第19話【Zランクの世界】(後編)
前回からの続き……
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『グァァァッ! ! 』
「……」
城の中に侵入した清火とメテュスは城の中にいる竜人の兵隊達を次々となぎ倒していく。
……流石に城の兵隊は強いな……今までのは雑兵だったってことか……
清火は城の竜人達の強さを実感していた。
その時だった……
『グルルルル……』
「ん……? 」
二人の前に一回り大きな竜人の戦士が現れた。
「……中ボスか……」
メテュスはそう呟いた瞬間、 手から刃物を出現させ竜人の方に目掛けて飛ばした。
すると竜人は素早く刃物を二本指で掴み取り、 メテュスの方に投げ返した。
メテュスは顔すれすれになりながらも間一髪で飛んできた刃物を避けた。
「……こいつ……! 」
「甘く見ない方が良さそうですね……明らかに戦い慣れしている……」
そう言うと清火は両手に黒月を構え、 城の通路全体に弾丸を反射させるようにして弾幕を張った。
とりあえずこれで何とかなればいいんだけど……
『……』
しばらく反射する無数の弾丸を見つめていた大きな竜人は何も動じることなく弾幕の中へと歩み始めた。
すると……
「……嘘でしょ……! 」
大きな竜人に当たった弾丸が全て鱗に弾かれてしまったのだ。
どんだけ硬い鱗してんのよ!
「駄目じゃねぇか! 」
「クソっ! 」
慌てた二人は武器を構えようとすると突然大きな竜人はメテュスの方に目掛けて猛スピードで突進してきた。
(ッ! ヤバい……! ! )
反応に遅れたメテュスは被弾を覚悟した次の瞬間
『ガァァンッ! ! 』
激しい金属音と同時に大きな竜人の動きが止まった。
その竜人の目の前にいたのは……
『……モルス様のお手を煩わせるな……人間……』
ゼヴァだった。
ゼヴァは剣を使って竜人の突進を受け止めたのだ。
「なっ! なんだこいつ! ? 」
当然メテュスは驚く。
「説明は後でします……今は敵を何とかしませんと……ゼヴァ! 」
『承知……』
するとゼヴァは剣を薙ぎ払い、 竜人の体を弾き飛ばした。
ゼヴァは構えの体制を取ると竜人もそれに合わせて背中に背負っていた大剣を構えた。
次の瞬間、 竜人の姿が一瞬消え、 ゼヴァの目の前に瞬間移動し剣を振りかざした。
それをゼヴァは素早く剣で受け止め、 自身よりの倍もあろう大剣を難なく弾いた。
すかさずゼヴァは竜人の脇腹に剣を振り上げる。
しかし竜人の動きは素早く、 ゼヴァの攻撃を防いでいく。
そしてしばらくゼヴァと竜人の凄まじい攻防戦が続いた。
すると……
『……力……素早さ……共に良し……しかし……』
『動きはまだ未熟……! 』
ゼヴァはそう呟いた瞬間、 竜人が振り下ろした大剣を自身の剣に滑らせるように軌道をずらした。
それで体制を崩した竜人は一瞬隙を見せてしまい、 ゼヴァに首を刎ねられてしまった。
その瞬間、 僅か0コンマ単位の速さだった。
流石ゼヴァ……黒月の銃弾でも通らなかった竜人の体をいとも簡単に……
戦いが終わったゼヴァはメテュスの方をチラっと見ると清火の元に戻ってきた。
すると……
『モルス様……あの人間には十分ご注意を……』
清火に耳打ちをし、 そのまま消えて行った。
……ゼヴァも警戒してる……あまり面倒事にならなければいいんだけど……
清火はそんなことを思いながらも先へ進んでいった。
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『ドラゴンズテリトリー』の次元迷宮、 最上階……
その後、 数時間掛けて城中を蹂躙して回った清火とメテュスは遂に最上階へとたどり着いた。
本当に大きな城で迷ってしまった……お陰で何度か中ボスに会えたけど……
良くも悪くも迷ったことで清火はまた能力が強化されたのだった。
「いよいよボスだな……」
「……! 危ない! 」
清火が何かを感じ取りボス部屋の扉の前から離れた。
次の瞬間、 清火の何倍もあろうという巨大な扉が一瞬にして斬り刻まれ、 そこから青い炎が噴き出してきた。
メテュスは斬るように手を振り払うと噴き出てきた炎が一瞬にして散開してしまった。
「……チッ……魔力防護を貫通しやがった……」
炎を振り払ったメテュスだったがその手には軽い火傷を負ってしまった。
「大丈夫ですか……」
「このくらい何ともない……それよりも……厄介な奴が出やがった……」
そう言うメテュスの視線の先にいたのは……
『……やっと来たか……人間……』
玉座にどっしりと構える老人の見た目をした巨人だった。
その手には包丁のような巨大な剣を持っている。
竜人……じゃない……どうして竜人の王が人間の見た目をしているんだ……?
すると謎の老人は玉座から立ち上がる。
『この時を今か今かと待ちわびていたぞ……我は竜王……名は持たぬ竜王である……』
それを聞いたメテュスは驚く。
「まさか人間の言葉を話す魔物がいるなんてな……初めて見た……」
「……」
また人の言葉を話すボス魔物……これでゼヴァを始めて三体目……もしかしたら……
何か考えた清火は時空操作の能力を使い、 辺りの時間を止めた。
すると清火は動きを止めた竜王の体に手を触れた。
『……貴様……これは一体……時空操作の能力か……』
「ちょっと話がしたくてね……あんたみたいな魔物に会ったのは初めてじゃないから……」
人に聞かれると色々と面倒だし……これが一番手っ取り早い……
すると竜王は冷静な様子で清火と話を始めた。
『貴様……普通の人間とは異なる気配が入り混じっている……何者……』
「答えたらこっちの質問にも答えてくれる? 」
清火がそう言うと竜王は静かに頷く。
やっぱり……今回は意外と話ができる相手だ……ゼヴァやリーグの時はあまり話ができなかったからな……
そして清火は竜王に今まで自分の身に起こった事を話した。
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『……そのような事が……』
話を聞いた竜王は意外にも冷静な反応をしていた。
……何だろう……この魔物から……どこかで会ったような……そんな雰囲気がある……
清火は竜王に妙な親近感を感じた。
『……懐かしいな……我も其方のような人間と……色々と話をしたものだ……』
「へぇ……魔物も人間と話す事があるんだね……」
『……我も過去は竜の騎士として……人間と共に戦いに明け暮れていたものだ……』
……人間と一緒だった……という事は……ここは元々一つの世界として存在していた場所……?
『さて……色々と聞かせてもらった礼だ……我に分かる事であれば質問するといい……』
「……」
そして清火はいよいよ竜王に質問をした。
「単刀直入に聞く……あんたら次元迷宮の魔物達は一体どこから来ていて……ここは一体どういう場所なの? 」
……過去にゼヴァやリーグにも聞いてみたけど……操られる魂だけの存在になったからか……答えてくれなかった……聞くなら今しかない……
そう考えていた清火に返ってきた答えは……
『我々は元々こことは違う空間……すなわち普通の世界に存在していた……誰に連れてこられたのか……ここは一体何なのか……それは分からない……』
「なるほど……つまり私達の世界に次元迷宮が現れた原因はあんたらにも分からないって事……」
『左様……しかしこの世界について分かっている事は少しながらある……まずここは我の記憶を元に構築された街だということ……そして……』
『何者かが……我々に其方達の世界を攻撃させるよう命令している……』
「え……それって……」
その言葉が意味するもの……すなわち……
次元迷宮を作った者がいる……ということ……?
『我は争いは好きではない……だが……何者かが……我に命令するのだ……『外の世界を滅ぼせ』……『剣の英雄を殺せ』……と……』
「……」
漫画とか小説で見たことある……その世界は元々何者かに作られたもので、 その世界を支配する存在がいるっていう……そしてその存在は世界を思うがままに操ってるやつだ……
清火に戦慄が走る。
「それって……神か何か……なの……? 」
『分からぬ……だが……其方は恐れるなかれ……』
「へ……? 」
『其方には……『その存在』に『死』をもたらす程の力を持っている……』
そう言いながら竜王は清火の胸に指を差す。
『其方の魂には……何かがいくつも混じっている……強大な何か……我なんかでは足元にも及ばぬ……』
……きっと……あの霧みたいな何かと……怪物みたいな青年の影、 そしてその妹らしき何か……私の中で巣食っているという事か……そしてその何か達は……次元迷宮を滅ぼそうと私に力を貸している……
今の話を聞いて清火はそう捉えた。
すると竜王は清火の前に跪いた。
『我が知るのはこの事のみ……他に聞きたい事が無いのなら……どうか一つ、 願いを聞いて欲しい……』
「……」
清火は予想ができていた。
『どうかここで……我に終わりを与えて欲しいのだ……我を越える者よ……』
「そんな事だろうと思ったよ……戦いを好まない王に……すぐに街まで進軍してこなかった竜人の軍隊……ずっと待っていたんでしょ……私みたいな人間を……」
『……『死』よ……どうか安らぎを……』
竜王はただそれしか言わなかった。
「はぁ……わかった……」
そう言うと清火は変身した。
そして竜王の頭に手を当てる。
「……ここまで命令に耐えてきたんだよね……もう大丈夫だから……」
『……感謝する……『死』よ……全ての生命の管理者よ……』
『……この感覚……やはり変わらぬな……ふふ……』
そんな意味深な言葉を最後に、 竜王の体は灰のように散っていった。
するとそこから迷宮のコアが出現した。
……迷宮のコア……竜王の体に入っていたって事か……とことん可哀想な奴ね……魂にして操るのは今回はやめておいてあげるか……
清火はそんな事を思いながら変身を解き、 迷宮のコアを手に取った。
「……そうだ……時間解除……」
清火はそう呟くと辺りの時間が再び動き出した。
「……ッ! ? 」
再び動き出したメテュスは何が起きたのか理解ができなかった。
すると清火はコアをメテュスに投げ渡した。
「……申し訳ないですけど、 もう終わらせてもらいましたよ……」
そう言うと清火は迷宮の出口へと向かった。
「……」
(あいつ……何をしたのか知らないが……俺を馬鹿にしやがってる……)
「許せねぇ……」
「消してやる……」
メテュスから不穏な雰囲気が漂う……
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その後、 清火とメテュスは基地へと戻ってきた。
外で戦っていたルクスとアーラ、 クルテルは竜人達の全滅に成功し、 ドラゴンズテリトリーは完全に制圧されていた。
「もー、 二人とも遅いわよ! こっちは使えない兵士達の治療で大変だったんだから! 」
「結果的に死傷者が出なかっただけまだマシの方ですよ……」
怒るセラピアに清火は冷静に言う。
すると一同の前にルーカスが現れた。
「素晴らしい……君らには感謝してもしきれない……Zランクはやはり仕事が早い……」
「都市伝説になってる迷宮の割には大したこと無かったな! 」
「そんなボロボロになってて良く言いますよ……」
「前線は大変だったようだな……お陰でこちらの仕事は楽だった……」
……どうして強い人って……危機感が足りない人が多いんだろう……
清火は攻略者達の様子を見てそう思った。
「……しかし済まない……今回の攻略は公に報道することはできない……何せ国が秘密裏に行われたものだからな」
「まぁ……その方が私としては都合がいいですし……構いませんよ」
これ以上有名になったら面倒でしかないし……
「……君からそう言ってもらえると助かる……」
そして今回の攻略作戦は終了した。
仕事が終わった一同が撤収の準備をしている中、 メテュスはじっと清火の方を睨んでいた。
「……あいつは……気に食わない……」
「……」
その気配に清火は気付いていた。
……警戒すべきだとは思っていたけど……案外早めにその時が来そうね……
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その日、 ドラゴンズテリトリーに残った竜人の死体の処理をする軍を残して清火を含む攻略者達は先に街へ戻った。
そして街へ着くころには夜中になっていた……
「……拳一さん、 私は少し散歩してきますので……ここで……」
「えっ! モルス様! ? 」
清火は突然何を思ったか、 走行中の車のドアを開け、 そこから飛び降りた。
拳一は車を停止させ辺りを見回したが清火の姿は無くなっていた。
「モルス様……一体何を……」
…………
「……」
清火は空間操作の能力を使って人気のない空地へ瞬間移動していた。
……さっきから妙な気配がするとは思っていたけど……これは流石にあからさま過ぎる……
空地の真ん中で立ち止まった清火は月に照らされていない影の方を見た。
「もう気付いてますよ……出てきたらどうです? 」
清火がそう言うと影の中から何者かが姿を現した。
「……」
現れたのはメテュスだった。
「……あまり揉め事にはしたくないんですけど……見逃す気は無いみたいですね……」
「……その態度……会った時から気に食わねぇとは思っていたんだ……自分が一番だと思い込んでいる雑魚がよ……」
……なるほど……どうやらあいつは自分より格上の存在が許せない性格なんだ……いや、 認めたくないと言うべきか……
するとメテュスは両手に真っ黒なオーラを纏わせる。
「俺は常に一番じゃなきゃいけない……俺より上の存在はあってはならない……俺は誰よりも強いと思っていた……お前と出会うまでは……」
「……だから私を殺してまた一番になりたいと……」
「俺のプライドを貶したお前が悪いんだからな……十分苦しめながら殺さねぇと気が済まねぇ……」
……まぁこうなるとは思っていたけど……それにしても……
愚かな奴……
すると清火は大鎌を出し、 変身した。
それを見たメテュスは嘲笑う。
「そんなんで俺に勝てると思ってるのかよ! 分かってるだろ……俺は本気さえ出せばこの街なんて数秒で破壊できるんだ……無駄な事は――」
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと来い……」
清火はメテュスの話を遮るようにそう言うとメテュスはキレた様子で清火の方に目掛けて手を振り払った。
次の瞬間、 清火の首が何かに斬られたように刎ね飛ばされた。
「……フ……ハハハハハ! 俺を侮辱するからこうなるんだ! せいぜい後悔して死ね――」
メテュスが勝利を確信したその時……
「……へ……? 」
突然メテュスの視点が宙を舞い、 首から下の感覚が無くなった。
メテュスはいつの間にか首を刎ねられていたのだ。
すると……
「……Zランクの攻略者と言われる割にはこんなものか……イージスさんとザヴァラムさんの方が余程強いかもしれないね……」
首を飛ばされたはずの清火が何事も無かったかのように無傷でその場に佇んでいたのだ。
(な……に……が……)
意識が残っていたメテュスは何が起きたのか訳が分からなかった。
「今あんたは自分で自分の首を斬ったんだよ……正確には『私の首が斬られた』という『死の事象』が『メテュスの首が斬られた』という事になったって事……」
「……! ? 」
喋ることができなかったメテュスだったがその表情は驚愕と戦慄が混じっているようだった。
……人には使わないとは決めていたけど……私を殺そうとしてくるなら話は別……命を奪うのなら……相手も命を奪われる覚悟を持つべき……それが例え人間であっても……
そう考えていた清火はメテュスを殺すことに何の躊躇も無かった。
「自分より上がいるという事を認められる人間だったら……少しは状況が違ったかもしれない……でもこれがあんた自身が導き出した結果……後悔してももう遅い……」
そう言うと清火はメテュスの前から立ち去って行った。
その時、 メテュスは既に息絶えていた……
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後日、 メテュスの死体が協会の職員によって発見された。
攻略者協会本部にて……
「会長、 メテュスの死亡が……今朝確認されました……」
「セラピアの能力を持ってしてもダメだったか……死因は……」
「……自らの能力による……自殺でした……」
それを聞いたルーカスは驚愕する。
「まさか……モルスとは関連性が無いと! ? 」
「はい……現場の痕跡やメテュスの傷口からでは……攻略者モルスとの関連性は一切見受けられませんでした……」
するとルーカスは考え込む仕草を見せる。
「……まさか……メテュスが殺される事は予想していたが……モルスが関係していないなんて……」
その時、 ルーカスは背筋に寒気を覚える。
「……モルス……一体君は……メテュスに何をしたのだ……」
…………
その頃、 清火は残った滞在期間を使ってローナと共にアメリカを観光して回っていた。
「キョウカ! 早くこっち来て! 」
「そんな慌てなくても……」
……メテュスが死んだことは恐らくすぐに報道される……でも……きっと私との関連性は無いと言われる……あの能力は……
人の理解を越えているから……
そんな事を考えながら清火は空を見上げる。
「……もう……後戻りはできない……」
「おーい、 キョウカー! 早く早く! 」
清火はボーっとしていると遠くからローナに呼ばれた。
「はいはい……」
清火は急いでローナを追いかけて行った。
三章へ続く……
ここまで閲覧して頂きありがとうございます。
第三章では主人公モルスの戦いがいよいよ後半に差し掛かります。
モルスの恐るべき力を手にしたその理由、イージス、ザヴァラムが探しているものとは何なのか……どうぞご期待ください。




