まだ癒えない悲しみはあるけど、友人だった自身は立ち直っていた。
就職先も決まり、後は卒業に向けての課題対応や、引っ越し準備だ。
彼の命日頃、御参りに伺わせてもらおうと、彼の家族に連絡を取ると、彼女が既に御参りに来ていたらしい。
御参りをして、彼の祖母と1時間ほど話して帰ったそうだ。
その際、就職先は県外で、御参りに伺うのはこれが最後になる、彼のことは忘れないでいると話していたと。
彼の母親は彼女と会いたかったらしいが、彼の弟の用事で出かけてしまい、入れ違いになってしまったらしく、残念がっていた。
中学時代を聞けば、彼の母親は彼が学校に行かなくなって程なく、彼女とたまたま遭遇して話したのだそうだ。
彼女から「彼が会ってもいいと思うまで会わない」と聞いたことと、彼も彼女の話をしないし、自身の問題だ、と言っていたので、彼の母親は触れないでいたのだと。
彼の母親は、彼のことを忘れないという言葉が嬉しかったそうだ。
彼が彼女のことを特別に思っていたからということもあるが、1年経ってからの言葉は、彼女の本心だと信じられたのだと。
彼の御参りに1年経って来たのは、自分と彼女だけだった。
泣き崩れていたはずの同級生達は、泣いていない彼女のことを薄情だと言っていた同級生達は、自分以外誰も来ていない…薄情なのはどっちだ。
彼の母親から話を聞けば聞くほど、自分は彼のことも彼女のことも知らなかった。
ふと成人式の日の、彼女を見送った彼の、穏やかで嬉しそうな笑顔を思い出した。
傍から見れば、彼は幸せではなかったから自殺したと認識されるだろうが、彼の本心は彼にしか分からない。
もしも、もしもだ。
彼が幸せな気持ちで死を選んでいたなら、彼の死を嘆くのは正しいのだろうか?
そうと知っていたなら、彼の死をどう受け止めるのが正しいのだろうか。
自分には分からない。
彼女は何か知っていたからあんな言葉を口にしたのかもしれない。
彼や彼の家族にとって、恐らく都合が悪い部分があるから、彼女はきっと教えてくれない。
だから「聞かなかったことにして。」と言い捨てたんだろう。
1つだけ言えるのは、自分自身も含めて多くの人は、物事を見たいようにしか見ていないか、見える部分しか見ていないということだ。
正解は当事者にしか分からないのに、見えた部分だけで判断してしまっていた。




