9 拗れても離れられない
彼女の名前を自身が体育館やら校庭に書いたことが分かった後、彼女は特に周りに話さなかった。
先生達も特に広めず、自身のやったことは犯人も動機も分からないという話で忘れ去られるはずだった。
ところが、体育館で書いた時に、実は見ていた同級生がいたらしく、こっそりと聞かれた。
周囲に暴露する気はなさそうだったが、何故書いたのかは気になると聞かれ、言わされる羽目になった。
彼女への思いも自分の浅はかさも言わされて、散々だった。
そんなことがあっても、彼女とは変わらず遊んでいた。
彼女への気恥ずかしさはあったけど、やっぱり彼女の近くにはいたい、誰よりも。
自身の彼女への好意を知った同級生はぬるく応援すると言ってくれた。
少しずつ成長していき、性別差も出てきて、彼女と2人きり遊ぶというのもちょっと気にされるようになってきていた。
その同級生と3人で遊ぶ日も作ったら、親にも少しホッとされた。
彼女と平日の放課後も休日もよく遊んでいたから、流石にべったり過ぎると思われていたらしい。
その同級生は、実は彼女と幼稚園の頃から交流があったらしい。
親同士の交流や上の兄弟の交流で、他の2人の同級生と幼い頃から関わりがあったと。
羨ましかったけれど、遊んだ内容を聞くと、他のもう1人と蟻地獄を探した、カタツムリを探した、という話を聞いて、何とも言えなかった。
そんなことも誘われれば付き合う彼女は、本当に彼女らしい。
少しずつ女子らしい成長をしている彼女、確かにずっと同じままとはいかない。
彼女が他の同級生の女子に男みたいとかバカにされていることや、男とばかり遊んでる男好きと言われていることを知った。
彼女が男好きなら、自分はとっくに報われてるんじゃないかとそんなことを言ったら、その同級生には笑われた。
彼女のそばにいたい、彼女の特別になりたい、心を向けてほしい、そんな思いがひたすら募っていた。
拗れても、歪んでも、もう彼女への思いは手放せない。