旅立ちと再会
村で数日を過ごした後、セリーヌは再び旅立つことを決意した。村人たちは惜しみながらも彼女を送り出す準備を整え、村長が手渡した簡単な地図と保存食を受け取った。
「君がどこへ向かうのかはわからんが、その道がきっと良きものであることを願っているよ。」
村長は柔らかい微笑みを浮かべた。その言葉にセリーヌは深く頭を下げた。
「ありがとうございました。皆さんのおかげで、また一歩進む勇気が湧きました。」
エルウィンが肩に止まり、彼女と村人たちの別れを見届ける。村を後にしてしばらく歩くと、背後から村人たちの小さな応援の声が雪原に響いた。
雪道を進むセリーヌとエルウィンは、その日の午後、森の中で不意に足を止めた。見覚えのある人影が木々の間を歩いている。それはリアンナだった。
「リアンナさん!」
驚きと喜びの声を上げるセリーヌに、リアンナは振り返り、少し面倒くさそうに笑みを浮かべた。
「また会ったな。思ったより元気そうで安心した。」
セリーヌは嬉しさを隠せず、駆け寄った。エルウィンは慎重にその様子を見守っている。
「村の人たちが助けてくれて…それで、私も少しだけ強くなれた気がします。」
セリーヌがそう言うと、リアンナは腕を組んで彼女をじっと見つめた。
「そうか。それなら次は、お前の旅の目的を探す番だな。」
リアンナはセリーヌにとって、再び師となるような存在に見えた。その提案を受け入れ、彼女たちはしばらくの間、一緒に旅をすることにした。
翌日、セリーヌたちは峠の近くで不穏な気配を感じた。リアンナが手を挙げて合図を送り、二人は身を隠す。視線の先には、黒い装束を纏った集団が雪の中を行進していた。
「…奴らだ。」リアンナの低い声に、セリーヌは緊張を覚えた。
「知っている人たちなんですか?」
「まあな。奴らは“狩人”だ。金で雇われ、賞金首を追う連中だよ。」
リアンナの言葉に、セリーヌは驚いた。「賞金首?」
「そうだ。私たちかもしれないし、別の奴かもしれない。いずれにせよ、面倒事には違いない。」
そのとき、エルウィンが小さな鳴き声を上げ、上空を飛び回った。その動きが“狩人”たちの注意を引いたのか、集団の一部がこちらに向かって進んでくる。
「チッ…見つかったか。」リアンナが腰に下げた剣を抜き、低い姿勢で構える。
「セリーヌ、お前はエルウィンとともに先に行け。」
「でも…!」
「私が奴らを引きつける。お前はまだ戦うには早い。ここで足を引っ張るな。」
リアンナの厳しい声に、セリーヌは戸惑いながらも、エルウィンとともに森の奥へと走り出した。
森の奥深く、セリーヌは一人で木にもたれかかりながら息を整えていた。エルウィンがそばで彼女を見つめている。
「リアンナさんを置いてきてしまった…」
後悔と恐怖が胸を締めつける。しかし、リアンナの言葉が耳に蘇る。「恐れずに反撃することだ。」
その瞬間、エルウィンが突然空を舞い、青白い光を放ちながら森の奥へと導くように飛び始めた。セリーヌはそれを追いかける。
「待って、エルウィン!」
やがて、彼女はリアンナが“狩人”たちに囲まれている光景にたどり着いた。リアンナは果敢に戦っていたが、数の多さに押されていた。
「…今こそ、私が!」
セリーヌは勇気を振り絞り、リアンナの元へと駆け込んだ。
セリーヌの到着に驚いたリアンナだったが、すぐに状況を把握し、短く命じた。
「いいか、私の動きを真似しろ。それだけでいい。」
二人の連携が次第に噛み合い始める。セリーヌの不器用ながらも真剣な攻撃が敵の注意を引き、その隙をリアンナが突く。エルウィンも上空から鋭い光を放ち、混乱を助長させた。
やがて、“狩人”たちは撤退を余儀なくされ、森は再び静けさを取り戻した。
「やるじゃないか、セリーヌ。」
リアンナは苦笑しながら剣を収め、セリーヌの肩に手を置いた。
「まだまだ足りないけど、少しずつ成長している。次はもっと頼りにしてやるよ。」
その言葉に、セリーヌはほんの少しだけ自信を持つことができた。エルウィンが肩に戻り、軽く鳴く。
「ありがとう、エルウィン。」
彼女は彼に微笑みながら、次の旅路へと思いを馳せた。