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飲み過ぎ注意

「お疲れ、みんな」

 音楽番組の収録前、楽屋に向かっているとクロノのみんなが向かいから歩いてきた。

 声を掛けながらみんなの顔を見ると何故かげっそりとしている。

「ちょっと、何があったの?」

 目が合った恋に恐る恐る聞いてみる。

「飲みすぎただけ」

 簡潔に返してきた言葉に唯と奈々も頷く。

「昨日さ、お姉ちゃんたちと別れてから恋のマンションに行ったんだけど……」

「盛り上がっちゃった?」

「……うん」

 と、うなだれていてる唯。

「私のせい。お酒買いすぎちゃった」

 奈々が申し訳なさそうな顔を浮かべる。

「奈々のせいじゃないよ、飲みすぎたのは個々のせいだって」

 見ていると辛いのが伝わってくる。

「優歌に水買ってきてもらおっか?」

 まだ一階にいるはずだからと伝えると唯がお願いと言ってきた。

「ちょっと待ってて、いま電話するから」

 そう言ってスマホを取り出すと後ろから声を掛けられた。

「水、買ってくればいいの?」

 優歌だった。それに話も聞いてくれていたみたいで、ロビーにある自販機に向かって歩いていく。

 その背中を見送っていると、唯が「ちょっといい?」と話しかけてきた。

 振り向くと唯が歩いてきて耳元に顔を近づけてきた。

「飲みすぎたの、お姉ちゃんたちのせいだから」

「どういうこと?」

 気になって聞き返すと恋が一歩前に出てきた。

「瀬奈のことは唯から聞いた。これからはできるかぎりサポートするから」

「まっそういうことだから、よろしくねお姉ちゃん」

 ときめきそうな事を言ってくれたのは嬉しい。顔色が悪いことを除けばだけど。

「なんか私たちのせいで酔ったって言ってない?」

「……」

 こいつら……!

「でも気持ちは本当だから、苦しい時は言って」

 奈々が真っ直ぐに見つめてくる。その目は真剣そのもの。

「わかった。みんなありがとね」

 奈々に微笑むと優歌が戻ってきた。

「リハまでに戻りなさいよ?」

 と言って、買ってきてくれたペットボトルの水を数本、恋に渡した。

「でさ、気になってんだけど」

 優歌が少し怪訝な表情を浮かべる。どうしたんだろう?

 それは恋も一緒だったみたいで首を傾げていた。

「今日誰がついてんの?」

 誰がクロノのマネージャーをしているのか、優歌が気にしているのはそういうことだった。

「由真だけど」

 教えてくれたのは唯。

「由真?」

「うん、由真」

 聞き返しながら優歌の表情が険しくなってくる。

「今日さ、大事な会議あるって由真の代わりにお母さんが出てんだけど」

 怖い。優歌から危険なオーラを感じる。

「まだ駐車場? ちょっと行ってくるわ」

 そう言って優歌がエレベーターまで歩いていく。

 残された私とクロノの三人はその背中を見送る。

「由真、殺されないよね……?」

 弱々しい唯の声が耳に届く。

 エレベーターに消えていった優歌から恋に振り向く。

 さっき受け取っていたペットボトルの水は冷や汗をかいていた。

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