魔王城での出会い
近くにいた給仕係からワインのはいったグラスを受け取り、一気に飲み干す。
お姫様と同じぐらい愛してやまないお酒。
お代わりを貰おうとキョロキョロしていると、突然後ろから声をかけられた。
「」
思わず肩が跳ねる。わ、私のこと!?後ろを振り返ると、長身でいかにも上流階級の顔立ちのいい男性が、私に笑顔を振りまいていた。
「な、何でしょう?」
こんな人が私なんぞに喋りかけてくださる!?
まだ始まったばかりだけど、パーティー最ッッッッッッ高です!!!
「貴方があまりにも美しかったので、無礼ながらも声をかけさせていただきました。少しお話しませんか?」
「もちろんです。そんな風に言っていただけて光栄です」
なんって素敵な方なの!?金色のふわふわパーマに、ホーランのような人懐っこい笑顔。クリクリとしたエメラルドグリーンの瞳はなんとも愛らしい。男の人に対して、愛らしいなんていう表現はどうかと思うのだけれど。
優しい口調にすっかり安心し、彼についていくことにした。
彼の名はアレン・ローズベルグというそうだ。彼と共にバルコニーへと出る。広いバルコニーには数組の男女がそれぞれに話をしていた。距離があって何の話をしているかは分からないけれど、皆互いの距離が近いので特別な雰囲気だ。
やばーい、気まずーい。
私は玉の輿狙いだけど、相手が誰でも言い訳ではない。全てにおいて誠実な人がいい。目の前にいるアレン様はいかにも女性慣れしていそうだし、顔はかっこいいけどだめだ!惑わされるな私!顔はかっこいいけど!絶対毎回パーティでこうやって女の子連れ出しては甘い言葉で釣り上げるのだ。ああ、絶対そうよ。
周囲の甘い雰囲気にすら恐ろしくなってきた。ガタガタと震える私には気付かず、彼は楽しそうに話をしている。
バルコニーの下には小さな庭園が広がり、黒色の薔薇が植えられているのだろうか?月の光に照らされ、不気味に光る様がとても美しい。
「エミリアは今日誰と来たの?」
お互いに自己紹介をし敬語もやめようという話の後、そんなことを聞かれた。
「ええっと、幼馴染の付き添いです」
「…まだ敬語……」
「あ、すみません」
胡散臭い貴方のペースに巻き込まれないように必死なのよ!許して!!
「まあいいや。幼馴染の付き添いって仲良しだね?」
「優しいというか…報酬をもらっているので」
屈託のない笑顔で褒められると、私の生い立ちや職業のことまで何でもかんでも正直に話してしまう。
「へえ、『何でも屋』かあ。……じゃあ僕の頼みも聞いてくれる?」
「仕事の話なら喜んでします!」
と、笑顔で答えたその時。アレン様の後ろからこれまた顔が良すぎる殿方が「アレン、いい加減にしろ。
戻るぞ」と現れた。
エッ、いや、エッ!?顔、良すぎん?
漆黒色の髪と瞳、肌は白く陶器のように美しい。毛穴どこ?状態だ。
思わずリップ何使ってます?って聞きたくなるほどの血色のいい唇。スラっとした体躯に高身長で、絵画の中から出てきたのか?え?と逆ギレしてしまいたくなるようなルックス。
アレン様も端正な顔立ちなのだが、ごめん。正直この漆黒の人(名前分からん)、めちゃくちゃいい。顔がめちゃくちゃタイプ……!!!
この漆黒の彼の独特なオーラのせいか、思わず魅入ってしまう。こんな人初めて見た。
「あっれー☆ルイじゃん、何?ヤキモチ?これから仕事の話するっていうのに」
ヤキモチ………?誰が、誰に………?
…………ああ、なるほど。この2人、デキてるのか。
「会話を遮ってすみません。名前はルイヴァン・ベルガルドです。魔王やってます、以後お見知り置きを」
魔 王 や っ て ま す ………?
「……………アッ、ご丁寧にどうもすみません。私はエミリア・シャロと申します」
魔 王 ……?
聞き間違い?
「アレンがご迷惑をおかけして申し訳ありません。責任を持って連れて帰ります」
「ぜんっぜん!です!あの!私の方こそお邪魔してすみませんでした!二人の仲を邪魔するつもりは全くないのでご心配なく」
「いやいやいや、ちょっと、待って。盛大な勘違いしてる」
「えっ!?勘違い!?何がですか!?」
私がワタワタしていると、アレン様が「ブフッ!面白すぎる〜!ちょっと二人とも、目立ってきてるから場所変えよ☆はい、ルイのせいだから転移魔法よろしく☆」
「」