11 いじめの続き
転校生は早速、彼女が面白いから好きと言った男の子と他の女の子を両思いにしようと働きかけ始めた。
くだらないけど、自身が同じ事をされたら、酷く傷つくだろう。
男の子が別の子を好きと聞いても、当然ながら彼女は気にしない。
転校生は彼女の様子に苛立ちながら、自身に彼女の悪い噂を流すように言ってきた。
彼女への悪口なんて思いつかず、例えばどんな内容かと聞いたら、「彼女がふしだらな女だって話なんかがいいんじゃないか?」とまた楽しそうに笑った。
それを聞いて、「彼女は男の先生に媚を売って成績を維持している」そんな噂を流した。
彼女とは似ても似つかない噂だ。
転校生は満足気にニヤニヤと醜い笑いを浮かべていた。
当然彼女の地味で大人しい容姿と穏やかなゆったりとした口調は、噂と似つかわしくなく、当然誰も真実だと思わなかった。
全く浸透しなかった。
転校生はまたイライラしながら、自身にまた何か噂を流せと言ってきた。
小学生男子でお調子者と呼ばれる自分が言える悪口なんて…「〇〇はう〇ことか?」我ながらアホなことを言ったと思う。
転校生は「いいね。〇〇はう〇こだから臭いって言おうよ。」と言った。
自身のアホみたいな発言も、悪口に変換された。
こんなことも悪口にできる転校生は本当に性格悪いな。
でも、彼女のことを好きと言いながら、彼女の身代わりになる強さもない、彼女を守る気概もない、そんな自身がもっと嫌いだった。
自分自身がいじめのターゲットになろうと、考えを変えない彼女の真っ直ぐさを直視できずに、目を伏せる自身の劣等感、誰よりも近くにいる自身に助けを求めてくれないかと思う下心、なんて自身は愚かで醜い人間なんだろう。
僅かな下心はありつつも、彼女はきっと助けなんて求めないと頭では理解していた。
いや、彼女は大して気にしていないから求める必要がない。
いつか彼女に罪を責められれば、この浅ましい思いは少しでも消すことができるのだろうかとそんな風に思った。