未来予想はむずかしい
大原さやか朗読ラジオ 月の音色~radio for your pleasure tomorrow~(https://www.onsen.ag/program/tsukinone)の「月の文学館(テーマ:はるばる先に)」に投稿したショートショート(不採用でした)。
ある日、我が家に古い封筒が届いた。中身は、祖父の書いた手紙だった。
「これを読んでいるのは息子、いや、きっと息子のこどもだろう。
なにしろ、100年後に向けた手紙だからな。しかし、手紙が届いているなら、住んでいる家は同じはずだ。私の子孫よ、我が家の庭に、大きなミカンの木があるだろう。その下を掘ってみろ。それが、私からお前たちへの、秘密の遺産だ」
私はすぐに、庭のミカンの木の下を掘り、たくさんの金貨が入った木箱を見つけた。
「じいちゃん! こんなものが!」
あわてて報告する私に、祖父母と両親が集まる。
「おおー、そうじゃそうじゃ、なにしろ150年前に書いた手紙じゃから、すっかり忘れ取ったわい。しかし、あの時自分が埋めたお宝に、こうしてまためぐり合えるとはのー!」
そう、医学が進歩して、人間の寿命が300歳近くまで伸びるとは、当時の祖父には想像もつかないことだったのだ。