プロローグ
出会いは幼稚園の頃だった。
最初に好きと、淡い思いを抱いた理由ははっきりとは覚えていない。
自身の性別は男で、好きになった相手は女だった。
相手はどんな人かと言えば、『地味で大人しそうなのに、何するか分からない人』という感じだろうか。
女の子と砂場で砂と花を使ってケーキ屋さんごっこをしたり、人形を使ってお人形さん遊びをしたり、お絵かきしたりと、所謂女の子らしい遊びをしていた。
その一方で、自身を含めた男の子と外で虫取りをしたり、泥遊びで泥だらけになったりと、やんちゃな遊びもしていた。
彼女と一緒にトンボを捕まえたり、落とし穴を作ったり、秘密基地を作ったり、川でダムを作ろうとしたり、大人に内緒で自転車に乗って遠出したり、色んな遊びをした思い出がある。
彼女の見た目は不美人ではないけど、特別美人でも可愛くもない、穏やかで大人しそうな目立たない容姿だった。
とにかく地味で印象に残りづらい容姿だけど、笑顔が似合っていたかな。
性格はマイペースで愛想もあまりいいとは言えないけど、思いやりのあるとても優しい人だと思った。
その一方で、思ったことを率直に口にするので、人の気持ちが分からないのかとよく言われていて、自身もそれは確かにと思う。
また、言葉が足らなくて、誤解されることもあったが…それは彼女が意図したものだったと思う。
彼女は、ただ自分の信条にまっすぐ生きていたんだと思う。
自分自身にジャンルやカテゴリーといったラベルを貼ることなく、自分は自分だと誤魔化すことなく行動していた。
その結果、人に嫌われようが1人になろうが気にしない、そんな強さも持っていたと思う。
自身はそうだな…
見た目は普通よりは整っていると言われていたから、容姿は真ん中より少し上くらいだったと思う。
性格は、よくお調子者と言われていたけど、人に嫌われるのが怖い臆病者だった。
多分、彼女の自分を貫く強さと時折見える優しさに惹かれたんじゃないかなと思う。
その一方で、彼女に対する劣等感もあったからか、よくある男の子の好きな子をいじるような行動もしてしまった。
初恋かと聞かれると恐らくそうだった。
自身のこの思いは、成就することはなかったから、ありふれた恋物語と言われるとそうかもしれない。
自身の思いの結末を考えると、初恋という言葉で片付けていいのか分からないけれど。
1つだけ確かなことは、自身にとって真剣な思いだった。
結末も完全に満足とまではいかないが、自身の思いは少しは報われた。
そんな1人の人間のこころと、思い出話をしていく。