秘めた力
セリーヌ、リアンナ、そしてダリルの三人は、瘴気の影響を受けた湖へ向かった。町を出てから半日ほど歩くと、湿地帯が広がり始め、次第に空気が重くなっていく。視界の先には、不気味な霧が立ち込める湖が見えた。
「ここが問題の場所か。」ダリルが眉をひそめる。「思った以上に酷いな。」
湖の水は濁り、表面には黒い泡が浮かんでいる。周囲には枯れ果てた植物が散在し、生命の気配はほとんどない。
「瘴気の中心がここだとしたら、元を断たなければならない。」リアンナが湖を見つめながら言う。「けれど、普通の方法では解決しないだろうな。」
セリーヌは湖のほとりに近づき、慎重に水面を覗き込んだ。その時、足元の地面が不意に揺れ、黒い霧が渦を巻くように広がり始めた。
「セリーヌ、下がれ!」リアンナが叫ぶ。
次の瞬間、湖の中心から巨大な影が現れた。それは瘴気に染まった魔物だった。胴体は蛇のように長く、頭部は異様に膨れ上がっている。その目には凶暴な光が宿り、湖全体を支配するような圧力を放っていた。
突然の戦闘
「これは…ただの魔物じゃない。」リアンナが剣を抜き、構えを取る。
「どうする?逃げるか?」ダリルが冗談めかして言うが、その目は戦闘の準備を整えている。
「逃げられる相手じゃない。」リアンナが険しい顔で返す。「セリーヌ、後ろに下がっていろ。」
だが、セリーヌは動かなかった。目の前の魔物を見つめる彼女の中で、何かが目覚めようとしていた。
「私も…戦います。」
リアンナが振り返り、驚いたように彼女を見た。「無茶だ。今のお前には無理だ。」
「無理じゃない。」セリーヌは槍を握りしめた。「私にはこの力がある。誰かを守りたい…そのために戦うって決めたんです!」
その言葉にリアンナは一瞬だけ黙り込んだが、すぐに小さく頷いた。「分かった。ただし、私たちがフォローする。」
魔物が襲いかかる。リアンナとダリルが前に出て攻撃を仕掛けるが、硬い鱗に弾かれてしまう。
「くそっ、これじゃキリがない!」ダリルが舌打ちをする。
その時、セリーヌの槍が淡い光を放ち始めた。氷の粒が槍の先端に集まり、冷たい霧が周囲に漂う。
「これが…私の力?」セリーヌは自分の手元を見つめた。
魔物が再び襲いかかる瞬間、セリーヌは一気に槍を突き出した。そこから放たれた冷気が魔物を包み込み、その動きを封じた。
「凍らせた…だと?」ダリルが驚いた声を上げる。
リアンナは冷静に指示を出す。「今だ!一気に仕留める!」
ダリルとリアンナが同時に魔物の弱点に攻撃を集中させ、最後の一撃を与えた。魔物が絶命するとともに、湖から漂っていた瘴気が消え、周囲に清々しい風が吹き抜ける。
戦いを終えた三人は湖のほとりで休息を取った。セリーヌは自分の力に驚きつつも、その手がかりを掴めたことに喜びを感じていた。
「これが私の力…でも、どうしてこんな力を持っているの?」彼女は湖面を見つめながら呟いた。
リアンナは焚き火を起こしながら答える。「お前の記憶が戻れば、その答えも見つかるだろう。」
ダリルは苦笑いしながら言った。「まあ、これだけの力を持ってるなら、どんな秘密が隠れているか楽しみだな。」
その時、セリーヌの肩にエルウィンが舞い降りた。その青い瞳を見つめると、不思議と彼女の心が落ち着く。
「きっと、エルウィンが私を導いてくれる気がする。」
リアンナは槍を磨きながら呟いた。「導くだけじゃないさ。お前の決意が未来を切り開く。それを忘れるな。」
セリーヌは小さく頷きながら、次の目的地へと意識を向けた。