成就?
「結愛の気持ちは素直に嬉しいよ。でも応えることはできない、ごめんね」
瀬奈に促された凛は結愛の欲しい答えを返さなかった。ただ、私はその返事に違和感を感じていた。
結愛を見ると今にも泣きそうだった。
それでも納得させようと胸に手を当てている。
「凛も素直に伝えればいいのに」
つまらないといった感じの瀬奈の声がまた場の空気を裂いた。今日の瀬奈は絶好調だね、そう思っておこう。
そうしてまたしても矛先を向けられた凛はやれやれと首を横に振った。
「本当にお見通しだね、参ったよ」
すると結愛の方から小さな声が聞こえた。何を言ったかまではわからなかったけど。
「結愛の気持ちに応えると僕が保てそうにないんだ。だからいまは友達でいたい、ダメかな?」
どうやらこれが本心だったらしい。泣きそうだった結愛がさっきとは違う涙を浮かべていて、いまにも零れそう。良かったね結愛。
「うん、凛がいいなら」
これ以上ないほどに可愛らしい笑顔の結愛を見て微笑ましくなってきた。
「ということだから麻衣、今回のことは見逃してあげて」
一人呆然としている麻衣に凛がそう言うと、呆然としているまま「うん」と許していた。多分何も理解してないと思うけどいいっか。
でも、ひとつ疑問がある。
「凛さんってすみれのこと好きじゃなかったの?」
空気がピキッと音を立てて崩れそうな視線が瀬奈と結愛から飛んできた。ちょっと、誰も味方いないんだけど!!
助け舟を待っていると凛が出してくれた。
「すみれは一方的なだけで、僕は結愛しか見ていないよ」
思えばすみれと脱退するって言ってた時でも結愛の心配をしていたような……。
「そうだったんだ……ははは」
何とか凛のおかげで助かった。ありがとう凛。
「一件落着?」
私が瀬奈に聞いてみると、何も言わずウインクを返してきた。あぁ好き。
「じゃあ僕はこれで、打ち合わせに行かないといけないんだ」
「わかった。ねぇ凛、それが終わったら会いに行ってもいい?」
「それは断れないね。終わったら連絡するよ」
そう言って会議室から出ていった凛。
残された結愛以外の私たち三人は大きなため息を吐いた。




