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元暗殺者と魔術師殿下による、癒しのティータイム  作者: 桐城シロウ
二章 禁術の行使で変わった運命
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18.あからさまな餌付けだった!

 






 レナード殿下は多分、私を餌付けしようと思ってる。テーブルの上に並んだオレンジと胡桃のパン、私が好きなデニッシュとふわふわの白い丸パン。いつもより気持ち多めに、分厚く切り分けられたベーコンと目玉焼きが二つ。新鮮な玉ねぎとマッシュポテト、レタスとソーセージに、チーズのとろふわオムレツ……。ぐっちゃり沢山料理が載ったお皿を眺めていると、後ろに立ったレナード殿下が、テーブルの上に手を置いた。もう片方の手は私の肩へ回される。


「どうしたんだ? シェリー。食べないのか?」

「……餌付けしようとしてます? ひょっとして」

「じゃあ、回収しようかな。疑うのなら食べなくてもいいよ」

「たっ、食べます、食べます……!!」


 変なの。レナード殿下ってこんな感じだったっけ? 忘れた。フォークを持ちながら注意深く見上げれば、にっこりと美しく微笑みかけられる。綺麗な蜂蜜色の瞳。毒なんて潜んでなさそうに見える、小さな白い花のことを思い出した。


 レナード殿下も一緒かも。綺麗で、どろどろした感情なんて潜んでいないように見えるんだけど、執拗に絡めとろうとしてくる。意識を集中させれば、必死で押さえ込んでいる焦燥感と恨みが伝わってきた。


(私のこと、恨んでるの? どうして……)


 前だったら聞いたけど、今は聞かない。言わないでくれ、聞かないでくれ、頼むからって言われてるような気がするから。大人しくかりかりに焼けた白身のはじっこを、フォークとナイフを使って切り分ければ、ほっとしたように息を吐いて、離れていった。


 不器用な王子様。素直に「離れていかないでくれ、お願いだから」って言ってくれたらいいのに。何度だって、いつだって。レナード殿下が向かいの椅子を引き、腰かける。置いてあったクラッカーに手を伸ばし、緑色が混じった白いでろでろとしたものを塗り広げ、食べ始めた。わあ、何だろう? あれ。美味しそう!


「レナード殿下、朝ご飯食べてないんですか?」

「いや、小腹が減ったからつまもうと思って。しょっちゅう腹が減るから、カイが用意してくれたんだ」

「ふぅーん……」

「いるか? 一口」

「食べます、一口だけ!」

「分かった、どうぞ」


 なぜか嬉しそうに笑って「あーん」と言い、口の中へ優しく放りこんでくれた。さくさくの香ばしいクラッカーに、塩味のバター。濃厚なハーブの香りが漂った。何これ? 美味しい! でも、玉子みたいな味もする。しょっぱくて、苦くて濃厚だった。


「おいひぃーれふ、もっとください!」

「あとでね。まずはご飯を食べようか、ご飯を」

「はい……。あ、ジュードには気をつけてくださいね。おかしい子だから」


 それまで丹念にバターっぽいものを塗り広げていたレナード殿下が、ぴたりと手を止めた。普通に入ってきてくれたらいいけど。ジュードと本気で戦ったら、怪我しちゃう。人外者と契約してなかったらいいけど、どうなんだろう……。私が上手に目玉焼きの黄身だけくり抜いて、ぱくぱく食べてたら、おそるおそる聞いてきた。レナード殿下もジュードが怖いみたい?


「シェリーにおかしいって、言われるって……」

「もうレナード殿下とは口を聞きません。黙ってます」

「ごめん、許してくれ。ほら、シェリーは強いからさ。でも、今回は警戒してるみたいだ。従兄弟なのに?」


 焦って言ってきた。私に無視されるのがつらいの? どうして。他に話す相手はいっぱいいるのに。ご令嬢とか、エナンドとカイとか……。多分友達の脅したご令嬢から、狙ってる家がいっぱいあるって聞いて、嫌な気持ちになった。レナード殿下の子どもを生むのは私なのに。他の女性に触って欲しくないなぁ。ぐらって、ほんの少しだけめまいがした。禁術の影響かもしれない。黄身を唾液で流し込んでから、口を開く。


「従兄弟だけど怖いんです。何をするかよく分からないから」

「へー、どんな性格?」

「……寂しがりやさん?」

「寂しがりやさんか。じゃあ、シェリーと一緒だな」

「違います! 私はレナード殿下がいなくても平気だけど、レナード殿下は平気じゃないでしょう?」


 ぱちくりと蜂蜜色の瞳をまたたいてから、戸惑いつつ、頷いた。素直~、レナード殿下って。喜ぶとは思わなかった。喜んでる、伝わってくる、感情が。おくびにも出さないけど、嬉しいって。クラッカーを飲みこんでから、バターナイフを皿のふちに立てかけた。


「……うん。平気じゃないから、ずっといてくれると嬉しいな。それで? あと他には? なんで警戒してる?」

「だから、さっきも言ったでしょ! 何をしでかすかよく分からないからです。私に固執? しているようなところもあるし」


 ソーセージの皮がぱりぱりで美味しい。料理が沢山載ってるからか、あんまり美味しそうに見えなかったけど、これはこれで美味しくて楽しい。次はチーズオムレツにしようかな? どうしようかな? 首をかしげて考えていると、レナード殿下が気持ちを落ち着けるかのように、どぼどぼって、グラスに水を注いだ。ピッチャーには、畑から摘んできたミントが入ってて踊ってる。一口飲む前に話しかけてきた。


「固執? 悪い、一からちゃんと説明してくれないか? 急に出て行ったかと思えば、従兄弟を呼んだって言われても困る……」

「ちゃんと説明したでしょう? 従兄弟が強いから呼びました」

「待ってくれ。シェリー的には一から十まで、丁寧に説明しているんだろうけど! 一体どういう関係なんだ? 固執って?」

「テディベアに嫉妬して、ぐちゃぐちゃにしたんです。昔」

「テディベアに? どういうことだ」


 レナード殿下の表情がこわばる。あれは悲しかった。それにおかしかった、ジュードの表情と目が。月明かりが射し込む中で、ティディベアをずるずる引きずって歩いてた。くたびれた手足が床に投げ出され、ガラス玉のような黒いつぶらな瞳が私のことを見つめていた。


 でも、青と白のストライプパジャマを着たジュードが可哀相な子に見えた。ナイフが鈍く光ってる。細い手に似合わない、物騒なナイフ。目玉焼きの白身を食べようと思ったけど、食べる気が失せて、寸前で止まる。ぱくっと食べちゃいたいのに、昔の記憶が邪魔をする。


「……昔のことなのに、鮮明に覚えてます。その日、私のご機嫌が悪くて遊ばなかったら、拗ねちゃって大変でした。髪の毛を引っ張るし」

「いくつぐらいの話? それって」

「十歳にもなってなかったような気がしますが。分かりません、バーデンもいなかったし」

「そうか。二人はそれほど長い付き合いじゃないんだな?」

「喜ぶなよ、王子様」


 黒いふわふわの小鳥ちゃんになっているバーデンを見て、レナード殿下が顔をしかめた。バーデンがふんぞり返って、黒い小さなくちばしをバターっぽいものへ突っ込み、むちゃむちゃと食べ始めた。顔を汚したバーデンを見て、レナード殿下が溜め息を吐く。


 自分も食べたかったのか、バターナイフを使って、バーデンを転がした。足をはらわれたバーデンが「おい、何をする!」と言って怒り始めたけど、知らん顔をして、優雅にクラッカーを口へと運ぶ。


「それで? 話の続きをどうぞ」

「んーっと、ジュードはおかしくて可哀相な子なんです。だから気にならなかったけど、レナード殿下に何かしたら嫌だなと思いまして」

「どうしてそんなやつに助けを求めたんだ……?」

「叔父さんの子どもだから大丈夫です。叔父さんはね、いつも罰を与えたがってるんです。ジュードに」

「自分の子どもなんだろ? 仲が悪いのか。年はいくつだ?」

「さあ、知りません。ジュードはお誕生日を祝ったことがないんです。奥様からもプレゼントを貰ったことがないんですって」

「……そうか。シェリーに聞いてもよく分からないな。本人に直接会って、聞いてみないと」


 もー、ノーマンが回復すれば済む話なのに! モリスさんが死んじゃったのが悲しいって、いまさらでしょ。覚悟は出来ていたはずなのに、悲しくてしょうがなくて、熱を出して寝込んでる。変なの、私ならちゃんと仕事するのに。バーデンに頼んで殺して貰えば良かった。役立たずなんていらない。


 目玉焼きの白身をずるんと飲み込んだら、レナード殿下が眉をひそめ、苦笑した。飲み込むつもりなんでなかったもん、ちゃんと噛んでから飲み込むつもりだったもん。黒いふわふわの羽毛を膨らませながら、バーデンが「おい、水をよこせ!」と言う。ちゃんと分かってる、私に言ってもくれないって。


 レナード殿下が笑いながら溜め息を吐き、手のひらを広げた。小さな銅製の水皿が現われ、それをテーブルの上へ置く。指を使って、グラスから水滴を吸い上げた。大粒の水滴がぽちょん、ぽちょんと、水皿へ落ちてゆく。バーデンが興奮したように黒い羽毛を震わせ、飲み始めた。その様子をどこか嬉しそうに見つめている。……羨ましい。


「レナード殿下って、バーデンのことを可愛がっていますよね? 羨ましい」

「可愛がってはいないよ。ことあるごとに、シェリーに手を出そうとするし。でも、俺をからかってるだけなんだろ? なあ、バーデン」

「やめろ、飲んでる最中に人の尻を触るなよ」

「ごめん、ふわふわしてたからつい気になって。珍しいよな、その姿でいるの」

「サービスだ」

「サービスか、ありがとう」


 嫉妬しちゃう。さっきまで、私のことを気にかけてくれてたのに! バーデンの黒いふわふわのお尻にぼっと火をつけてみたら、飛び上がって「ぶぁっ!?」って叫んだ。いい気味。


「何をしてるんだ、お前は!」

「シェリー!?」

「二秒だけ火をつけただけだもん。消したし、火傷しても人外者なんだから、すぐ治せるでしょ?」

「おい……お前なぁ、拗ねるなよ。どうして拗ねてる?」


 バーデンが呆れたように小首を傾げる。可愛くないもん、そんなことしたって。ぷーんとそっぽを向いていれば、レナード殿下が立ち上がった。嫌だな、怒られるかも。バーデンはレナード殿下の可愛い、可愛いペットだから。絶対、夜中に私の部屋を抜け出して、レナード殿下のベッドに潜り込んで、ぬくぬくと眠ってる。必死に顔をそらしていたら、レナード殿下がくすりと笑って、黒髪に触れてきた。


「シェリー? どうしたんだ、珍しい。最近こういうことはなかったのに」

「……だって、レナード殿下がバーデンばっかり可愛がるから!」

「可愛がってはいないよ、さっきも言ったけど」

「お尻をふわふわしてたでしょ?」

「シェリーのお尻も触ろうか? 嫌がられそうだ」


 なぜか嬉しそうに笑ってる。良かった、怒られないみたい? でも、怖くて、腹が立っていて振り向けない。すぐ横に立ったレナード殿下が甘い声で「こっちを向いて、シェリー」と、耳元でささやきかけてくる。胸の中にある何かがぞわっと震えた。ごくたまに、衝動に駆られる。それが何かよく分からないけど。動きたいような、叫び出したいような……。


 ゆっくり見上げてみたら、満足そうに微笑んだ。距離が近い。耳のすぐそばにある頬にキスされた。わっ、わざとらしく、リップ音を立てて……。心臓がぎゅっと縮こまる。バーデンが「いちゃつきやがって」とぼやいた。


「……シェリーが一番だから大丈夫。でも、俺から離れるつもりなんだろ?」

「優しくして欲しいです。たとえ、私がいつか離れるとしても!」

「わがままだな。わがままなところも好きだけど、うーん……」

「怒ります?」

「いいや? 対策を練るから大丈夫だよ。あと、俺の可愛がりはこんなものじゃない」

「……いらないです、逃げます!」

「待って、早いな」


 あっという間に捕まった。後ろから羽交いじめにされる。逃げようと思えば、逃げられるんだけど……。うーんって悩んでいたら、「座り直そうか」と呟き、椅子へ戻された。可愛がって欲しい気持ちはあるけど、私が望む可愛がり方をして欲しい。レナード殿下は時々心臓に悪い。渋い顔をしていたら、笑った。


「じゃあ、やめようかな。またの機会にするね」

「十分の一にして欲しいです」

「十分の一? 何を」

「お試しで……。ちょびっとだけ可愛がって欲しいです、だめでしょうか?」

「……だめじゃないよ、いける」


 蜂蜜色の瞳が見開いた。怖い、瞳孔が開いてるように見える。少しだけ下がったら、手首を掴まれた。反射的に掴んだような掴み方だった。すぐに放して、頬へ両手を添え、至近距離で見つめてくる。あ、爆発しそう。愛おしくて可愛い。視界が水面のように歪んで、レナード殿下の視界に切り替わる。私の顔が見えた、一瞬だけど。意識が重なって、戻って、めまいがする。一緒になったんだ、レナード殿下と私は。


「変な感じがするな、めまいもする。シェリーは?」

「私もです……」

「自分の顔なんて見るもんじゃない、シェリーの顔だけ見ていたいのに」


 愉快そうに笑いながら、何度も何度もまぶたと頬にキスしてきた。合間に髪をいじりながら、耳元で「可愛い、好きだよ」って言ってくる。血が沸騰しそうになった。熱が立ち昇る。手首を掴めば、今度は手を取って指先へキスしてきた。何度も優しく指にキスされると、混乱して頭が真っ白になる。赤くなった私を見て、満足そうに微笑み、最後はくちびるにキスしてきた。


「どうだった? お試しは。控えめにしてみたけど」

「……ご飯食べます。冷めちゃうから」

「分かった、そうして」


 楽しそうに笑いながら、椅子へ戻った。私がバーデンのお尻に火をつけたこと、すっかり忘れちゃってるみたいで良かった。ナイフとフォークを手に持った瞬間、心臓が飛び跳ねる。冷めてない、まだ熱が。機嫌の良さそうなレナード殿下をたまに見つめながら、黙々と食べる。


 美味しい。チーズがとろとろで、オムレツからバターの良い香りが漂ってくる。食べていたら、急にリビングの扉が開いた。今日は黒い布で顔を覆っていなくて、薄汚れたベージュのぶかぶかTシャツと黒いズボンを身につけてる。私を見たとたん、濁った灰色の瞳を鬱陶しそうに細めた。


「……いたのか。レナード殿下、見回ってきました。今のところ異常なしです」

「遅かったな。そこまで丁寧に見回らなくてもいいのに」

「レナード殿下は危機感が欠如していますね。なあ、お前もそう思わないか?」

「どうしていちいち話しかけてくるの? 私に。放っておいてよ」


 喧嘩を売るつもりはないとかぐだぐだ言ってくるくせに、いっつも話しかけてくる。近くまでやって来たカイを睨みつけていたら、徐々に可愛いなと思えてきた。あれ? 多分、レナード殿下の感情なんだろうけど。


 後ろに小さなカイが見えるような気がしてきた。可愛い弟。ひとりぼっちで、何でも我慢しちゃう孤児。また視界が揺れた。衝動を抑えきれずに立ち上がって、カイの頭をわしゃわしゃと撫でてあげる。


「おい!? 分かった、新手の嫌がらせだな……?」

「ううん、カイのことが可愛くて。今日から私の弟になってね!」

「は!?」

「シェリー、やめようか。離れよう、一旦離れよう。そんなこといって、どうせ、カイを殴ろうとしてるんだろ? あ、髪の毛をむしりたいとか?」

「むー……」


 レナード殿下に引き剥がされた。可愛いって言ってるのに信じず、カイが疑り深い表情で見てくる。やっぱり可愛い。レナード殿下はカイのことを可愛がってるんだ。知らなかった、こんなにも可愛いがってるだなんて。羨ましい、憎たらしい。ごちゃごちゃになって苦しいけど、おさまらない。


「放してください、レナード殿下! こうなったらカイの頭を撫でて、とことん可愛がります! 気が済むまで!」

「やめろ! 知ってるぞ、俺は。そんなこといって、俺の頭皮に呪いでもかけようとしてるんだろ?」

「しないもん、そんな酷いこと!」

「初対面で首を絞めてきたくせに……」

「あの時はごめんね? でも、今、頭を撫でさせてくれたら、落ち着くからさせて!」

「だめだよ、シェリー。ご飯食べよう。そうだ、部屋に持って行こうな。二人きりになろう、二人きりで食べよう」


 レナード殿下がすごく焦ってる。カイも困惑してて、じりじりと後ろへ下がっていった。どうして撫でさせてくれないの? おさまるって言ってるのに! 私が無理やりカイを押さえつけて、頭を撫でてやろうと思ったその時、またリビングの扉が開いた。今度はエナンドだった。土いじりでもしていたのか、リネンのエプロンをつけていて、ところどころ汚れてる。綺麗な手で一通の手紙を持っていた。


「あれ、どうしたんですか? レナード様にカイも。シェリーちゃん、君あての手紙があったから持ってきたんだけどって、速いなぁ!?」

「貸してください、読みます!」

「もう俺から奪い取ってるよね……?」


 綺麗な文字で表に“シェリー・ハウエルさんへ”と書いてあった。遅かったけど、ちゃんときた。なんて書いてあるんだろう? ドキドキする。私が魔術で封を切って、取り出そうとしたら、急にレナード殿下が手紙を取り上げた。


「あっ!? 何するんですか?」

「誰からだ? ああ、まだ続いてたのか。ヴィオレッタ嬢と」

「はい。きちんと謝ったんです、初対面で排除しようとしたこと」


 自分がいかに悪いことをしてたか、ぼんやりとだけど分かったから、ちゃんと謝りたかった。向こうにだって利益があるし、この関係は。ちゃんと謝って、信頼関係を築いておきたい。レナード殿下と仲良しの私から情報が貰えるんだから、表面上は許したふりしてるけど、多分許してないと思う。


 レナード殿下が面白くなさそうに眉をひそめ、「ふぅん」って呟いた。嬉しくないのかな、私がまともになりつつあるのに。少しずつ、レナード殿下が生きてる世界のことが分かってきたのに。他の人に近付いてきたんですよ、私。


「……はい、返す。でも、どうせシェリーのことを利用して、俺に近付こうとしてるんだろ。油断しないようにな」

「私のお友達にそんなこと言わないでください」


 ちょっと意外そうな顔をした。カイもエナンドも、レナード殿下も。ユーインが求めるまともな人になったら、会ってくれるかもしれないし、お友達でいたい。きっと、まともな人は友達がいるだろうから。


 それにくわえて、レナード殿下の元婚約者がどんな人だったか、社交界がどうなっているのか、外の世界から見た王宮はどんな感じなのか、癒しの血はどういう扱いをされているのかを教えて貰えるから、今後も文通は続けるつもり。優しいし、最近では私のことを小さな子どもだと思ってる。メリットが沢山あって嬉しいな。


 手紙を片手にリビングの扉へ向かうと、バーデンが美しい銀色の羽根を持った鳥になって飛び、私の肩に止まる。目は青くて綺麗。扇のような形をしている羽冠と、優雅に垂れ下がった尾羽。ごくたまーにだけど、こうやって美しい鳥になってくれる。冷たい羽根を撫でたあと、レナード殿下を振り返ってみたら、少しだけ寂しそうな表情を浮かべていた。


「残った料理は冷蔵庫に入れておいてください。侵入者が来たら守ってあげますね! じゃっ」

「またな、王子様。散々イチャついたからもういいだろ?」










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