22 望みと葛藤
修学旅行も終わり、日常に戻ってきた。
彼女への思いをより強くして。
ずっと逃げてきたいじめに加担したという罪悪感を抱いたままでいいのかと悩んでいた。
このまま彼女に隠したまま、近くにいていいのか?
ちゃんと話して、彼女に許しを請うてから近くにいるべきではないのか?
彼女の隣にいるならば、少しでも綺麗であるべきだと思っていた。
そう思っていても、事実を話すことで嫌われてしまったらと考えてしまい、勇気が出なかった。
修学旅行の写真が貼り出され、欲しい写真は希望するようにと先生が話している。
集合写真や班での写真等、彼女と自身が写っている写真を希望した。
彼女は貼り出された写真を眺めた後、見て満足したのか、興味がないのか、特に希望せずに去っていった。
自身の望みと罪悪感の葛藤で、彼女と話すことも緊張していた。
そんな状態だったので、彼女を見ているだけで話しかけられない日々が続いた。
視線に気付いた彼女に「どうしたの?」と言われても、話す勇気は出なかった。
「何でもない」と言っては、彼女は不思議そうに首を傾げている。
彼女は変わらない。
仲の良い同級生が、彼女のことをふざけて「神様」と呼ぶことがあったが、何となく気持ちは分かる。
彼女の優しさは平等で、まるで天上から神が与える慈悲のようにも感じられるから。
同じ人間かと時々疑いたくなるのだ。
その同級生には、彼女を好きでいることはかなり苦しいんじゃないかと言われた。
彼も少し彼女のことが気になった時期があったそうだが、彼女の平等な優しさも、時に見せる苛烈さも、自分は無理だと思ったと。
そんなこと、分かっている。
それでも、彼女への思いを消すことも手放すこともできない。
彼女がいない自身の人生に、彼女のいない未来に、何の意味があるのか。
そんなことをひたすら考える日々だった。
どうすべきかと悩んでいるうちに、あっという間に夏も過ぎ去ろうとしていた。