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準備

リアンナと出会った翌朝、セリーヌは初めて安心感のある目覚めを迎えた。野営の準備が整えられた焚き火のそばには、リアンナが作った簡素な朝食が並べられている。香ばしい匂いに誘われ、セリーヌの小さな腹が鳴った。


「ほら、食べな。旅をするにはまず体力をつけることだ。」

リアンナは目を細め、少し意地悪そうに笑った。


セリーヌは手を合わせて「いただきます」と小声で呟き、焼けたパンとスープを口にした。温かな味が胃を満たし、彼女の頬に僅かな色が戻る。



朝食を終えた後、リアンナはセリーヌに一本の木の棒を渡した。それは粗末な即席の槍のように見える。


「さて、昨日は完全に守られる側だったね。これからは少しずつでも自分を守る術を覚えるんだ。さもないと、この先の道中で命を落とすことになる。」

その厳しい口調にセリーヌは戸惑ったが、リアンナの真剣な眼差しに気圧され、黙って棒を握りしめた。


「まずは基本だ。相手の動きを読むこと。感覚を研ぎ澄ませ、敵がどこにいるかを見極める。そして、恐れずに反撃することだ。」

リアンナが雪の上に立ち、セリーヌに簡単な動作を指導する。構え方、足運び、そして相手の武器を防ぐための動き。


セリーヌの体はまだぎこちなく、転ぶことも多かったが、それでも彼女は諦めなかった。エルウィンが近くの枝に止まり、彼女を見守っている。その青い瞳には不思議な力が宿っているようだった。



訓練を進めるうちに、セリーヌは何度もエルウィンに目を向けた。彼がそばにいるだけで、不思議と恐怖が和らぐ。リアンナもそれに気づき、ある夜、焚き火のそばで彼女に話しかけた。


「お前がその鳥をエルウィンと呼んだのは偶然じゃないだろう。もしかして、彼はお前の記憶と何か関係があるんじゃないか?」

その問いに、セリーヌはふと考え込んだ。


「分からない…ただ、あの時、何かが私にそう呼ばせた気がするの。名前を口にした瞬間、すごく懐かしい感覚がしたんだ。」

彼女の声は震えていたが、エルウィンは静かに彼女の膝に降り立ち、頭を擦り寄せた。


リアンナは焚き火をじっと見つめながら、低く呟いた。


「名前には力がある。それは人を縛りつけもすれば、導きもする。エルウィン…その名がきっと、お前をどこかへ導く鍵になるはずだ。」


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