表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/51

38 忠実過ぎる下心

自身でつねった頬からは痛みを感じる。

夢ではない。


「確認できた?」


彼女が少しおかしそうに笑って聞くが、お酒のせいもあってすぐに答えられない。


「ああ、幻覚なら、自身の痛みだけでは判別できないね。君は夢か幻かと言っていたんだもの。では、触れてみる?」


彼女の言葉を聞くやいなや、自身は椅子から腰を浮かせかけた。

が、彼女がスッと片手を差し出したことで、そのまま座ることになる。

自身はまた、衝動的に彼女を抱き締めようとしたようだ。


自身の欲望へ正直過ぎる行動に羞恥心を覚えながら、彼女の手に触れる。

記憶よりも小さな手、自身が大きくなったのだと分かっていても、彼女の手をしっかりと握った。

恋人同士のように握ったり、両手で包んだりしていた。


「確認できた?」

「あ、うん、できた。」


彼女に聞かれて答えたものの、彼女の温もりをまだ感じていたくて、彼女の手を離せなかった。

彼女は離す様子のない自身を見て、首を傾げて、少し困った顔をしつつ、まあ良いかとそのまま手を握らせていてくれていた。

また他愛もない話をする。

彼女が自身の目の前にいてくれる。


彼女の手を握りながら、また心の中で願ってしまう。

お願いだから、自身へ心を向けてほしい(無理だ)。

お願いだから、このまま離さないでほしい(自身を盾に彼女を脅すのか)。

お願いだから、せめて自身を心に刻んでほしい(やり方は1つしか思いつかない)。

君だけを愛してる、君がいないと自身の人生は色もなくて、未来も希望がないんだ。


彼女と会うのは、きっと今日が最後だ。

最後くらい、彼女の温もりを望んだっていいじゃないか。


彼女はできないことをできるなんて言わない。

それが相手にとって残酷な言葉や選択だろうと、その先にある更に残酷な未来を相手に選ばせない為に、必ず彼女は突き放すだろう。


そしてきっと、彼女なら自身の選択を尊重して、最後のお願いを受け入れてくれるんじゃないだろうか?

自身が理解した彼女の価値観なら、きっと最後くらいは受け取ってくれる。

嫌そうな顔はするだろうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ