32.手段を選ばない、恋する乙女とティータイム
薔薇園に夏の薔薇が咲き乱れていた。真珠のような光沢を放っているオレンジピンクの薔薇や、花弁のふちにうっすらとピンク色が滲む白薔薇。夕焼けで染め上げたような色合いの薔薇と、貴婦人のドレスが仕立てられそうな、濃いヴァイオレット色の薔薇。葉はどれも瑞々しくて、そこへ止まった虫が喜んでいるように見えた。むせ返るほど甘い香り。夏になると薔薇も、土も、空気も香りが増す。
レナード殿下の手に手を重ね、指先を柔らかく握りながら、青いタイルを踏みしめる。いつも、お客様を出迎える真っ白なガゼボは夏の陽射しを浴びて、リゾート地のような風格を漂わせていた。私がガゼボなら、今だけ南国の離宮にあるガゼボと呼んでちょうだいって、言いたくなるわ。綺麗で輝かしい。
ライトブルー色のワンピースを着たご令嬢が、こちらを見るなり、優雅にスカートの端をつまみ、膝を折ってみせた。改めてレナード殿下と私を見つめ、感動した様子で口元を押さえる。レナード殿下に見惚れているのかしら。
だとしたら、すっごく嫌だ! でも、さっきのおまじないが効いてる。お城の廊下で不安になっちゃったレナード殿下が、私の腰を抱き寄せ、おでこにキスしてくれた。嬉しそうな蜂蜜色の瞳があまりにも綺麗で、胸の奥が詰まった。
『……頼むから大人しくしてくれよ、シェリー。俺にはシェリーだけだから』
甘い言葉を囁けば、何とかなると思ってる? 言い返す気力が無くて、頷くだけの私を見つめ、満足そうに笑っていた。目の前のご令嬢が青い瞳を輝かせ、熱心に話しかけていても、レナード殿下がいつになく素敵な声で返事していても、私にはあのおまじないがあるから平気だった。
今日も、白いテーブルの上に並べられた茶器は美しい。紫色の小花とウサギが描かれている、白磁のティーポットとティーカップ。お城のパティシエが作った小さめサイズのケーキが、三段スタンドに並べられていた。
クリームが挟まったパイ、鏡面のように輝く丸いチョコレートケーキ、瑞々しいフルーツタルト、細かく刻んだナッツと緑色のクリームで飾り立てられている、葉っぱのような形のケーキ。赤いスポンジと白いクリームが重ねられている四角いケーキ。一番下の段には、つまめるクッキーが並べられていた。
強い風が吹き、紅茶の水面を揺らしていく。そうよ、楽しめばいいだけの話じゃない。ここで大人しく椅子に座って、美味しいお菓子を食べて、時折レナード殿下に話しかけられたら、笑顔で頷くだけ。難しい話じゃない。お上品な所作を意識して、ケーキを取る平べったいものを握り、勢いよくケーキの下に突っ込んだら、レナード殿下に止められちゃった。
「シェリー? 取ってあげるよ、これが食べたいんだな?」
「……はい。ありがとうございます、レナード殿下」
「ケーキはそっと扱わなくちゃ、崩れるぞ。まだまだだな」
どうして、目をキラキラ輝かせてるご令嬢の前で、私を貶めるようなことを言うのかしら。こんなケーキ、あんまり食べたことないからよく分からないだけなのに。脱走してやろうかな。それか、眠ってるレナード殿下のベッドに、沢山毛虫を入れてやったらすっきりするかも。
意外なことに、想像しただけで落ち着いちゃった。本気でしてやろうと思ったのに、想像だけで済むなんて意外。私が不貞腐れながら、つやつやのチョコレートケーキを優しくお皿へ移しているレナード殿下を見つめていれば、ご令嬢のリンジーがほうって、夢見る乙女のような溜め息を吐く。
「やっぱり、お二人は恋人同士なんですね……!!」
「へっ?」
「え?」
「噂になっていますわよ、レナード殿下! ここのところ、癒しのティータイムには謎めいた雰囲気の美少女を必ずおそばに置いていると聞いて、今日、確かめに参りましたの!」
「謎めいた、雰囲気の……? ものは言いようだな。確かにシェリーは読めないところがあるけど」
「何が言いたいんですか? レナード殿下。はっきり言ってくださらないと分かりません」
「悪かった、ごめん……。フォークはほら、そんな持ち方しちゃだめだよ。こう持つんだ」
相手の目玉を突き刺す時の持ち方をしていたら、優雅な微笑みを浮かべつつ、私からフォークを取り上げ、手のひらに押し付けてきた。まったくもう!
しぶしぶ、丸いチョコレートケーキを半分に割る。勢いよくチョコレートケーキにフォークを入れたのにも関わらず、崩れないで、真っ二つになったのを見つめ、リンジーが「まあ、すごい!」と言って褒めてくれた。レナード殿下だけ、複雑そうな顔をしていた。
「ふふふふっ、こんなことを言ったら父に怒られそうですけど、今日、お二人に会えて嬉しいです! 良かったら、なれそめを聞かせて貰えませんか?」
「なれそめ?」
「あ~、言わなくていいから! 俺が言う! ええっと、そうだな、どこから話せばいいのか」
「まあ! レナード殿下、いけませんよ。私達は恋バナがしたいんです!」
「うーん、恋バナかぁ……」
私達? いつの間にか、私も恋バナしたいことになっちゃってる。でも、他の人がどんな恋愛をしてるのか気になってた。ユーインは一切、付き合ってる彼女のこと話してくれなかったし……。リンジーの青い瞳がキラキラ輝いていた。さっきまで見たら、胸の奥が苦しくなる輝きだったのに、今はそうじゃなくて不思議。初めて、女の子と深く関わりたいって思ったかもしれない。
「わ、私とレナード殿下の出会いは……」
「シェリー!? 恋バナなんてしたくないだろ? 恥ずかしいし、妙なことを言われるのはちょっと」
「でしたら、レナード殿下。少々席を外して貰えないでしょうか?」
「えっ」
レナード殿下の背後に控えているサムがぶっと吹き出した。リンジーは本気でレナード殿下を追い出すつもりらしく、凛々しい顔つきになってる。恋バナかぁ。確かにレナード殿下がいたら、できないかも? 困って私を見てきたけど、さっきのことを根に持っているから無視する。
チョコレートケーキがすっごく美味しい。なめらかな舌触り。口の中でほろ苦いチョコレートクリームを溶かせば、濃厚なチョコドリンクを飲んでる気分になった。ざらざらと舌でチョコレートクリームを楽しんでいたら、何かが弾ける。甘酸っぱい。これ、ジャムが入ってる?
「分かった、もう口を出さない。あ~、でも、シェリーはこういう話が苦手なんだ。突拍子ないことを言ってしまうかもしれな、」
「ぜんぜん構いません! 恋バナはつい、力が入ってしまいがちですから!」
「そういう意味じゃなくて……」
「なれそめは!? シェリーさん!」
「なれそめ?」
「知り合いから紹介して貰って。なっ?」
私、余計なこと言ったりしないもん。抗議するために、チョコレートケーキを口いっぱいに頬張る。中にふわふわ、しっとりスポンジケーキが入っていて美味しかった。鼻に抜ける苦味が最高に美味しくて、ずっと味わっていたい。途中でレナード殿下のことがどうでもよくなり、目を閉じて味わう。リンジーが軽やかな笑い声を立てた。
「シェリーさんってすっごく可愛らしいですね! レナード殿下が夢中になるのも頷けます」
「シェリー、人の話を聞こうか……」
「なれそめは、ええっと、まず、部屋の中にレナード殿下がいて」
「はい!! お二人は城で出会ったんですね?」
「驚かせないようにな!? 表現が独特だから、気にしないように……」
部屋の中にいて、扉を開けてみた瞬間、背筋が震えた。上手く言えないけど綺麗で、まるで定められていたというか、こうなるのが決まっていたような気がした。あの時は深く考えてなかったけど。ただただ、蜂蜜色の瞳が綺麗で美味しそうって思った。なんて表現すればいいんだろう?
どう感じたのか、人にあまり言ったことがないから……。チョコレートクリームがついたフォークを、皿のふちに立てかける。リンジーを見てみると、不思議そうな表情でちょっとだけ首を傾げた。青い瞳が綺麗。サラサラの茶色い髪の毛も。
「……私、レナード殿下に会った時、運命を感じたんです」
「運命を!? まあ!」
「えっ? シェリーって恋バナできるのか」
「上手く、こう、言えませんが、綺麗な方だなぁって……」
「分かります!! 一目で恋に落ちちゃったんですね!?」
「ううん、違います。でも、忘れられないし、突然キスされた時も」
「もうやめよう、恥ずかしくなってきた!!」
「レナード殿下って案外、強引に迫る方なんですね……」
何とも言えないリンジーの表情を見て、レナード殿下が気まずそうに視線を逸らす。こんな風にリラックスして楽しめると思わなかった。もっともっと話したい、リンジーさんと。
「あの、リンジーさんは好きな人っていますか?」
「いますよー! ふふふ、婚約者がいるんです。だから、私、結婚する前にレナード殿下に一度お会いしてみたかったんですよ!」
目をぱちくりさせた私を見て、慌てて口をつぐむ。レナード殿下は紅茶を飲みながら、渋い表情で「王妃様から聞いてない、もっと早く知りたかった」って、独り言のように呟いた。
「誤解しないでくださいね!? ただ、憧れていただけなんです。だって、素敵じゃありませんか!? 麗しの、癒しの血を持った病弱な王子様って!」
「……」
「素敵かどうか分かりませんが……。リンジーさんと殿下の奪い合いをしたくないので良かったです」
「はい! 奪う気なんてないから安心してください。父の代わりにここへ来て、眺めたかったんですよ~。病気になった人がいないと、招待して貰えませんから」
「……血液入りの小瓶を渡しておこう」
早く帰って欲しいのか、レナード殿下がポケットから小瓶を取り出した。水が入ってる。前に重症な人には血を五滴、その他の人には一滴、お茶か水に垂らして飲ませるって言ってた。血が一滴でも治るけど、治るのが遅い。一瞬で治るから、血の量を増やして渡す。
リンジーがとても悲しげな目をして、うやうやしく頭を下げてから、受け取った。これでお父さんの病気が治るのに、悲しそうなのは一体どうして? まだまだ分からないことが沢山ある……。リンジーが胸元で小瓶を抱き締めた。
「……ありがとうございます、レナード殿下。これで父も良くなることでしょう」
「ああ。おめでとう、末永くお幸せに」
「っふふ、どうなるかしら。私、父を脅すつもりでいるんです」
「は? 今、何だって……?」
「脅す?」
私の得意分野だ! わくわくして立ち上がったら、レナード殿下に止められた。抗議しようと思ったら、ささっと口の中にクッキーを放り込まれる。もー、私のこと、動物か何かだと思ってない?
しぶしぶ椅子へ座り直して、クッキーを味わう。結晶のように輝く砂糖がいっぱいまぶされた、さくほろのバタークッキー。中にアーモンドが入っていて香ばしい。笑顔のリンジーが小瓶を何も入らなさそうな、小さいバッグへしまったのを横目で確認してから、レナード殿下が尋ねる。
「脅すとは? 一体どういう意味だ?」
「私、日に日に病状が悪化していく父のことが心配で、食事も喉が通らず、片時もそばを離れない愛娘を演じているんです」
「えん、じて……?」
「はい。だって、勝手に両親が決めた男と結婚させられそうになったんですよ? 父は大の病院嫌い。お金を積んで、レナード殿下の血を買えばいいと思っているんです」
「待て、何を言ってるのか分からない! もう少し最初から、丁寧に説明してくれ」
「あら、申し訳ございません。言いたいことが山ほどあって……」
いたずらっぽく微笑んだあと、舌を見せ、肩を竦めた。目的のためなら手段を選ばない、そんな人に見える。でも、合ってると思う。躊躇していたら目的は達成できない。欲しいものが手に入らなくて、後悔しちゃうし。
なーんだ、他の子も一緒じゃない。レナード殿下やカイ、エナンドは必死で私を変わってるって言うけど、リンジーと考えが似通ってる。実は私って、案外普通なのかも……。殺傷能力が高いだけで。
「ええっとですね? まず、私と母は父を説得したんです。病院に行きなさいって。難病とは言えども、薬がちゃんとあるから。でも、行きたくないって駄々をこね始めたんですよ」
「どうしてそこから、脅す話に繫がるんだ……?」
「病状が悪化したら血を貰いに行くと言って、聞かなくて……。悪化する前に行けばいいのにねえ。これを利用しない手はないと思って、私、父のことが心配だからと言ってお見合いを断ったんです」
分かんない。お父さんの病気とリンジーさんって何か関係があるの? レナード殿下も分からないようで、困った表情を浮かべている。そんな私達を見て、リンジーさんが笑いながら話してくれた。
「父ってば、私にすっごく甘いんです。お嫁に行かなくてもいいんじゃないかって、人前でも堂々と言うぐらい! でも、母は典型的な貴族のお姫様だから、由緒正しい家柄に嫁ぐのが幸せだと思ってるんです」
「だろうな。大抵の貴族はそう思っているはずだ」
「でも、自分で起業して恋愛を楽しんでる子もいるんですよ!? レナード殿下は病弱で外の世界をあまり知らないから、そう思うのかもしれませんけど……」
「……すまない、時代遅れで」
「大丈夫です。私のあからさまな仮病を見て、母は父を病院へ行かせる作戦だと思ったみたい。どのみち、病気が治らなかったら私の結婚式に出席できないからか、あんなに結婚、結婚って言ってたのに、ぴたっと母が静かになったんです」
リンジーのお喋りが止まらない。堰を切ったように、これまで抱えていた鬱憤と不満を話し出した。でも、淑女たるもの、話の合間に美しくお菓子をつまむべきと教わっているのか、息を吸い込んだあと、お上品にクッキーを食べていた。
「私ね、一目惚れしたんです。家具職人の息子さんに! 今の家を改装するついでに、インテリアを一新する話が出たから選びに行ったんです。そこで一目惚れしました」
「はあ」
「リンジーさん、すごいですね! 私もペラペラお喋りしながら、美しく食べれるようになりたいです」
「真似しなくてもいいんだよ、シェリーはそのままでいてくれ」
「彼は真面目で、腕もすこぶる良くて……。いくら食事に誘っても応じてくれなくて。女遊びするようなタイプじゃないし、何よりも木と自分の仕事を愛してる。母は家具職人なんてって言うけど、ふんぞり返ってるお父様よりも、うーんと魅力的に見えるわ」
私達が聞いていなくても構わないのか、ぬるくなった紅茶で喉を潤し、くちびるを尖らせた。ずっと、誰にも話せなくて苦しかったのかもしれない。私、フルーツタルトを上手に美しく食べる練習をやめて、リンジーさんの話を聞くべきかもしれない。無残な状態のフルーツタルトから目を逸らし、リンジーさんを見つめたら、柔らかな苦笑を浮かべる。
「分かってるんです、駄々をこねているだけって。でも、でも、彼が言うんですよ! 君のご両親が認めてくれたら結婚しようって。私のことが大好きなくせに……」
「駆け落ちしたいんですか?」
「そうなの。彼は優しくて真面目な人だから、ご両親を悲しませちゃいけないよって言うんですよ!! どうでもいいのに、母と父なんて。絶対悲しまないから」
「結婚話から、逃げたいだけじゃないか……?」
「もしそうだとしたら、全力で追いかけて捕まえるからいいんです」
「ふーん、怖いなぁ」
「逃げるような人じゃないから、心配していません! だから、結婚を認めて貰うために、血を使って脅そうと思いまして」
「なるほど、話がようやく見えてきた」
私はいまいち分からないから、説明して貰った。レナード殿下いわく、結婚を許そうと宣言して、書面に残してくれるのなら血を渡す。結婚に反対するようなら、悪臭と甲殻にまみれて死ねって、お父さんに言うつもりみたい。この話に飽きたようで、レナード殿下がボロボロに崩れたタルトを丁寧にかき集め、私の口へ運んでくれた。
「ですから、父と母に絶対絶対血を渡さないでください! あそこまで病状が進んでいたら、血がないと死んでしまいます。私の要求を呑んでくれるはずです!」
「……父親を脅すのはちょっとなぁ」
「じゃあ、レナード殿下が説得してくださいますか?」
「いやぁ、それも」
「分かりました。リンジーさんのご両親に血を渡さなければいいんですね?」
「シェリー!?」
血のストックがあるけど、モリスさんが亡くなる直前、ほぼ全部盗み出して箱へしまい、レナード殿下以外の人が開けられないようにした。わずかに残ってるけど、それは他国への輸出用。水で薄めて、富裕層や王族へ高値で売りつけるためのもの。最近枯渇したから、みんな、必死になってレナード殿下の血を採ろうとしてる。今、血を管理しているのはレナード殿下だけ。
「応援してあげましょうよ! リンジーさん、可哀相……」
「まさか、シェリーがそんなことを言うとはなぁ」
「お茶会に招く人はレナード殿下が決めていると聞きました。どうかどうかお願いです、私の両親に血を売らないでください!」
「分かった。でも、上手くいくとは限らないぞ?」
「……私がどれだけ本気か、両親に知って欲しいだけなのかもしれません。彼に嫌がられたら、とても苦しいけど、諦めます」
青い瞳に涙を滲ませ、無理やり笑った。苦しそうな笑顔だけど、美しく輝いているように見えた。ちょっとだけ分かる。やれることを全部やってから、諦めたいよね……。レナード殿下が溜め息を吐き、腕を組む。
「約束だぞ。本気で好きなら諦めた方がいい、身分違いだ」
「じゃあ、レナード殿下は諦められるんですか?」
「……」
「シェリーちゃん、貴族じゃないでしょう? 教えてください、諦められますか」
何も答えなかった。レナード殿下のつらさがひしひしと伝わってくる。心の柔らかい部分を、重く濡れた真綿で締め上げられているような苦しさ。でも、顔を見てみると、苦々しい表情を浮かべていた。口の端が上がっている。
「……もちろん、諦められる。どんなに苦しくても、相手が不幸になるのなら」
だめだ、諦めきれない。嘘だ。彼女を批判する権利なんて俺にはない。たとえ、シェリーが笑わなくなったとしても、どんなに嫌がったとしても、そばに留めておきたい。……心の声がはっきりと、脳内に響いた。心臓が飛び跳ねる。だって、そんな風に、思ってるなんて。
好きを全力でぶつけられたら、照れちゃう。耳まで赤くなってない? 今。背筋が徐々に熱くなっていった。うなだれる私をよそに、リンジーがレナード殿下を見据えている。
「そうですか、私は諦めきれません。……お忙しい中、時間を作って頂き、ありがとうございました」
「シェリーが応援すると言ったからな。俺も応援する、頑張れ」
「っふふ、ありがとうございます。王妃様に口添えしてくださるのですか?」
「んー、一応しておこう。ちゃっかりしてるな」
苦笑して、レナード殿下もぬるくなった紅茶に口をつける。いつの間にか陽射しが和らぎ、眩しい太陽に雲がかかっていた。私は同じ状況になったら、諦められる? どうなんだろう。いつか問題が起きた時、レナード殿下から離れられるのかな……。自分の意思ではどうにもならない。離れようと思っていたのに。恋愛感情って、一番コントロールが効かない感情だったりする?




