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無気力勇者のスローライフ ~魔王?何それ?美味しいの?~  作者: Red/春日玲音


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勇者誕生?

なろうでは久々の投稿です。

不定期更新ですので、長い目で見守ってください。

 親父が死んだ。

 だから何?と言うこともないのだが、その報告を受けたとき、俺の心の中に浮かんだのは「タイミング悪いなぁ」だった。


 親父が入院し、長くないと聞かされたのは2週間前のこと。

 1週間前に見舞いに行ったときはまだ元気で会話もできた。

 最も、交わした言葉なんて

「元気か?」

「あぁ」

「そうか。」


……ただそれだけだったが、男親との会話なんてそんなもんだろう。

 帰り際に親父がポツリと漏らした「すまんなぁ。」と言う言葉は聞こえない振りをした。

 そして、それが俺の聞いた親父の最期の言葉だった。


 親父の容体が急変して、危篤と連絡が入った時、俺は携帯の電源を切っていなければならない現場にいた。

 当然事務所にも連絡が行っていたはずなのだが、わざわざ連絡を取ろうとしてくれる奴なんかいやしない。

 だから、俺がそのことを知ったのは、現場から戻って、自分の事務机の上にぽつんと置かれたメモを見た時だった。


 携帯の電源を入れると、無数の着信履歴と伝言、メールとメッセージが入っていた。

 全て妹からで、何とか連絡を取ろうと必死だったのがわかる。

 それを見て、俺は妹に申し訳ないことをした、と言う気持ちで一杯になる。

 改めて連絡を取ると、親父は既に家に帰っているというので、実家にすぐ戻ることを伝える。

 連絡が取れなかったことを散々詰られたが、親父の死に目に会えなかったのだから、仕方がないことだろう。妹は必死で会えるようにとりはかってくれていたのだから。


 実家では、兄貴が葬儀屋と色々打ち合わせをしていた。

 母は無言で親父に付きっ切り、妹は泣きじゃくりながら、子供達の世話をしている。


 しかし、何だろう?

 親父が死んだと言うのに、俺の中に悲しさはこみ上げてこない。

 妹や母の姿を見ても何も感じない。

 葬儀屋とのやり取りも「めんどくさい」と言う感情以外感じない。

 一言で言えば「無」としか言いようもないくらい、俺は親父の死に対して何も感じていなかった。


「俺は冷たい人間なんだろうな。」

 色々な雑事を片づけて、ぽっかりと空いた時間に、俺は親父の枕元で酒を飲んでいた。

 日本酒の「白雪」……親父が好んでいた銘柄なので、酒のことはよく知らない俺でも、これだけは知っていた。


 親父は仕事人間で、休みの日でも殆ど家にいなかった。

 たまに家で見かけるときは、酒を飲み酔っぱらっていた。

 親父の唯一無二の趣味が酒で、白雪の一升瓶を脇に置いて、チビチビと呑んでいる親父の姿しか記憶に残っていない。


俺が進路について相談した時も、親父はこの酒を飲んでいた。そして返ってきたのは一言「好きにしろ」だったのを覚えている。


「あんたの人生、楽しかったのか?」

 酒を飲みながら、既に返事をすることができない親父に語りかける。

 仕事と酒、それ以外に親父を表す言葉が見当たらないが、最近何となく分かってきたような気がする。

 自分を振り返ってみれば、ここの所仕事しかしていない。

 休日は寝ているか、溜まっている事務処理を持ち帰ってやっているか、だ。


 自分ではがむしゃらに、一生懸命やってきたつもりだが、こうして客観的に見れば、親父とやっていることが変わらないことに気付く。


「ホント、何やってるんだろうなぁ……。」

 親父の枕元で、酒を飲みながら呟く………段々意識が朦朧としてくる。

 ……俺は親父ほど酒に強く無いからなぁ。

 俺が覚えているのはそこまでだった。


 ◇


 ……ん、何だここは?

 気付くと、一面真っ白な世界にいた。

 白い闇とでも言うべきだろうか?

 真っ白で明るいはずなのに、何も見えない。


「あ、気づいた?」

 不意に声がかけられる。

 声のした方に意識を向けると、そこには、露出度の高い、奇抜なコスチュームに身を包んだ少女が立っていた。

 赤と白のコントラストを際だたせたミニのワンピース。胸元は大きくあいているが、哀しいことにそれを主張させるだけのモノがなく、体を動かす度に、スカスカという音が聞こえてきそうだ。

 こちらをのぞき込んでくる少し大きめのクリッとした瞳に、小さめの唇。綺麗というより可愛いという表現が似合いそうな少女が、俺をじっと見てくる。


「えっと、認識できてる?」

「何をだ?」

「このぷりちーな私が分かるかって聞いてるのっ!」

「胸がスカスカのコスプレ少女なら目の前にいるが?」

「誰が貧乳パット盛り盛りだぁっ!」

 ズガッ!っと後頭部に、大きな衝撃を受ける。

 ……受けるが、衝撃だけで痛くもない。


 ……なんだ、やっぱり夢か。

 きっと、目の前の少女も、昨夜仕事の資料として集めた、多数のコスプレ写真の結果なのだろう。

 そうであれば、あのまとまりのない奇抜なデザインも頷けるというものだ。


「それで、その可憐な美少女が俺の夢に何の用だ?ヤらせてくれるのか?」

「なっ、なっ、何バカな事いってんのよっ!」

「どうせなら、バインバインの色気たっぷりのお姉さんが好みだ。」

「キィーッ!」

少女は真っ赤になって、バシッ!バシッと叩いてくる。

その様子が可愛らしいので思わず笑みがこぼれる。


さっき少女には、あぁいったが、実は色気たっぷりのお姉さんはあまり好みじゃない。

どうしてもお店の綺麗なお姉さんのイメージと被ってしまうからだ。

まぁ、あれはあれでいいのだが、どちらかと言えば可愛らしく守ってあげたいような、それでいて本人は自分一人でやれると思い込んでいる、どこか背伸びをしたような感じの女の子が好みだった。

最も、そんな子に現実でお目にかかったことはないのだが。


「それで、この夢はいつ覚めるんだ?」

ポカポカと叩いてくる少女の襟を摘まみ上げ、自分の目線に合うように持ち上げながら訊ねる。

「夢じゃないわよっ!その証拠に痛いでしょうがっ!って言うかいつまで摘まんでるのよ、さっさと降ろしなさいよ。」

「別に痛くはないが……まいっか。」

「フンっ、ようやく本題に入れるわ。」

ジタバタと暴れる少女を下ろしてやると、ふんぞり返り胸を張って偉そうにそう言った。

ただ、いくら張っても、全然盛り上がりがないのが悲しい。


「ここは『狭間の世界』よ。あなたのような『召喚されし者』に色々説明したり力を与えたりする場所なのよ。」

「ふーん。それで帰るにはどうすればいいんだ?」

「聞いてなかったのっ!あなたは呼ばれたのよっ!なんで帰るなんて言うのよ。」

「いや、別に来たくて来たわけじゃないし。それに呼ばれたって誰にだ?」

「女神さまよっ!そして私は女神さまから全権を委任された代理人なのよっ!すごいでしょ。ほら、もっと敬っていいのよ。」

えへんっ、とさらに胸を張る……だから、悲しくなるから、それはやめてください。

「で、どうすれば帰れるんだ?後ろに行けばいいのか?」

俺はそう言って踵を返し歩き出す。

周り一面真っ白で、自分が進んでいるかどうかも定かではない。


「ちょと待ちなさいよっ!なんで帰ろうとするのよっ……待ちなさいってばっ!」

後ろからバタバタと追いかけてきた少女が、俺の背中に飛びつき、止めようとする。

振り払うのは簡単そうに思えたが、瞳に浮かぶ涙を見て仕方なく立ち止まる。

「それで、俺に何の用なんだ?」

「ハァハァハァ……最初から素直にそう言いなさいよ。」

「帰っていいか?」

「ダメだってばっ!あなたは呼ばれたのよっ!世界を救う勇者としてね。」

「……。」

俺と少女の間に沈黙が降りる。


そして、先に口を開いたのは少女の方だった。

「ちょと、何とか言いなさいよ。急に黙られると困るわよ。」

「……いや、勇者って、そんな子供じみた夢を見ている自分に驚いているだけだ。」

「だから夢じゃないのっ!あなたは選ばれた勇者で、私はその手助けをするためにここにいるのっ!わかった?」

「勇者っていきなり言われてもなぁ。何すればいいんだ?」

「世界を救うのよっ!」

当たり前でしょ!と少し小ばかにしたような表情を見せる少女。


「……時給はいくらだ?」

「はぁ?」

「時給だよ。他の労働条件は?時間外手当は出るのか?」

「何言ってるの?……熱はないみたいね。」

少女は俺の額に小さな手を当てて言う。

「こっちのセリフだ。まさかタダ働きさせようってんじゃないだろうな?」

「ちょ、ちょと本当に何言ってるの?世界の危機なのよ?それを救うのが役目なのよ。それなのに時給とか、ほんと訳わかんないわよ。」

「訳わからんのはこちだ。無理やり拉致して強制労働とか、犯罪そのものだろ?帰ったら訴えるぞ。」

「だから何でそうなるのよっ!」


少女は、それから1時間にわたり、延々と世界の危機とそれを救う必要性、女神の慈悲とその力、ついでに自分の有能さと可愛らしさをアピールしたのだった。

もっとも、俺は半分も聞いちゃいなかったが。


「……というわけなのよ。わかってくれた?」

「全然わからん。」

「キィーッ!なに聞いてたのよっ!」

「なにも聞いてない……って言うか、辛そうだな。水飲むか?」

俺は、声をからし始めた少女に水がなみなみと注がれたコップを差し出す。

「あ、うん、ありがと。」

少女はしおらしく、素直にコップを両手で受け取り口をつける。

よほど喉が乾いていたのだろうか、あっという間に飲み干す。

「もう一杯いるか?」

「あ、ううん、もういいわ……って!これどこから出したのよっ!」

「うん?なんか、水が飲みたいなぁって思ったら出てきたぞ……ほら、こういう風に。」

俺は手をコップを握ようにしながら前に出すと、その手に水が注がれたコップが現れる。


「……確かにね、出来るんだけどさ……何の説明もなく、この世界に馴染んだのってあなたが初めてよ。」

少女は疲れた様にそう言って、その場に座り込む。

俺は立ってるのもなんだという事で、少女の横に腰を下ろす。

「どうやら、夢が覚めるまで、ここにいなきゃならんようだから、話くらいなら付き合ってやるぞ。」

「夢じゃないって言うのに。……まぁいいわ。」

少女は、疲れたような諦めたような声でそう呟く。


「ところでアンタ……。」

「誠二だ。」

「は?」

「新見誠二、それが俺の名前だ。」

「どうでもいいわよそんな事。……何よ?」

「いや、こっちが名乗ったんだから、そっちも名乗るのが礼儀ってもんじゃないか?」

「ハイハイ、私の名前はミーアステラ・スィージィアルサム・ベルカム・ド・ステア。麗しの宿命の女神ユースティア様に連なるものよ。」

「ふーん、みぃ、でいいか。」

「ちょっと!勝手に人の名前省略しないでよ。……どうせならミーアと呼んで。」

誠二の短縮の仕方に文句をつける、みぃ改めミーア。

「どっちでもいいだろうに。」

「よくないわよ。それよりアン……セイジにお願いがあるの。」

「ん?」

「改めてお願いするわ。勇者として世界を救って。」

「いや、だからそんな遊びに……。」

再度断りかけてふと考え直す。

どうせ夢なんだし、適当に遊ぶのもいいかもな。

勇者だの、世界を救うだの、学生時代にやったゲームを思い出して少し懐かしさを覚えつつ、夢の中だけでもそんな時代に戻るのも悪くないと思った。


「いいぜ、ただし条件がある。」

「ホントっ!……って条件って何よ。言っとくけど、私の身体っていうのはナシだからね。」

ミーアは自分の身体を腕で隠すようにしながら少し距離を取る。

「何だダメなのか?」

その様子が少し可笑しくて、ついついそんな軽口を叩いてみる。

「うぅ……、でも、世界の為だし……、でもでも……やっぱりダメっ!」

俺の言葉に少し動揺し、上着に手をかけたところで、やっぱり駄目だと、身をすくめるミーア。

「冗談だって、悪かったよ。」

「ホントにぃ?」

「あぁ、本当だ。」

涙目でじっと見上げてくるミーアを安心させるように頭を撫でる。

まるで小さかった頃の妹をあやしているような気分になり、またしても懐かしさがこみあげてくる。


「……じゃぁ、条件って?」

「んー、そうだなぁ、とりあえずチート的な能力はもらわないとなぁ。何の力もなく世界を救うって無理だろ?」

仕事の一環として読み込んだラノベなどには、確かそういうのがあったはず、と思いながらそう告げる。

「それはそうね。言われなくても能力は与える予定よ。流石に魔王に対して無能力じゃ無理だからね。」

ミーアは事も無げにそういう。


魔王?どういうことだ?

俺は混乱する頭を整理しながらミーアとの交渉を続けるのだった。


取りあえず大幅改稿しますので、しばらくは前後が繋がらないかもしれません。

って言うか、非表示ってできないのかな?



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