12 いじめの終止符
転校生が起こした彼女への無視や悪口、根も歯もない噂といったいじめは、1つ上の学年だった転校生の卒業で終息に向かった。
約2年弱、彼女は特に気にする風でもなく、ただいつも通りの日常を送っていた。
ただ、相手からの返事がないだけ、何か言われているだけ、と。
自身はいじめに加担しながら、彼女と休日は遊んでいた。
小学校も後半になれば、男女で遊ぶことも減ってしまうが、彼女と過ごしたくて、休日に遊びに誘っていた。
彼女から自身へ助けを求めることはもちろんなく、自身への彼女の対応が変わることもなかった。
一度だけ彼女は自身に聞いたことはあった。
「自分と距離を置かなくていいの?」
いじめの始まった当初にたった一度だけ口にした。
学校では難しいけれど、本当は遊びたいと自身が申し訳なさそうに言うと、何とも興味なさそうに「ふぅん?」と言っただけだった。
いじめに加担しているくせにと罪悪感はあった。
でも、いじめという状況だから、自身だけが彼女の近くでこうしていられると優越感もあった。
いじめがなくなったものの、小学校での2年は大きい。
その時、小学校卒業まで残り半年程だった。
身体の成長はもちろん、男女の性別差を明確にする。
当たり前だが、いじめが始まる前のような関係を続けるのは、性別と年齢から無理だと分かっていた。
それでも、もう少しだけ彼女と遊んでいたいと、少し年の離れた弟の面倒を見るという口実で彼女を誘っていた。
いじめのあった2年で、彼女は基本的に誰かを嫌うというのもないと知った。
彼女は、誰かを拒むことはない、誰かを追うこともない、彼女は穏やかにそこにいるだけ。
近くに咲いた花を見るように、寄ってきた動物を優しく撫でるように、ただ近付いた人へ対応するだけで、好きも嫌いもない。
だから彼女の心は誰にも向いていないし、誰の心も求めていない。
自身がいじめに加担していたと知ったら、彼女は嫌ってくれるだろうか?
彼女の心に残れるなら、どんな感情でも構わないとそんなことを考えるようになっていた。