25.王妃様とのティータイムに、悪だくみ
モリスさんが私の首に絡まった、茨の首輪を見て絶句した。でも、すぐに気分を落ち着かせるかのように首を振り、額に手を当てる。執務室のような部屋は相変わらず居心地が良くて、暖炉には炎のドラゴンがいた。小さい炎のドラゴンが鉄製の鍋を抱え、楽しそうに、ぐるぐると中身をかき混ぜている。暑い。不快な温度じゃないんだけど、それでも暑い。窓からの陽射しが眩しいから、余計にそう感じた。
「もしかしなくても、それはレナード殿下の仕業なんだろうね?」
「はい。情緒不安定になっていたので、許してあげました」
「情緒不安定に……? それにしても、見違えたな。たった数日なのに」
「見違えた?」
「ああ。一気に二歳か三歳ほど、成長したような気がするよ。捉えどころがないというか、危うい感じがなくなった。君はそうだな、どこか生きた人間という感じがしなかった」
「生きた人間……。でも、私は人外者とのハーフじゃありませんよ。モリスさん」
「分かってる。ああ、すまない。お茶も出さないで。テーブルの方へ移動しようか」
それまで、執務机の椅子に座っていたモリスさんが立ち上がった。一歩下がって、大人しくモリスさんがソファーに座るのを待っていると、意外そうな表情を浮かべる。
「そこまで遠慮しなくていい。君はお客さんだからね」
「あ、はい。モリスさんは寛容な方なんですね」
「寛容? そうでもないと思ってたけどなぁ」
「はい。そういったことをすると、殴られたので」
「……なるほど? 君の叔父さんはああ見えて、礼儀にうるさい人らしいな」
「拳を痛めたくないのと、私に恐怖心を植えつけないため、殴るのは他の人でしたが。痛みを覚えさせる人がいたんですよ。常に」
「紅茶とクッキーに合わなさそうな話だ。深く聞き出すのはやめておこう」
モリスさんが溜め息を吐きながら、ゴブラン織りのソファーへ腰かけ、テーブルに置いてあった金のベルを鳴らした。そのとたん、四隅にレースがついた白いクロスが現れる。白いクロスの上に次々と、まろやかな曲線を描いた白磁のティーポット、白と金の華奢なティーカップ、美味しそうなバタークッキーが盛りだくさんの木かごも現れた。下には白い紙ナプキンが敷いてある。
私がうっとり見惚れながら、いそいそとソファーへ腰掛ければ、向かいのモリスさんが笑う。ソファーの座り心地が良い。お尻がゆったりと沈み込んでゆく感覚に、思わず目を閉じたくなっちゃった。お客さんだから遠慮しなくてもいいって言われたし、力を抜いて、タッセル付きのクッションへもたれる。ほふぅと息を吐き出せば、もう一度笑った。
「良かった、くつろいで貰えて。この部屋は居心地が良いだろう?」
「はい……。人をだめにする魔術でも、かけられていそうですね」
「鋭いね。さて、茨の首輪について聞きたいんだが?」
「ああ、でも、慣れましたよ。ぎりぎり浅い呼吸ができるようになっていますし、たまに緩んで、深呼吸できるようにもなっています。棘がいくら出てきても、血は出ませんし……。かなりの使い手ですね、殿下は」
緩んでいた首輪がまた、きゅっと絞め上げてくる。痛い。浅い呼吸に切り替えれば、首に突き刺さっている棘が、ほんの僅かに伸びた。じくじくする嫌な痛みだけど、集中しないようにすれば、なんてことない。それにちょっとだけ嬉しかった。殿下の、心の奥深い部分に触れられたような気がして。微笑みながら、茨の首輪に手を添えれば、モリスさんが複雑そうな笑みを浮かべる。
「あの方は……多分、寂しいんだと思う。すまない、許してやってくれ」
「大丈夫ですよ、怒っていませんから」
「その辺りの感覚が麻痺している子で助かった。数年前、ああ、何歳だったか。十六歳の頃か。王太子の座から引きずり降ろされてからというものの、徐々におかしくなっていってしまってね」
「引きずり降ろされたんですか? 一体どうして」
「国王陛下がお決めになられたことでね。表向きの理由は王太子が病弱で、塔から出られないからということになってる」
「そうなんですか」
深く聞かないでおこう。多分、殿下にも聞いちゃだめ。どうして投げやりに生きているのか、ほんのちょっとだけ、理由が分かったような気がした。ふとティーカップを見下ろせば、底の方から、こんこんと赤い紅茶が湧き出ていた。華奢な持ち手に指を添え、持ち上げて飲む。口に含めば、ふわっと香った。渋みがあって美味しい。すっきりとしていて柔らかい。
「バタークッキー、食べてもいいですか?」
「いくらでもどうぞ。あー……首輪を外す必要があると思うんだが。殿下はそれについて何て言ってる?」
「さあ、忘れました。でも、外して欲しくなさそうでしたよ」
「分かった。きっと、自分のものが奪われるのが恐ろしいんだ。はっきり言って、見てられなかった。全部を失った日の殿下は。ああ、やめよう。今日はそんな話をするために、呼んだわけじゃないから」
言いにくいそうに口を動かしたあと、溜め息を吐いた。しきりに私の首輪を見つめている。王妃様に会うんじゃなかったの? 今日は。不思議に思って首を傾げていれば、扉がノックされた。王妃様の支度が整ったせいで、バタークッキーは四枚ほどしか食べられなかった。
「わあ、綺麗! 素敵……。このお城はどこも素敵ですね、塔とは大違い。寒くないし、明るい」
案内されたのは応接室だった。爽やかなグリーンと白で統一された部屋で、窓の向こうには芝生が広がっている。塔にいると忘れちゃうけど、今は麗らかな春。肌に忍び寄ってくるような寒さが漂っていなくて、快適。にっこり王妃様に笑いかければ、頬をひくつかせた。薄い金髪を後ろでまとめ、紺色のワンピースを着ている。上には白地に、黒のラインが入ったジャケットを羽織っていた。足元は黒いパンプス。厳しそうな人。でも、何も言ってこない。
「こんにちは、王妃様。申し訳ありません、先に挨拶するべきでしたね?」
「いいのよ。ハウエル家の人間に礼儀なんて求めていないから」
「そうでしたか、助かります。ごめんなさい、私、いつも空気が読めない発言をするそうです。そのことでよく怒られていました」
「そうなの……。でも、どうしてあの子が気に入ったのかがよく分かったわ。甘いものは平気? 食べれる?」
「食べれます! 甘いもの、好きなんです。べったり甘いものは苦手なんですけど……」
私が駆け足で近寄れば、面食らったように、体を後ろへと逸らした。ああ、だめ。ついうっかり。許して貰えるかと思うと、気が抜けちゃった。でも、近くで見てみたい。殿下はいつも王妃様のことを語る時、複雑そうな顔をする。その眼差しに嫌悪や怒りは混ぜってないけど、好意的なものも混ざっていなかった。あの人は被害者なんだ、とも言っていた。近くでまじまじ見上げていると、おかしそうに笑った。
「随分と若いのね。年は? いくつなの」
「十九歳です! 王妃様、レナード殿下のことをどう思ってらっしゃるんですか?」
「……酷い継母だと思っているんでしょう? 王太子を塔へ追いやって、自分はぬくぬくと城で過ごしながら、我が子を王太子の座につけた毒婦。こんなところかしら」
「いいえ、殿下がそう言っているのを一度も聞いたことありませんし、私もそういう風に思っていません」
「そうなの」
青い瞳を見開き、苦しそうに眉をひそめた。深い苦悩の表情がよく似合う、美しい人だった。さえざえとした月の雰囲気をまとっているからか、血が繋がっていないのに、どこかレナード殿下に似ている。夜に咲いている白い花みたい、この人。赤い口紅が塗られたくちびるを、戸惑いがちに震わせながら聞いてきた。
「あの子は、私のことをどう言ってるの? 教えてくれる?」
「被害者だと。あの人も陛下の被害者だと、そうおっしゃっていました」
「……そうなの。あの子は変わらないのね、母親とよく似て優しい」
どこか懐かしむようにまつ毛を伏せ、微笑んだ。品がすごい。王妃様だっていうのがすごく分かる。でも、お菓子が気になって、そわそわしながらつま先立ちしていれば、くすりと微笑んだ。
「ごめんなさいね。じゃあ、座って喋りましょうか。あの子の話を聞かせてくれる?」
「はい! ぜひ!」
勧められたソファーは大きくて、爽やかなグリーンと白のストライプ柄だった。可愛い! それにクッションが何個も置いてある。期待して座ってみると、モリスさんの部屋に置いてあった、ソファーよりも気持ちが良かった。座面が程良く、ふわふわで柔らかい。硬めのクッションが背中を受け止めてくれる。寂しくなって、横に置いてあった四角いグリーンのクッションを抱き寄せれば、向かいにいる王妃様が微笑んだ。
「気に入ったの? それが。良かったわ」
「はい! クッションが好きなんです、私。でも、今の部屋と殿下の部屋には置いてなくて」
「あの子はそこまで、インテリアを気にかけるような性格じゃないから……」
「そうなんです。寒い部屋にずっと住んでるし。あ、王妃様の客間? 専用部屋を使ってもいいですか? あそこは暖かいんです。私、殿下にそこで暮らして欲しくて。いいですか?」
私の言葉に眉をひそめ、持ち上げていたティーカップをソーサーへと戻した。だめなのかな? でも、頻繁に泊まりにこないって言ってたし、いいんじゃないかな? クッションを抱き締めたまま、困惑していると、深い溜め息を吐き出した。苦悩が混じっていた。
「……私も何度か言ってるけど、聞き入れてくださらないの。当てつけなんでしょうね、私達への。自分をあの塔に閉じ込めた、私達への当てつけなんだわ」
「当てつけ? でも、確かにそういうことをなさる方ですよね」
首輪に手を添えると、きゅっと絞まった。だんだんと、この痛みを愛おしく感じるようになってきた。きっと、殿下は忘れて欲しくないんだ。離れていても、自分のことを考えて欲しいんだ。不器用で寂しがりやの王子様。あと、ひねくれていて女好きで嫉妬深い。くすくす笑いながら、クッションを抱き締めていると、王妃様がいぶかしげな表情になった。
「……あなたから見て、あの子はどんな感じなの? 最近」
「最近。情緒不安定で嫉妬深いです」
「嫉妬深いの? じゃあ、あなたはやっぱり、」
「はい! 私がエナンドさんに抱いて貰おうと思ったら、反対してくるんですよ。そういうのにようやく興味が湧いてきたから、楽しもうと思ったのに! 反対されちゃったんですよ……」
せっかく試してみようと思ったのに! 不貞腐れながら、拳でクッションをぼすぼす叩いていると、王妃様が青ざめる。めまいがしてきたみたいで、目元に美しい指を添えた。殿下と一緒で、白魚のように美しい手だった。ちょっとだけ骨張ってるけどね。
「そういうことはしちゃだめでしょう? いくら興味があるからと言って」
「経験したことがないんです。だから、してみようかと思って」
「……さすがはハウエル家の子といったところね。常識も倫理観も欠けている」
「常識? でも、命令にはちゃんと従いますよ! 王妃様も、私に殺して欲しい人がいるんでしょう?」
「はい?」
「だから、呼んだんじゃないんですか? 私のこと。殺して欲しい人がいるのなら、殺しますよ。殺し方もご希望通りにします!」
「違うわ。お茶がしたかったのよ、あなたと」
「……一体どうして? 憎い愛人がいるんじゃないんですか? どうして殺して欲しくないのに、私を呼んだんですか?」
意味が分からない。ただ、お茶を飲んでお菓子を食べるだけ? 何の意味もないような気がするんだけど……。テーブルを見下ろせば、スコーンとつやつやのパイ菓子、小さな紅茶のパウンドケーキと、筋が入ったバニラクッキーがお皿に盛りつけられていた。
中央にはサンドイッチとスコーン、クッキーが載せられたケーキスタンドが置いてある。どれもこれも可愛くて素敵だった。ティーカップはまろやかなグリーンで、縁は金色。レースのクロスも可愛い。穏やかなんだけど、怖い。視線を元に戻すと、王妃様が悲しそうに微笑んでいた。レナード殿下の姿と重なる。
「お茶を淹れてあげましょうね、あなたに。もう人は殺さなくてもいいの。あなたにそんなことを頼む人は誰もいないわ。モリスにもきつく言い聞かせておくから」
「はい……。やっぱり親子ですね、王妃様と殿下は。似てらっしゃる」
ポットを持とうとしていた手を止め、私を見つめてきた。大きなポットはカップと同じグリーンで、白い花と野鳥が描かれている。
「似ている? まさかそんな……。私はあの子と一つ屋根の下で暮らしたことさえ、ないと言うのに?」
「でも、似ていますよ。そっくりです。表情も言っていることも全部」
「そう……。だといいんだけど」
難しい顔をしながら、ティーカップに紅茶を注いでくれた。私にそれを渡したあと、自分の分を注ぎ始める。柔らかな陽射しと紅茶の匂い。甘いお菓子の香りと、憂鬱そうな眼差しの王妃様。うん、似ている。殿下がまとっている独特の諦観と優しさ、穏やかさと現実離れした、美しい雰囲気がよく似ていた。セピア色の憂鬱。一言で表すとそんな感じだった。
「それで? あの子は元気かしら?」
「あっ、はい。この首輪をつけれるぐらい、元気ですよ」
「……なんですって? 首輪? おしゃれじゃないの? それ」
「違います。こんなに痛い首輪をおしゃれに取り入れたりしません。でも、街中の女の子はすごく痛そうなヒールを履いていますよね。あれよりは痛くないかと!」
「パンプスのこと? でも、あの子が? それをつけたの!? 痛いんじゃないの?」
「あ、はい。首の内部に棘が、ん? ……首にですね、首に小さな棘が刺さる仕組みになっています。きっと離れていても、痛みで自分のことを思い出して欲しいんですよ」
とうとう、王妃様が目元を覆ってしまった。言うのはだめだったみたい? 心配になって首を傾げていると、棘が動いた。内部で回転してる。うっと声を詰まらせ、首元を押さえちゃった。私、痛みには慣れていると思ってたのに。棘が、ううん、刺さった部分が熱を持って痛い。本当に小さな棘なんだけど……。
息を荒げ、クッションへもたれる。ゆっくりと徐々に、首輪が絞まっていった。太いゴムバンドで絞めつけられているような圧迫感。これ、どういう術語を組み合わせているんだろう? 細い茨だけじゃ、こんなに首は絞まらない。痛みに集中しないようにして、浅い呼吸に切り替えていると、視界がぼんやりと曇った。水の中にいるみたい、私。
「大丈夫? シェリーちゃん。それって外せないの?」
「可哀想だと思って、殿下のことが。っは、王妃様、きっと寂しいんですよ。殿下は。私と一緒なんです。居場所を追われる苦しさをよく知っていて、だから、私を放さないようにしている」
口では好きじゃないって言うくせに、雁字搦めに縛ってくる。可哀想な王子様。いつ音を上げるんだろうと言いながら、どこにも行って欲しくなさそうな目をしていた。悲しそうな蜂蜜色の瞳。愉悦が混じってたけど、自分はこうしているのが楽しい人間なんだって、言い聞かせているような感じだった。
「ねえ、分かりますか? 王妃様は。ある日突然、何もかも全部なくなってしまう苦しみが。だから、殿下の歪みを肯定してあげようと思って。じゃなきゃ、私以外に誰が受け止めるんですか?」
「あなたは……幼いように見えて、違うのね?」
「時々言われます。ふふっ、でもね、王妃様。こうやってレナード殿下の歪みを引き出すのは、私だけでいたいんですよ。他の、他の女性の影がいっつも見えるんです!!」
「え、ええ、そうなの? シェリーちゃんはレナードのことが好き?」
「好きか嫌いかで言えば、苦手です。好きと嫌いの間に苦手があると思っているんですけど、王妃様はどう思いますか?」
「ん? えっ? まあ、それでいいんじゃないかしら……」
「良かった。ありがとうございます」
浅く息を吸い込めば、徐々に首輪が緩んでいった。よし! お菓子を食べよう。六枚ぐらい、バッタークッキーを掴んで持ってきたかったんだけど、モリスさんに止められちゃったから。急いでパイ菓子を口に運び、中の美味しいチョコを味わって食べていると、王妃様が笑った。憂いがない笑い方だった。
「気にせずどんどん食べてね、シェリーちゃん。それ、外さなくてもいいの?」
「あ、ふぁい。嫌がる、嫌がりゅふぁほ思うのれ……」
「自分で外せるのよね? 誰か呼ばなくてもいい?」
「はい、んぐ、外せます! これぐらいはね、簡単に外せるんですよ」
「なら良かった。今度レナードに会いに行って、少し話さなくちゃいけないかしら……」
王妃様と喋って、お茶を飲むのは楽しかった。途中、何とか気に入られようと思って「殺して欲しい人はいませんか?」と聞けば、渋い紅茶を飲んでしまったような表情を浮かべ、「いいから。大丈夫よ。いたとしても、あなたには頼まないから」と言うだけだった。つまんないの! そろそろ、誰かを殺したい気分なんだけど……。腕が鈍っちゃう。
「……ところで、どうなの? レナードとの関係は?」
「関係? さあ、よく分かりません。お人形なんじゃないかなとは思ってますけど」
「お人形?」
「はい。私に綺麗な服を着せて、お客様の出迎えをさせるんです。あとそれから、たまにキスをしたり、抱き締められたりする。いい子、いい子って、可愛がられてるような感じがするんです」
「じゃあ、期待しても良さそうね。そろそろ、子供ができるといいんだけど」
「子供」
そうだった。癒しの血を持つ人間を増やすために、子供を生まなきゃいけないんだった。つい、お菓子が美味しくて全部忘れちゃってた。王妃様が憂鬱そうな溜め息を吐いて、ティーカップを見下ろした。
「結婚したくない、恋人も作りたくないって言い張ってるの。でもね、陛下がうるさいから、そろそろ子供を作ってくれるとありがたいんだけど」
「陛下がうるさいんですか」
「そう。内緒よ? あの人はね、怖がりなの。レナードは陛下のそういうところを受け継いでいるのよ。本人が聞いたら、顔を真っ赤にして怒るんでしょうけど」
「上手く想像できません……」
「あの子、怒りっぽいでしょ? 静かに根に持つタイプで」
「確かに! エナンドさんにちくちく嫌味を言ってます。私が抱かれようとしたから」
「……本来、そういうことは好きな人としかしちゃだめなの。分かる? シェリーちゃん」
「分かりませんが、そうします」
王妃様が眉間にシワを寄せ、物言いたげな顏になった。でも、何も言わなかった。クッキーを口に放り込んで、よく噛み砕いてから、口を開く。
「ありがとう、そうしてね。分からなくてもそうして。いーい?」
「はい、そうします。王妃様の命令に従います」
「そうしてちょうだい。……できたら、シェリーちゃんがレナードの子供を生んでくれるといいんだけど。あの子が気に入ってるみたいだし」
「寝込みを襲いましょうか? 罪に問わないと約束してくださるのなら、そうしますけど?」
てっきり断られるかと思ったのに、断らなかった。王妃様がどこか色っぽい微笑みを浮かべ、ティーカップを元に戻した。
「じゃあ、お願いしようかしらね。陛下も焦っていることだし……。それに、シェリーちゃんも首輪をつけられたお返しがしたいでしょう?」
「はい。じゃあ、今夜にでも襲いますね!」




