14 気恥ずかしさ
中学校に上がってからも子どもの人数は少ないからクラスは1つだった。
学区も同じで、幼稚園の頃から顔ぶれはほとんど変わらない。
同級生はもれなく幼馴染と言える関係だ。
だからか、性別差を意識するようになっても恋愛するという空気にならなかった。
他の女子に恋愛する空気がないのは何故かと聞いた。
「子どもの頃から、全裸も見てる相手にときめけない。」
言いたいことは分かったけど、彼女と他の女子の違いはなんだろうか。
自分は彼女を異性として見てるし、ときめいてもいるのに。
ある日、彼女と3人でよく遊んだ仲の良い同級生が、慌てて彼女に自分達が出てから着替えてくれと言った。
彼女が教室の隅で体操服に着替えようとしていたらしい。
自身もそれはやめてくれと慌てて言った。
「制服の下にハーフパンツもTシャツも着てるから、ただ上の制服を脱ぐだけなんだけど。気になるならごめんね。」
彼女はどうやら制服の下にそのまま体操服のTシャツとハーフパンツを着ていたらしい。
だから問題ないと思って上の制服だけ脱ごうとしていたのだと。
ただ、制服のスカートを下ろす仕草も、制服のセーラーを捲り上げる動作も、彼女を異性として見ている思春期真っ只中の自身からすると、ひどく目に毒だ。
他の女子が着替えていてもあまり気にならないのに、彼女がただ上着を脱ぐだけでも意識してしまう。
何なら髪の毛をかき上げて髪を結ぶ動作も意識する。
彼女の色んな姿を見たい気持ちもあるけれど、恥ずかしさが勝って見ることができない。
彼女の身体のラインはだいぶ女性らしくなって、自身も成長して彼女との身長差も大きくなった。
子どもの頃、躊躇なく触れた彼女の手は、きっと今なら自身の手の方が大きくなっているんだろう。
彼女に触れたい気持ちと触れたら気付いてしまう気恥ずかしさがせめぎ合っていた。
彼女の手を握りたい、抱きしめたい、キスをしてみたい、そんなある意味健全な願望が浮かんだけれど、必死に打ち消していた。