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I am Aegis Mors 2  作者: アジフライ
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第11話【殲滅開始】

“ジャラッ……ジャラッ……”

暗い洞窟の奥から鎖の重たい金属音が迫ってくる……

「……酷い有様……」

暗闇の中から現れたのは魔物の死体を鎖で縛り、 引きずり回している清火だった。

数刻前、 清火は協会からの要請で一週間もの間次元迷宮から帰還してこない攻略者チームの捜索をしていたのだ。

そして現在、 捜索対象である攻略者チームが死体となって発見された。

……この食いちぎられた跡……獣か……まだ新しいみたいだし近くにいるかも……

死体を調べた清火はチームを襲った魔物を探しに洞窟の奥へ進んでいった。

…………

しばらく奥へ進んでいくと段々と獣の臭いがしてきた。

「……近い……」

清火は気配を感じ、 黒月と大鎌を出した。

……新しい能力を使ってみるか……

清火は新しい能力を試そうと黒月に魔力を注いだ。

すると黒月に描かれている青白いラインは赤色に変化した。

「……どうせ岩陰に隠れてるんでしょ……」

そう呟くと清火は前方に黒月を撃った。

次の瞬間、 十数メートル先に飛んだ弾丸は一瞬にして赤い光を放ち、 巨大な赤い結晶を生み出した。

その結晶は剣のように尖っており、 あらゆる方向に広がっていた。

「……やっぱり」

清火の視線の先には結晶に突き刺さった何匹もの狼型の魔物の姿があった。

獣は単純で予測がしやすい……今回は簡単だったなぁ……帰りにギルドに寄るかぁ……

そんな事を考えながら清火はボスのいる部屋へ向かった。

…………

次元迷宮、 最下層……

ボス部屋にたどり着いた清火は早速部屋に突入した。

「獣が蔓延る迷宮には獣のボス……か……」

そう呟く清火の前方に現れたのは巨大な狼の魔物だった。

顔が三つあり、 口からは火を噴いている。

ボスは清火を威嚇する。

しかし清火は冷静な表情でボスの元に歩み寄る。

その目には恐怖の感情は一切感じられず、 あるのは……




獲物を確実に殺す『殺意』のみ……




「……今殺してやるから大人しくしてろ……」

そう呟きながら清火はボスを睨み付け、 大鎌を構える。

その溢れる殺意を感じたボスは一気に恐怖した。

その時、 迷宮のボスの目に映ったのは自身よりも巨大な死神の影だった……

数十分後……

迷宮の出入口からコアを手に持った清火が出てきた。

「はぁ……今回はハズレか……」

ロクな能力を獲得ができなかった……やっぱり低ランクの迷宮は駄目ね……

清火はスマホに調査記録を書き、 コアを破壊した。

清火がギルドを設立してはや一ヶ月、 ギルドには相変わらずローナと雷しかメンバーがいない。

その理由は清火が加入希望者を次々と拒否しているからだ。

清火からすればこれ以上の人数をギルドリーダーとして管理するのは面倒、 戦力は最低限で抑える事ができればそれでいいという考えなのだ。

「……ん? 」

調査報告をしに協会へ向かう途中、 清火の元に一本の電話が掛かってきた。

……雷さんか……何だろう……

「もしもし……」

『あぁリーダー、 実は例の件で話があるとローナが……』

「……分かった……協会への報告が終わり次第そっちに向かう」

この時、 清火は次元迷宮の研究家であるローナにある依頼をしていた。

それは清火の使う魂達についてである。

前から気になっていたけど……私の使う魂達……あんなに従順なのに感情も何も持たないのだろうか……ゼヴァは他の魂とは違って喋れるみたいだけど、 何も考えていないとは思えない……

清火に従う魂達に少し不安を感じていた清火はローナに魂達と清火に力を与えた者についての分析を依頼していたのだ。

「……何か一つでも分かればいいんだけど……」

そう呟きながら清火は協会に向かっていった。

…………

殲滅ギルドにて……

ギルドに来た清火はローナのいる研究室へ向かった。

「ローナ、 何か分かったの? 」

「キョウカ……えぇ、 少しね……」

……にしても部屋が随分と散らかってる……まさかここに住み込んでるの?

しっかりとした家が無いローナはギルドの研究室に住み込んでいたのだ。

まぁいいか……別に迷惑でも無いし……

そんな事を考えているとローナは清火にパソコンの画面を見せた。

そこには清火には理解のできない図形や文章が書かれていた。

「……ナニコレ……」

「まぁそんな反応になるとは思ってたよ……ここに書かれているのを要約すると……」

ローナは説明を始める。

「結果から言うとあなたの使う魂達には分からない事だらけだったわ……彼らは本当に魔物達の魂なのかどうかは分からないし……私はそういった宗教的なものには詳しくないしね」

「そう……それは感情は無いって事でいいのかな? 」

「さぁね……今回研究に協力してくれたゼヴァからは清火への忠誠心以外は何も感じ取れなかったし、 内部や体を構成している物に関しては装置がまともに認知しなかったから分析ができなかったし……」

「そう……」

やっぱり私の使う魂達には何か隠されてる……分析はできなくてもそれだけは分かる……

「でも、 キョウカの力に関しては少し分かったことがあるの……今回の本題はそこね……」

「え……何か分かったの! ? 」

むしろそっちの方が分析が困難だと思ってたんだけど……

するとローナは清火にもう一つのパソコンの画面を見せた。

「これはあなたから採った血液サンプルから出たデータよ……ここには魔力の反応が出ていたの……」

「それはつまり、 私の血には普通の人間とは違う性質があるという事か……」

「そういう事……しかもその魔力は血液の量に反して物凄く濃いの……お陰でサンプルを入れていた試験管が何本も割られてしまったわ……」

そんなに強い魔力を持っているのに私の体には何も影響が出ていない……むしろ日に日に強化されてきている……もしかしてあの時食べたリンゴのお陰?

心当たりのある清火はローナの話を引き続き聞く。

「でもおかしな話よね……そんなに濃い魔力を持っておきながら、 あなたの体には影響がない……清火、 あなた……この魔力を手に入れる前に謎の少女に会って謎の果実を貰ったって言ったわよね? 」

「えぇ、 やっぱりそれが何か関係があるの? 」

「むしろそれしか可能性は無いわ……恐らくその果実には清火の体を膨大な魔力に適応できるようにする作用があったのね……是非ともその果実を分析したいんだけど……もう無いのよね……」

「えぇ……私が目を覚ました時にはもう消滅していたの……」

「食べる前に私の所に来てくれればよかったんだけど……まぁ仕方ないわね……」

あのリンゴがあれば詳細が分かったのか……本当にもったいない事しちゃった……というか得体の知れないものをどうして食べようと思ったのか過去の自分に問いたい……

ローナは話を続ける。

「ただもう一つ、 あなたの血液から出ている魔力……ただの魔力じゃないの……」

「ただの魔力じゃない……? 」

「キョウカ、 あなたの持っている大鎌……ちょっと見せてもらえる? 」

「え……うん……」

そう言われるがままに清火はローナに大鎌を出して見せた。

するとローナは大鎌を凝視する。

「……やっぱりね……このオーラ……キョウカ……あなた、 この鎌と繋がっているわね……」

「繋がっているって……どういうこと? 」

「この鎌……いえ、 あなた自体にも恐らく……次元迷宮の魔物の命を根元から絶つ何かしらの力がある……」

「根元からって……どういうこと? 」

「次元迷宮に出現する魔物達は殺しても再びどこかで湧くのは知っているわよね? 」

……確かにネットで聞いた事がある……次元迷宮内で倒した魔物の死体はしばらくすると魔力に還元されて体は消えるけど、 何分か経つとまたどこかで復活するって……実際の目撃映像もあるし……間違いは無い……もしかして……

「えぇ、 ネットでちらっとだけ見たことある情報だけど……まさか……」

「そのまさかよ……あなたにはそんな次元迷宮の魔物を根元から絶つ事ができる力を持っているの……分析した結果、 ゼヴァの体から放出されているエネルギーは検知できたの……そしてそれはゼヴァの姿を保たせる骨組みのような役割を果たしていた……そのエネルギーこそあなたの血とその鎌から出た何かしらのエネルギーと同一の物だったのよ……」

なるほどね……ならあの謎の少女みたいなのが言ってた『全ての魂を我が力に』ってセリフの意味が少し分かったかも……恐らく私とこの鎌の持つ力には次元迷宮に出てくる魔物達の魂か何かを完全に切り離し、 それを支配下に置く事ができる作用があるんだ……

するとローナはこんな話を始めた。

「実はキョウカ……話が少し変わるけど、 このエネルギーのデータベースを調べてみたら……過去にもこの力を持った人間が一人存在していたことが分かったの……」

「えっ、 それってどういうこと! 」

「まぁ話を聞いて……その人はもう次元迷宮で死んだことになっているの……だから本人に確認しようにもできないから本当の情報かは怪しいのよ……」

ローナはそう言うが清火にはその人物が誰なのかは予想できた。

……次元迷宮で死んだことになっていて私と同じ力を持った人間がいた……こんな強力な力を他に持っていた人物がいるとすれば可能性は二人しかいない……

そう、 その人物とは……

「ちなみにその人間の攻略者ネームは『イージス』って言うらしくて……本名は分からないけど、 過去に攻略した次元迷宮のデータから見るに相当の高ランクの攻略者だったみたい……」

「……その人の名前なら協会の会長から聞いた……詳しくは知らないけど……次元迷宮で死んだことになっているっていうのは聞いたわ……」

「なんだ、 知っていたのね……でも結局はその人物が何なのか……一体どんな力を使っていたのかも分からなかったわ……あなたのように倒した魔物の力を吸収したり魂を操ったりとかしていたのかもね……」

「……ありがとうローナ、 もう十分……これ以上調べても何も分からなさそうだし、 研究用の装置が私のせいで壊れたらあなたの活動に支障が出ちゃうものね」

「あまり力になれなくてごめんなさいね……何せこんなこと初めてだから……魂だとか死神だとか宗教絡みの事は理解しかねるし……」

「構わないよ、 それと……これ」

清火はローナに次元迷宮で採ってきた素材を手渡した。

「依頼料って訳じゃないけど……ローナが好きそうな珍しい鉱石やらを手に入れてきたから、 新しい武器の開発にでも使って頂戴……」

するとローナは目を輝かせながら素材を受け取った。

「oh! キョウカ、 気が利くじゃない! でも……もっとあなたの体についても研究してみたいものだわ……」

ローナは何やら良からぬ事を考えているかのような目で清火の体を見る。

「絶対変な事考えてるでしょ! ! お断り! /// 」

顔を赤らめながら怒鳴ると清火は研究室を後にした。

全く……これだからあの変態科学者が苦手なんだよ……///

そんな事を思いながら清火はギルドを後にした。

…………

研究室で一人になったローナは清火に渡された珍しい鉱石を眺めながら清火の力について考えていた。

「……あの力……まさに次元迷宮に存在する悪意あるモノを消し去る為にあるかのようなものだった……」

キョウカは誰からその力を手に入れたのかはよく知らないみたいだし……一体誰が……何のために……わざわざキョウカに……

考えれば考える程謎が深まるばかりだった。

「……でも……あの力……悪い物では無さそう……しばらく様子を見るとしようかな……」

そんな事を呟きながらローナはパソコンに映し出されている清火の血液サンプルのデータを見る。

「……『殲滅する死神』……ねぇ……」

薄暗い研究室で一人、 ローナはふとそう呟いた……

その頃、 雷はギルドの名声向上の為に次元迷宮の攻略に勤しんでいた。

……何やらローナさんと清火さんは秘密裏に何かの研究をしているように見えたけど……妙な騒ぎが起きなきゃいいんだけど……

そんな事を考えながら雷は猛スピードで魔物の群れの中を駆け抜け、 次々と魔物を斬り捨てて行く。

「余計な心配は無用ね……清火さんはああ見えて結構優しいし……」

すると雷の背後に巨大な鳥型の魔物が襲い掛かろうとした。

しまった……私としたことが気を抜いて……!

油断した雷は反応が遅れ、 襲われそうになった瞬間……

「……忙しそうですね、 雷さん」

清火の声と共に鳥型の魔物は背後から何者かに切り裂かれてしまった。

そして雷の前に現れたのは先程ギルドを後にした清火だった。

「リーダー! どうしてここに? ローナさんと話をしに行ったんじゃ……」

「話は終わったよ、 それで空間操作の能力で瞬間移動して雷さんの様子を見に来てみれば……偶然魔物に襲われそうになっていたものだから」

「面目ない……Sランクの私とあろう者が……」

「いいですよ別に、 丁度暇つぶしをしたかったのであなたが迷宮にいて良かったです」

そう言うと清火は黒月と大鎌を構えた。

「一緒に行きましょう……」

「……」

……変な事を考えるのは止めよう……清火さんは悪い人じゃない……きっとこれからだってならない……

そんなことを思いながら清火と雷は次元迷宮を進み始めた。

「殲滅開始! 」

続く……


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