3 初めての告白
彼女が気になるようになって、柔らかい笑顔が可愛いと思うようになって、好きだなと認識した。
出会ってから1年程か、そのくらいだったと思う。
ある時、彼女とブランコで2人で遊んでいた。
ブランコに乗りながら、少し楽しそうに笑っている彼女を見て、ふと口にしていた。
「ねえ。将来僕のお嫁さんになって?」
彼女はそれを聞いて、不思議そうに首を傾げた。
「およめさんってなぁに?」
その後の会話はこんな内容だったと思う。
「あのね、お父さんと、お母さんみたいに、結婚して家族になって、ずっと一緒にいること。」
「ずっといっしょにいるのが、およめさんになるってことなの?」
「うん!ずっと一緒にいたい!」
「…むりかなぁ。ごめんね。」
幼い自身は断られるなんて思ってもいなくて、その場で呆然とした後に泣いた。
どうして断られたのかも分からないから悲しい。
彼女は自身が何故泣いているのか分からないといったように不思議そうにしていた。
告白を断られてから、彼女を見ていて少し気付いたことがあった。
彼女は相手を見ているようで見ていないというか、心が向いていない。
だから相手に何を言われても気にしないんじゃないかと思うようになった。
自身がその後に遊びに誘っても、同じように「いいよ」と柔らかく微笑む。
でもそれは、自身だけのものではなくて、誰にでもそう対応している。
彼女の心は自身を含めて誰にも向いていない。
誰々が好きという話を聞いていて、他の女の子は恥ずかしそうにしているけど、彼女はそんな様子はない。
彼女の言う好きは、花が好きとかそんな温度感しかないのかもしれない。
自身のことは?
好きか嫌いか聞かれたら、きっと彼女は好きだと言ってくれるかもしれない。
でも、花が好きだからと、花と結婚しようだなんて誰も思わないに決まってるじゃないか。
幼いながらにそんな事実を理解したけど、認めたくなかったんだと思う。
彼女に自身を見てもらいたい、振り向いてほしい、そんな思いから、彼女にイタズラするようになった。
本当に何て愚かで浅はかな子どもだったんだろうか。