笑ったら熱が出た 〜 猫バカ狂騒曲 〜
最近、寒さに顔が固まるばっかりで、笑うこともなかったせいだと思う。
久々に笑ったら、熱が40.2℃も出た。
だけど気分はとてもいい。
高速道路のサービスエリアで車を降りて、歩いていた時だった。猫の鳴き声がする。探してみると、寒空の下、ベンチの下に兄弟らしき猫が3匹、うずくまって会話をしているのだった。
私は何もあげられるものを持っていなかった。売店に入り、何かないかと見て回り、お土産物のかまぼこを見つけた。さすがはこういうところの名産品だ。掌に収まる小さなサイズが800円もする。私はそれを猫のために買った。
表に出ると、まだ鳴き声はしていた。私はホッとした。こんなものを持って帰って自分で食べるわけにはいかない。それはこの上なく寂しいことのような気がした。
歩きながら袋からかまぼこを取り出した。
ガサガサガサ
にゃっ?
3匹がこちらを振り向いた。
かまぼこの包装を開けると、派手な音がした。
ビリビリバリリ
にゃー!
にゃー!
にゃー!
まっすぐこちらへ歩いて突撃して来る子たちは、みんな白いところが真っ白だった。背中のオレンジもたまらない。
猫様達が私とかまぼこだけを見つめてくれている。
私の中が、最近の嫌なことをすべて忘れて、ぱあっと明るくなった。
猫様達は一匹だけ少し身体が大きくて、でも3匹とも同じ柄。こんな野良の兄弟って、いるものだろうか? どう見ても親子ではない。
フガ、フガ、フガ、と夢中になってかまぼこを仲良く食べる。
お腹空いてたんだろうな。
毛並みがすごく綺麗なのは、3匹で整え合ってるからかな。
周囲の人の目が恥ずかしかったけど、全開の笑顔になった。撫でさせてはくれなかったけど、その食べっぷりを見ているだけで、ニヤけて、ほころんで、笑顔が咲いた。
ああ……。猫好きでよかった。
こんなことで幸せの絶頂を感じられるのだから。
猫たちはかまぼこを完食すると、バイバイも言わずに私から距離を取り、ベンチの下に隠れ、毛づくろいを始めた。
それでいい。私がもし猫さらいだったら、君たちは大変な目に遭うところだ。
笑うのは疲れることだ。すべてのエネルギーを使い果たしたのか、家に帰ると熱が出た。
バカだと思いたいなら思うがいい。
私は今、久しぶりに幸せだ。