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21 最終話

 目が覚めると窓の外はまだ暗い。


 今何時だろうかと横を見るとアレックス王子の綺麗な顔がすぐ傍にあって悲鳴をあげそうになった。


 「そんなに驚かなくてもいいだろう?」


 そうだった、昨日はあのまま流れに任せてアレックス王子と一夜を共にしたんだった。

 なんだか恥ずかしい気持ちになっていると、アレックス王子は私をぎゅっと抱きしめて首元にキスをしてくる。

 くすぐったくて身をよじると指に違和感を感じて顔の前に持ってきた。

 左手の薬指にいつの間にか指輪がはまっている。


「デザインは気に入ってくれた?部屋が暗いから星の光はみえないだろうけれど綺麗に出ていたよ」


 光が足らず、星の光は浮かび上がってこないが小ぶりの指輪は可愛いデザインだ。

 

「ありがとう。早く太陽の下で見たいわ」


「気に入ってくれてよかった」


 そう言ってほほ笑むアレックス王子の金色の瞳が輝いている。


 人の目って暗闇で光るのかしら。


 綺麗な瞳に見入っているとアレックス王子が笑った。


「僕の瞳が輝いて見える?」


「とても綺麗。金色で、宝石を集めたみたい」


 じっと見ていると、笑いながらキスをしてくる。


「僕の瞳は特殊なんだ。王家代々、長男に出ると言われている」


「暗いと輝くの?」


 宝石のように輝いているアレックス王子の瞳を見つめて聞くと彼は首を振った。


「違うよ。愛しい人を見ると輝くんだ」


「またぁ!嘘ばっかり」


「嘘じゃない。思い出して、幼いレティを見ていた時も輝いて見えなかった?」


 小さい時、綺麗な顔をしたアレックス王子が大好きだった。

 金色の瞳がキラキラと輝いていて宝石みたいだったことを思い出して声を上げる。


「そう言えば綺麗だなぁーってずっと見ていたわ」


「そうだろう?レティの大きな青い瞳に写る自分の瞳を見て気づいたよ。僕はレティを愛しているんだって」


「そ、そうなの」


 私の目に映る自分の姿を見ているアレックス王子に若干引きつつ頷く。

 そう言えば兄があいつはロリコンだと言っていたことを思い出した。


 6歳の子を愛する16歳の青年。

 当時なら完全犯罪だし、変態だし、兄が心配するはずだ。

 

 不思議な瞳を見ていると引き込まれそうになる。


「もう1つ、告白をすると雪が長く降り続いたことがあっただろう。あれは僕のせいなんだよね」


「へっ?」


 雪を降らせることが出来るのかと妙な声が出る。


「これも王家の血筋ってやつで、僕の精神状態が反映されるときがあるんだ」


「はぁ?」


 意味がさっぱり分からない。

 そんなことを言ったら、王様はまだ生きていてカミラ王妃が亡くなった時は普通の天気だった。

 悲しんでいなかったってこと?


 私の考えていることがわかるのかアレックス王子は私を抱きしめたまま説明してくれる。


「父はよくできた人だから感情のコントロールが上手いんだよ。そして、その時は暁の石と空の石が揃っていたからね」


「綺麗な宝石と何が関係あるの?」


「感情が崩れても天気が崩れないようにコントロールしてくれる不思議な力がある。あの宝石が1つ無くなり、大好きなレティがお嫁に行ってしまった。僕は落ち込んでしまって、雪が降り続いたんだ」


「そういえば、私が居なかった二年間大雪が降って大変だったって。夏も寒かったって言っていたわ」


 見た事も無い大雪を思い出して信じられないけれど頷く。


「レティが僕から離れない限り、もう大雪は降らないし、夏の暑さも戻ってくるよ」


「その話が本当だったら大変なことよ!?」


 起き上がろうとする私を力強く抱きしめたままアレックス王子は頷いた。


「だからこれは秘密。レティと僕しか知らないことだよ」


「また嘘ついて、マーガリー王妃だって知っているでしょう?王様も」


 私が指摘するとアレックス王子は苦笑した。


「確かにそうだね。でもそれ以外は本当に知らないんだ。マーガリー王妃の子供が王になれないのはこの瞳を持って生まれなかったからだよ」


「宝石のような瞳が王の証ってこと?」


「そうだよ」


「色々秘密があって大変ね」


「何も難しい事じゃない。レティが僕を愛してくれれば僕はそれで満足なんだ」


「そうしたら気候が安定して国が平和になるって言う事ね」


「だからレティを手に入れれば国が豊かになるんだよ」


 耳元で囁くように言われて私は頷いた。


 いつかバカ王子が信じ込んでいたのはそう言う事だったのね。

 

「バカ王子は私が国を豊かにする能力があると思い込んでいるようだったわよ。いい迷惑だわ」


「それは僕も後悔している。もうすぐレティと結婚できるとつい口を滑らせてしまったよ」


「ちょっと待って、私と結婚の話なんて出ていたの?」


 申し込まれても居ないし、そんな素振りは我が家にも無かった。


「僕の中では順調に進んでいたね。母が亡くなってから忙しくてレティと会うことがなくなってしまったけれど……」


 アレックス王子の中では私はお嫁になる予定だったようだ。

 もう少し早く知らせてくれたら、バカ王子の元に行っても最悪な気分で過ごすことも無かった。

 

「どうして教えてくれなかったの!」


 怒って言うと、アレックス王子は小さく息を吐く。


「ギルバートが心配しているからだ。僕が小さい子を好きな変態だってね。だから20歳を過ぎても変わらずレティを愛していると証明したかった」


「なるほど」


 これも兄の愛か。


 兄を怒る気にもならず私も息を吐いた。


 「大丈夫よ。アレックス様の傍を離れることはもうないわ」


 勇気を振り絞って私からアレックス王子にキスをした。


 アレックス王子の蕩けそうなほどの嬉しそうな笑みを私は一生忘れることが無いだろう。


 

 

 

 

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