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魔界の魔術師は、お姫様に憧れる。



「いいよね〜、お城で働けるなんてさ〜」


何せお姫様に憧れて転生を希望したのだ。お姫様の住処はお城一択よね?


わたしの外見は完全に母親譲りで、淡いピンクベージュのくせっ毛に肌は陶器のように白く、睫毛はもちろん長くて、曇りなき栗色の瞳。

そう!何を隠そう見た目はお姫様そのものなのだ!(誰も言ってくれないので自分で言います)


エルフである母は、結婚するまでかなりモテていたんだそう。

本当に綺麗なのよ。父は特にこれといった特徴がないから(失礼)一体どうやって母を射止めたのか未だに謎なんだよね…


母に似たおかげで、見た目だけは幼少期の頃から褒められてきた。それこそ『エミリアちゃんって、おひめさまみたいにかわいい』と言われてきた。満更でもなかったけど、見た目だけなのよ、見た目だけ。


問題だったのは、魔法技術が壊滅的なこと。そのくせそこらの魔術師よりも魔力量が多いのは何様だ!と、異性には全くモテない人生。


私とホーランは、互いの父親が学生時代からの友人なので、いわゆる幼馴染というやつ。


嫌がらせが多かった幼少期、ホーランだけが私の味方だった。


面倒見のいいホーランは、大人になった今でも私のことを気にかけてくれている。


「お城お城〜って言うけどさ、エミリアは今の仕事が好きでしょ?」



「だいっすき!一生この仕事をしていたいわ」


満面の笑みでそう返すと、


「そんな君に朗報です。今度城で開かれるパーティーで俺のパートナー役になってくれない?」


「私は『何でも屋』よ?その仕事、受けて立つ」


お安い御用にも程がある。


「よっしゃー!じゃ、これに詳細書いてるからよろしくぅ!」


そう言って意気揚々と私の部屋から出ていったホーラン。


階下で私の両親に別れの挨拶と、「エミリアをデートに誘ったらOKもらえました!」という元気な声が聞こえた。


私の両親からは歓声があがり、二人がバタバタと二階にある私の自室を訪ねてきた。


「エミちゃん!?やっぱりなんだかんだでホーラン君が本命だったのね!?何よもう〜それならそうと早く言ってよね?酸いも甘いも経験した二人が最後に選ぶのは、気付けばいつも一緒にいた幼馴染☆なんてお酒が進むわあ〜!」


「いーや、ホーラン君は半年前まで彼女がいたはずだ!今更エミちゃんの魅力に気付いたとて遅い!お父さんは許さん!」


「いやいや、仕事頼まれただけだよ!?パーティに出席するホーランのパートナー役、ただの付き添い」


ホーランのやつ、私の家族が騒ぐのを知ってわざと茶化していったわね…



我ながら何とも幸せな家族である。





次の日から母は仕事の合間に、私のドレス作りをすることになった。ドレスはホーランからの報酬でどうにかするつもりだったが、手芸好きの母が作ると言って譲らなかったのだ。


私の家は『何でも屋』である。その名の通り、依頼があれば大抵のことはやってのける。


魔界とはいえ種族によって魔力量に差があるし、万人が魔法を操るわけではない。だから依頼の数はそこそこある。


そして今日は、アストラの森深くに住む人魚たちの湖の清掃を頼まれている。両親は私のドレスデザインで盛り上がっていたので、一人で行くことにした。


とにかく私は魔力コントロールが下手なので、『遠ければ遠いほど目的地に正確に着く』という何ともひねくれた魔術師だ。

魔法学校に通ったおかげで技術も少しは向上したので、

できることとできないことの区別も何となく分かるようにはなった。最近は昔ほど問題も起こしていないし?(小声)


アストラの森は馬車で二週間はかかるので、かなり遠い。が、私が箒で飛んで行くなら五分、転移魔法なら三秒。大魔術師である父でさえ数日はかかるんだから、私ってある意味すごいよね?


転移魔法が少々失敗しても、

湖の真上についたら風魔法ですぐさま浮けばいいし、

水中で目を開ける羽目になったら…まあその時はその時よ。


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