2 思いの蕾
幼稚園で彼女と過ごすようになり、大人しそうな見た目の割には男の子が好むような遊びもする子だと知った。
聞けば、お兄さんがいるからか、そういった遊びもしていたらしい。
自身が虫取りをしようと誘うと、「いいよ」と柔らかい笑顔で答えてくれた。
その笑顔が少し可愛いと感じた。
虫と聞くだけで顔を顰める女の子も多かったので、他の子との比較もあったのかもしれない。
泥だらけになる遊びもいつも躊躇なくやっていた。
女の子らしいレースの着いた服を着ていても、誘えば汚れるような遊びもするので、自身の母親が自身の服の汚れが大変だと言っていたことから、彼女の服装で汚れてしまうと大変かもしれないと思った時は、ブランコ遊びとか比較的汚れない遊びに誘うようになった。
遊びに誘った時の「いいよ」と口にする時の柔らかい笑顔を見るのが好きになった。
遊ぶようになると、彼女を知る機会も増えた。
自身が転んだりすると、彼女は少し心配そうな顔で、「だいじょうぶ?いたくない?」と聞いてくれる。
虫取りをした時に力加減を誤って虫が死んでしまうと、「なにもわるいことしてないのに…ひどいことしちゃった」と悲しげな顔で、少し落ち込んでいた。
鳥の巣にいる雛に向かっている蛇を見て、皆が雛が可哀想と口々に言っている中で、「ひなもかわいそうだけど、へびもいきるためにひつようだよね」と口にして周りに責められていた。
責められても別に気にしていないのか、特にそれを対しては何も言わなかった。
ちゃんと相手を気遣える、一面だけを見て判断しない女の子だと思った。
少し泣き虫だと思うくらいには泣くのに、責められても気にしていないのか、泣かない。
彼女が泣く時、一体どういう理由で泣いているのか、分からない。
幼稚園の先生も分からないらしく、どうなだめればいいのかと困っていた。
彼女は何を思って泣いているのかと気になった。
このあたりが自身が淡い思いを抱き始めた時で、彼女の感情について少し違和感を抱き始めたきっかけだったんだと思う。