41 最後の悪足掻き
彼女の言葉は、答え合わせと共に自身の望みが叶わないことを明確にした。
これは、最後の悪足掻きだった。
「君は相手が望むならと、よく言っているけど、もし恋愛関係になりたいと言われたらどうするの?」
「心は受け取らないし、向けることもないけど…近しい態度や行動ならお応えできるかな。まあ、心の伴わないそういった行為は、一時的な性欲等を満たすだけで虚しさしか残らないと思うから、お勧めはしないけど。」
「…望めば応えるの?」
「心を除いてなら、衛生面と社会倫理上問題のない範囲であればいくらでも。」
彼女を求めれば一時的な満足感は得られる。
でもその後に待っているのは、自身の浅ましさや欲望に負けたという自己嫌悪と虚しさしか残らない。
そして当たり前だが、彼女は社会倫理は守る気でいる。
「別に近しい態度や行動をお応えするのは構わないけど、君が望むのは最初から違うでしょう?君は、心を交わし合って、愛を求め与え合うようなそんな関係を求めていたんだから。そんな望みを持つ相手に、心の伴わないと分かりきっているものを返せる訳ないでしょう?無理だよ。」
「…そうだね。」
彼女はやはり最初から、自身の求めるものに気付いていた。
だから幼い彼女は、「無理かな」と口にしたのだ。
そして、自身が望む行動は、断る理由もないから受け入れ続けた。
「君の自分を好きという気持ちは、自分にはどうにもできない。自分以外と心を交わし合える関係を作って幸せになってくれるなら、そっちの方が君らしいと思ったんだよね。だから、君の会わないという選択を尊重したんだけど。ああ、同級生の彼に君へ何か伝えることはあるかと聞かれたから、聞かれたら伝えてくれと一言だけお願いしていたんだけど。その様子だと聞くことはなかったかな?」
「…何て?」
「君の幸せを祈ってる、だね。」
自身が気付いていなかっただけで、彼女はとっくに答えを差し出していた。
「祈ってる」…つまり彼女は自身の隣にいてくれない。
彼女とずっと一緒にいる未来なんて、叶うわけもなかった。
当時もしそれを聞いていたら、何もかもかなぐり捨てて彼女に会いに行って縋るか、絶望して既に選択していただろう。