23.私じゃなくて、レナード殿下が寂しいんじゃない?
久しぶりにお父さんの夢を見た。強い風が吹いて、私の黒髪をめちゃくちゃにしてゆく。春は徐々に温度を上げて、夏に変わろうとしていた。眼下には、青い屋根と芝生敷きの庭園が広がっている。視線を上げれば、遠くの方に街並みと海が横たわっていた。きらきらと目に眩しいぐらい、光り輝いている。
「ねえ、バーデン。海に行きたいな、私。思いっきり泳ぎたいの」
「シェリー! そんなことを言っている場合か!? そろそろ逃げるのはやめて、うわっ!?」
「私に近付かないでくれる? 考えを変えようとする人は嫌い」
指先をバーデンに向けて、足の裏がねちょねちょする魔術をかけてみた。向こうの青い尖塔を歩いていたバーデンが、悔しそうな顏で腹ばいになっていた。もう、大げさなんだから。絶対転ばずに済んだはずよ。そう言ってやりたかったけど、風が強かった。声を大きく張り上げないと、聞こえない。眼前に広がった青い空と、遠くの方で光り輝いている海を見つめていると、少しはささくれだった心が癒された。
「……私、間違ったことを言ってる? カウンセリングなんか受けたくないの。私は正常だから!」
「シェリー、そういうわけにもいかないだろう」
とっと、私の後ろにバーデンが降り立った。視界の端で黒いマントが揺らめいている。今日はいつもと同じ、黒髪黒目の男性になっていた。黒い革の手袋をはめた両手が、ゆっくりと後ろから現れる。私の頬を優しく撫でて、ぴたっと止まった。かさついた質感が痛いような、くすぐったいような。その感覚が胸に染みて、涙が浮かんできた。
「何が気に食わない? 言ってみろ、シェリー」
「だって、私の生き方を全部否定しているようなものだもん。ユーインと一緒よ、あの人達は全員」
「お前は異常なんだ。俺に好かれるぐらい、異常なんだ」
「嫌な言い方ね、それって」
「……もう、自分で自分を傷付けちゃいけない。昨夜はひやひやしたぞ? お前はそろそろ、一般常識を身につけるべきだ。普通の人間は、自分で自分のことを傷付けたりしない。ユーインと約束しただろ? 普通になるって」
バーデンは時々、まともなことを言う。そういう時は、自分が置いて行かれたような気持ちになる。腕におでこを押し付けて、無視していると、小さく溜め息を吐いた。 ……一番傷付いたのは、レナード殿下に「もう俺の手には負えない」と言われたこと。見捨てられちゃう。ユーインだって、私のことを見捨てて、どっかに行っちゃったわけだし。
「もういいもん。私は私の好きなようにするから! 誰にも指図されない、指図されたくない」
「……だそうだ、王子様。俺の手にも負えないぞ、これは」
「えっ?」
腕から顔を離して、振り返ってみると、レナード殿下がバーデンに支えられながら立っていた。白いTシャツの上に着た、黒いジャケットが風にはためいている。穏やかに私を見つめながら、苦笑いしていた。今なら、素直に何でも言えるような気がした。
「私! 殿下が傍にいるよって言ったのに、面倒臭いとか、手に負えないとか言ってくるから腹が立ったんです! 謝ってください!!」
「面倒臭いとまでは言ってない! ごめん、おいで。シェリー! 俺が悪かったから」
この声に抗えない。レナード殿下が両腕を広げた。バーデンは心配なのか、険しい表情を浮かべ、殿下の背中に手を添えている。立ち上がって、勢いよく飛び込めば、「うっ!」と言いながらも、抱きとめてくれた。良い香りがする。ラベンダーの蜂蜜と、焼きたてパンのような香りがする。ぎゅうっとしがみつけば、笑って抱き締めてくれた。頭の上に、レナード殿下の顎が乗っかっていて、それが心地良い。
「 ……ごめん、シェリー。怖かったんだ。俺がいくら言っても理解してくれないから、不安でさ」
「私は何も悪くありません……。殿下が全部悪いんです!!」
離れて睨みつけると、嬉しそうに蜂蜜色の瞳を細め、「うん、そうだね。俺が全部悪かった」と言う。不思議に思っていたら、柔らかく、私の額にキスをしてきた。……どうしてご機嫌なのか、よく分からない。でも、心がちょっとだけ落ち着いた。眉をひそめれば、またおかしそうに笑う。気が付けば、二人きりだった。強い強い、風が屋根の上を吹き渡ってゆく。
「ごめん、シェリー。傷付けてしまって。でも、もうあんなことは二度として欲しくなくて」
「どうしてですか? 死のうと思ったわけじゃないのに?」
「……ナイフを持ってる? 今」
レナード殿下が私の黒髪を掻き分けながら、耳元で甘くささやいてきた。心臓がどくんと、まるで初めて脈打ったかのように、飛び跳ねた。ぎゅっと黒いジャケットを握り締めたあと、片手を勢いよく振って、腕時計をナイフへと変化させる。
「ありますよ。本当は服の下に仕込みたかったんですけど、バーデンに止められちゃったんです。必要ないからって」
「そうだね。あの塔にいれば安全だから。これ、他人も使える?」
「使えますよ。ただ、私には効きませんけど」
「そうか、なら良かった」
「えっ?」
殿下がナイフを持った私の手を、いきなり握り締めてきた。取ろうとしてるの? なんで? 戸惑って見上げたら、ゆっくりと蜂蜜色の瞳を細めた。何も言わず、ただただ両手で、ナイフを持った手を握り締めてくる。息が詰まった。見下ろされると、自然と手から力が抜け落ちて、渡してしまった。ナイフを優しく奪い取ったあと、おもむろに、自分の首筋へとナイフを当てる。今にも、白い首筋から血があふれ出てきそうだった。
「なっ、何をなさるんですか!?」
「昨夜のシェリーと、まったく同じことをしてみようと思ってさ」
「ど、どうして? どうしてですか!? 必要ありますか? 必要ないでしょう!? ねえ、殿下!」
怖い! 痛いのに、殿下は。痛みに慣れていないのに、そんなことをしようとする! 奪おうと思っけど、できなかった。傷付けたくない。相手を傷付けずに、ナイフを奪う方法なんて知らない。教えて貰ってないからできない。どうやって奪ったらいいのかよく分からない。それに、ここは屋根の上で不安定。拗ねるのなら、地面で拗ねれば良かった……!! 私が懇願するように見上げても、何も言わない。虚ろな蜂蜜色の瞳をしながら、笑みを浮かべていた。
「どうしてそんなに慌てるんだ? シェリー。別に死ぬつもりなんてないのに?」
「で、でも、だって、同じことって!」
「そう。血があふれ出るほど首を切ったあと、足の甲にナイフを突き立てる。ああ、順番が逆だけど。このさい、どうでもいいよな?」
「よっ、よくないです……!! ねえ、どうしてそんなことをしようとするんですか? な、何の必要もないことなのに!?」
私には必要だった、あの痛みが。でも、殿下には必要がないのに、そういうことをしようとする。頭が混乱してきた。どうして? なんで、どうして。必要がないことなのに、今、私の目の前でそんなことをしようとする!
ナイフを奪おうと思って、手を伸ばせば、レナード殿下が「おっと!」と呟いて、首筋に刃を食い込ませた。少しだけ痛そうに、蜂蜜色の瞳を歪める。ああ、風が強い。出っ張った窓の上だから、他の場所よりかは安定してるんだけど……。絶望した。転んで、酷い怪我を負ったらどうしよう? 私のせいだ。
「せっ、説明してください、理由を! 殿下!」
「……分かって貰うためにだよ。俺が傷付けば、ちょっとは気持ちが想像できるかなって」
「気持ち?」
「そう。シェリーが傷付くのが怖い。分かるだろ? シェリーも今、怖いんだろ?」
「……はい」
目から涙があふれ出してきた。殿下がぎょっとした顔になる。確かに怖い。死ぬわけじゃないんだけど、殿下が傷付くのは怖い。血が出ているところなんて、見たくもない。ユーインと一緒だ、これ。ユーインが傷付いているところは見たくない。ごしごしと強く、目元を擦って見ないようにする。怖い、見たくないよ……。
「ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい、もう分かりましたから!! もう分かったから、怖いからもう」
「じゃあ、約束できるな? 今後は危ない真似をしないと! 自分を傷付けないと」
「や、約束できます……。殿下から血が出るのを見るの、怖いです。でも、どうして殿下も同じ気持ちになったんですか? 一緒ですか?」
「一緒?」
目を開けてみると、レナード殿下も同じように、蜂蜜色の瞳を瞠っていた。同じ気持ちだと嬉しいな。私が殿下に傷付いて欲しくないのは、ユーインと同じぐらい、大切な存在だから。……まだ会って、数日しか経っていないんだけど。そう考えれば、脳内で快楽主義の叔父様が、歌うように「恋に時間なんて関係ないんだよ」とささやいてきた。それで何度も刺されかけているくせに、懲りないんだから。思い出してくすりと笑えば、殿下が面食らった顏になる。
「そうです。……あなたが傷付けば、私だって悲しくなる。ねえ、ちゃんと私は殿下にとって大事な存在なんですか? 私に分からせるために、そうしているわけじゃないんでしょう?」
「……ああ、もちろん」
「じゃあ、いいです。約束します。だから、だから早く、」
「悲しませてしまってごめん。でも、他に良い方法が思いつかなかったんだ」
ナイフを首から離して、私に返してくれた。すぐさま振って、腕時計へと戻す。見上げるのと同時に、殿下が私に抱き寄せてきた。あ、ほっとする。落ち着く。怖かった……。安心して抱き締め返せば、殿下が笑ってくれた。
「……ごめん、怖い思いをさせちゃって。でも、分かってくれて良かったよ。シェリーは理解してくれないかと思ってた」
「いいえ、ごめんなさい。今、初めて昨日の言葉が理解できました」
「良かった、良かった。……どうする? まだ二人きりでいる? 屋根の上だから、デートには適さないけど」
「っふふ、まだもうちょっとだけ一緒にいたいです。カイが白い目で見てくるから嫌なんです!」
「妬いてるんだよ。あいつには恋人がいないから」
殿下が私の肩に腕を回して、抱き寄せ、そのまま左右に揺れ出した。ご機嫌で鼻歌を歌っている。空は青くて広い。夏の陽射しと似てきた春の陽射しは眩しくて、風が強かった。不思議。心地良いんだけど、そわそわする。嬉しくなって、もっともっと強く抱きついたら、照れ臭そうに笑った。
「ごめん。ちょっと待って、シェリー。顏が見たい。どんな顔をしているのかが見たい……」
「ん~?」
離れてみたら、不思議な表情を浮かべ、頬に手を添えてきた。何だろう? 何を考えているんだろう、殿下は。ビー玉みたいに、透き通った蜂蜜色の瞳。何も考えていないように見えた。嬉しそうでも、悲しそうでもない。さっきまでのそわそわが、緩やかに消えていった。世界で二人きりになったらこんな感じなのかな。静かで風の音しかしない。でも、よくよく耳を澄ませれば、城から誰かの笑い声と喧騒が、聞こえてくるような気がした。
「……戻ろうか。腹も減ってきたことだし」
「えっ? は、はい。分かりました」
「シェリー、ごめん」
今日、何度目の謝罪なんだろう? ゆっくりと近付いてきて、またキスをしてきた。至近距離で見つめ合って、何度もキスを繰り返していたら、胸の奥に何かが詰まっていくような気がした。不愉快じゃないのかな? 殿下は。私は不愉快。この胸の詰まりが何か、よく分からなくて。六回目のキスのあと、聞いてみることにした。まぶたに、乾いたくちびるが触れる。
「……ねえ、不愉快じゃないんですか?」
「一体何が? ああ、この生活が?」
「いいえ。それとも、殿下はちっとも不愉快じゃないんですか? 私は不愉快です。こうやってキスしていると、何だかもやもやします」
「もやもや?」
「そう。殿下はこうやってもやもやしないんですか?」
「んー……。どうだろう」
キスするのをやめて、肩に腕を回してきた。さっきと同じようにまた抱えこんでくる。黙って答えを待っていた。でも、教えてくれなかった。多分、拗ねていた私と同じように、遠くの方で輝いている海をぼんやりと見つめながら、こう言った。
「降りようか、もう。屋根から」
降りたら、心配した様子のエナンドとカイに叱られた。……レナード殿下が。危ないことはもうしないと何度も約束させられ、苦笑していた。でも、私は何も言われない。いいのかな? 屋根に登って拗ねていたのは私なのに。不思議に思いながらも、芝生の上を歩いていたら、ズボンのポケットから、トカゲ姿のバーデンが這い出てきた。白と黒のストライプ模様になっている。
「やれやれ。ようやくご機嫌が治ったのか? お姫様」
「……私、お姫様なんかじゃないもん。何の用? バーデン」
「えらく不機嫌だな。扱いにくいこと、このうえないからお姫様と呼んでやったんだ。通じたのか? 嫌味が」
「あっそ」
「おい! この姿の俺を払うなよ!?」
「シェリー!? バーデン、大丈夫か?」
お腹の辺りにいたバーデンを払ったら、芝生の上に落ちた。レナード殿下が慌てて、トカゲ姿のバーデンを拾い上げる。なんだかむしゃくしゃする、無性に。手のひらの上のバーデンと静かに睨み合っていたら、殿下が苦笑した。
「まあまあ、シェリー。バーデンは心配してるんだから、そこまで邪険にしなくても」
「……心配なんかしていないと思います。だって、バーデンは私の体を狙っているんですから」
「は?」
「契約してないって言ったでしょう? 前に。あれ、言ってませんでした?」
「体を狙ってるって……」
「誤解を生むような言い方だな、シェリー。まあ、できないことはないが」
それまで、手のひらの上にいたバーデンが飛び降りた。すぐにいつもの男性の姿に変身して、愉快そうな笑みを浮かべながら、私の顎を持ち上げてくる。不快。バーデンがこういう顔をしている時は、いつも何かを企んでいる時だから。
「どうする? 一度試しに抱いてやろうか? 人間の姿になって、そういうことをするのは別に初めてじゃないしな」
「バーデン、やめてくれ。笑えない冗談だ」
ぬっと手が伸びてきて、バーデンの手首を掴んできた。殿下の目が笑っていない。口元にかろうじて笑みが浮かんでるんだけど。バーデンが食えない笑みを、愉快そうに浮かべる。すぐさまレナード殿下の手を振り払い、手首に埃が積もっているかのように、ぱっぱっと叩いた。
「なら、さっさと囲い込むんだな。お前のつまらんところはそういうところだよ、レナード。いつまでも味見程度で終わらせていたら、喉笛を噛みちぎってやる!」
「……肝に銘じておこう。でも、彼女とは出会ったばかりだ。それに、誰のことも好きになったことがない。恋愛は初めてだろ? シェリー」
「はい。まだ誰のことも好きになったことがありません!」
「ほら、だから、もっと時間が必要で……」
「怖いのか」
バーデンの呟きを聞いて、レナード殿下が蜂蜜色の瞳を見開く。何が? 何が怖いんだろう、殿下は。後ろではエナンドが「俺達、必要か? 先に戻っていようぜ、なぁ」とカイに話しかけ、怒られていた。どうも、ぴりぴりした空気が苦手みたい?
「怖い? 何がだ。まさか、バーデンはまだ俺に何もしないだろうし、」
「そうじゃない。分かっているくせに、はぐらかそうとするな! それとも無自覚なのか? ああ、見たくないのか。本当はシェリーに好かれているわけじゃないって、気が付いているんだろう?」
「……なら、それがどうした? ひなの刷りこみにしか過ぎないってことは、」
「お前は怖いんだよ、王子様。本当に好かれていない状態で、一歩を踏み出すのがおそろしい。そのくせ、味見はしようとする。行くか、シェリー」
バーデンが腕を伸ばして、私の肩に手を回した。……でも、その通りかもしれない。好きなら、キスをされて嬉しく思うものだろうから。歩きながらも振り返ってみれば、ただ静かにじっと、蜂蜜色の瞳で私のことを見つめていた。見つめられて、心臓がぞわぞわした。会いに行きたい、傍にいたい。その瞳も声も、手も足も、抗えないぐらい、惹かれている。ううん、引き寄せられるって言った方が正しいかも。殿下のそばにいたい。
「……ごめん、バーデン。私ね? 殿下が卑怯者でも、傍にいてあげたいかもしれない」
「お前の好きにしろよ、シェリー。もうお前を縛るものはないんだから」
「そうよね。じゃあ、好きにする!」
バーデンの腕から逃げ出して、レナード殿下の下へ走って行けば、きょとんとした顏で突っ立っていた。笑って、その手を握り締める。
「ねえ、殿下。大丈夫ですよ。食べに行きましょうよ、ご飯」
「……うん、そうだな。ごめん、ありがとう。シェリー」
「今日で何回目ですか? それを言うのって」
「これからも、何度もそう言う未来しか見えない……」
「ふふ、どうしてですか? また私を怒らせちゃうんですか?」
出されたのは、色鮮やかなグリーンで描かれた葉っぱのお皿。そこにサラダと生のトマトと、ソーセージに目玉焼き、薄くスライスした黒いパンが載せられていた。どれも美味しそう。シンプルなんだけど、味が濃くて瑞々しい。最初は意外と贅沢な食事じゃないんだな、と思って落ち込んだりもしたんだけど、美味しいから許せる。わくわくしながら、南国の赤い花が描かれた、陶器製のナイフとフォークを持てば、向かいに座ったレナード殿下が苦笑する。
「良かった。すっかりご機嫌が直ったみたいで」
「はい! 殿下は私がいないと寂しそうなので、傍にいてあげますね」
「……俺が?」
「はい。でも、食べないんですか? お腹が減ってないんですか?」
不思議に思って聞いてみたら、さらに苦笑した。ナイフとフォークを手に取らずに、まずは黒くて薄いパンを食べ始めた。ナッツでも入っているのか、白いつぶつぶがパンの表面に浮かんでいる。もぐもぐと咀嚼しつつ、私の首元を見つめた。
「ネックレス。つけてないんだな? まあ、普段使いするようなものじゃないけど」
「シェリーちゃん! レナード様が寂しがっているから、つけてあげて!」
「え~? でも、あれは大事な日につけるんです。だって、綺麗だから」
あれは引き出しの奥に、大事にしまっておきたいの。白いTシャツの上から、紺色のエプロンをつけたまま食べているエナンドが、殿下とそっくりの苦笑を浮かべた。……あれ? つけた方が良かったのかな。隣の椅子に座って、毛づくろいをしている灰色の猫になったバーデンを見てみたんだけど、無視された。……じゃあ、いいもん。話しかけるから!
「ねえ、バーデン? つけた方がいいと思う? ネックレス」
「俺に聞くなよ……。まったく。お前らはちょいちょい人を介して話そうとするが、二人だけで話した方がいいんじゃないか? その方が進展する」
「うーん。しっくりこないんだけど? バーデンに質問しちゃだめってこと?」
「……今から王子様を寝室へと連れてって、服でも剥いでこいよ。お前らは全裸になって、ベッドの上で話し合った方がいい。俺からのアドバイスだ」
「はっ!? な、なな何を言って、」
「よし、そうしましょう。殿下、ご飯を食べている場合じゃないですよ! 私と一緒に子作りをしましょう」
「っぶ!? ま、待った! シェリー、落ち着け! ちょっと待て、話せば分かるから!!」
がたんと椅子から立ち上がれば、殿下が慌てふためき出した。止めたのに、屋根の上に行ったからか、エナンドとカイはバーデンと似た表情を浮かべて、サラダをつつくだけだった。




