無気力勇者、ポーションを作る
「はぁ……、またこの夢か。」
目ざめた……夢の中で目覚める、というのも変な感じではあるが……誠二は周りを見回しながら記憶を探る。
確か、葉月と唯が何かを話していて、それに適当に相槌を打っていたら……。
……って、それは寝る前の記憶か。
この場所に来る前は……。
「そうか、俺は村を追い出されたんだっけ。」
村を出る時に見えたシアの淋しそうな表情を思い出す。
……そんな顔をするくらいなら、引き留めて欲しかったよ。
そう思いながら、セイジは現在の状況を改めて確認する。
まず、ここは、村から離れた森の中の洞窟。どれくらい離れているかは分からない。何といっても、村から出て少し歩いていたら、例のクマ……オウルベアに遭遇して、逃げ回っていたからだ。
わき目も降らず逃げていたため、すでに村がどっちにあるか、どれくらい離れたかなど、一切わからない。
雨風を凌げる洞窟を見つけられたことだけでもラッキーと思うしかない。
次に持ち物。
着ているものは、村でもらった「旅人の服」……動きやすくて生地は丈夫、汚れも目立たないという優れもの。森の中を走り回り、かなり枝などにひっかっかったはずだが、ほころびなど見当たらない。
他には、同じく村でもらった「ヒノキの棒」と「お鍋のフタ」。
鑑定してみると、ただの木の棒と木の板であり、特殊な能力も何もない、無価値なものだった。
誠二はヒノキの棒とお鍋のフタを地面に置くと、「着火」と呟く。
指先から炎が出て、ヒノキの棒に移り、小さな焚火が出来た。
「なるほど……便利だ。」
先程の鑑定も、今の着火の魔法も、誠二の力だった。なんでそんな事が出来るか分からない。だけど、出来そうだと思い、やってみたら出来た。
流石は夢、と誠二は深く考えずに焚火で暖をとる。
ヒノキの棒は武器、お鍋のフタは防具……の筈だが、ただの木の棒や板には用がない。
というか、ヒノキの棒で、あのオウルベアに傷を与えることが出来るのか?
お鍋のフタで、あの爪を受け止めることが出来るのか?
答えは否だ。
どうせ役に立たないものなら、せめて暖を取るために役立ってもらってもいいじゃないか。
誠二は暖を取りながら思考を巡らせる。
色々な疑問点や考えついたこと、そしてこの先の展望など、様々な思考が頭の中を巡るが、お腹が鳴り空腹を感じたところで、思考がいったん中断する。
「夢の中なのに腹が減るのか?」
可笑しな夢だと思いつつ、食料を得るには?と、思考を切り替える。
森の中を歩きながら、目に付いたものを採集していく誠二。
どれが食用に適していて、どれが適していないか?というのは、その植物を見つめて頭の中で問いかけるだけで詳細な情報が浮かび上がる。
先程感じた「鑑定」の力だろうか?
誠二はふと夢の中のミーアというコスプレ少女との会話を思い出す。
「あらゆる知識や情報を……。」といったその答えが、コレ、なのか?
誠二は「ま、どうでもいいか」と頭を振って思考を追いやる。
これがたとえ夢の中だとしても、お腹がすくことに間違いはなく、であるならば、食料の確保は必須という事だ。
たとえ夢の中でも、生きることを諦めたらいけない……何故かそんな気がした。
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「はぁ……ヤバいなぁ。」
洞窟に戻った誠二は、魔法で水を出し、全身を洗い流す。
血まみれだった身体は、一応綺麗になったが、床は水浸し……。
「はぁ、外でやるんだった。」
誠二は、濡れていない床に腰を下ろし、「戦利品」を見分する。
食料を求めて森の中を歩き回った結果、野生の角ウサギ(目つきが怖い)に襲われ、野生の大ネズミ(子犬くらいの大きさがあった……キモイ)に襲われ、野生の大ムカデ(とにかくでかいゲジゲジ……無理っ!)に追い掛け回されたのだ。
一応「ファルシオン」と言う片手剣は呼び出せるのだが、素人の誠二では、素早い相手に対しては、剣に振り回されるだけで、何の役にも立たず、手で殴った方が早い、という始末だった。……まぁ、ゲジゲジ相手にはファルシオンがあって助かった、と柄にもなくミーアに感謝したことは内緒だ。
身体中のあちこちに傷を作りながらも、何とかここまで戻ってきた結果得たものは……。
何かの果物×10(食用可)
毒々しいキノコ×10(食用可)
シイタケに似たキノコ×30(劇毒)
角ウサギの死骸×14
大ネズミの死骸×8
大ムカデの死骸×3
薬草×22
小枝×多数
とりあえず、小枝を集めて火をつける。
うさぎとかネズミの肉は焼けば食べられそうだけど、それ以前に捌き方を知らない。
以前ネットで調べた事はあるが、アレはイノシシだったし……。
とりあえず、熾した火で暖を取りながら果物を齧る。
みずみずしくてほのかに甘い。
梨と桃を足したような味だった。
先がとがった小枝を見繕い、キノコを指して、焚火であぶる。
程よく焼けたところでそのままかぶりつく。
……あまり味がしない。
調味料が欲しいなぁと思いながらも、そのまま齧り、とりあえずの空腹を満たす。
腹が膨れたところでそのまま横になる。
体がだるい……。
誠二はそのまま眠ることにした。
……一人寝って、こんなに淋しかったっけ?
誠二は唯の柔らかな身体の感触を思い出しながら、そのまま眠りにつくのだった。
◇
翌朝、誠二は異常なまでの喉の渇きで目を覚ます。
魔法で水を生成し、飲み干して人心地着ける。
「はぁ、魔法が使えるって便利だよなぁ。」
サバイバルの基本は、とにかく水場の確保だ。
人間、水がなければ生きていけない。
その点、いつでもどこでも水が出せるというのは、非常に便利という他ならない。
「しかし……本格的にヤバそうだ。」
身体が熱っぽくだるい。
昨日?大ネズミに噛まれた後がはれ上がっている。
放っておいていいことなどあるはずもないが……。
「薬なんて……ないよなぁ?」
そう呟いた時、誠二はアルバの村でのシアとの会話を思い出す。
シアは、村で唯一の薬師だと言っていた。
シアの仕事は、森で薬草を摘み、ポーションを調合することだと。
薬草を積みに森に行ったところで誠二を見つけたのだと、あの時のシアは話していた。
つまり、森の薬草でポーションが創れる。
幸いにも薬草は採集済だ。
誠二は薬草を取り出し、頭の中にポーションの調合方法を思い浮かべる。
……かなり複雑な過程を踏み、手間暇をかけなければならないみたいだ。
それに必要な道具もない。
だからと言って諦めるわけにもいかず、道具がないのは別のもので代用し、複雑な工程はすっ飛ばして、調合をすすめていく。
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「出来た……。」
採集してきた薬草のストックが切れる直前、ようやくポーションらしいものが出来た。
鑑定してみると『劣化ポーションD+』となっていた。
「まぁ、無いよりはマシか。」
誠二はそう呟くと、出来上がったばかりのポーションを飲み干す。
「グッ……。」
あまりにもの不味さに、誠二はそのまま意識を失うのだった。
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