佐奈の事件簿 04
「瀬奈、もう来ちゃったんだね」
結愛が広間に入ってきた瀬奈に振り向きながら声を掛けた。
さすが私の瀬奈、助けに来てくれるなんて、もう何もかもすべてあげちゃいそう。
なんて思っていると瀬奈と目が合った。
「そういうの好きなの?」
すごく引いた目をして私を見る瀬奈。み、見ないでっ!
浮かれている場合じゃなかった。私はいま麻衣と手錠で繋がれていて、輪と輪の間の鎖は格子状の暖炉に通されて身動きが取れないでいた。まさかサバイバルナイフで脅されるなんて思ってなかったし、仕方なく結愛の言うことを聞くしかなかっただけで……。
瀬奈は私から結愛に視線を移した。
「結愛さん、もし佐奈に傷でもあったら殺すよ?」
ここにもサイコパスが……、って瀬奈だった。
「瀬奈って大事な人のためならそういう目を向けるんだ」
ため息を吐いて結愛は瀬奈に何か小さいものを投げた。それを受け取った瀬奈が私に近づいてくる。
何だろうと思っていると、瀬奈が私の手錠に鍵を差し込む。さっき受け取ったのは鍵だったらしい。
カチャっと解錠された手錠から開放された嬉しさに瀬奈に抱きつく。瀬奈ぁ〜
「ちょっと、私も助けてよ」
麻衣が瀬奈を睨む。
私が開放されたことによって格子からは抜け出せたけど、瀬奈の手首にはまだ手錠がぶら下がっていた。
「これ?」
瀬奈がつまむように鍵をチラつかせる。
「いいよ、あげる」
そう言って瀬奈は麻衣に手渡した。
「……鍵ぐらい挿してくれたらいいのに」
瀬奈に聞こえないぐらいの声量で嘆く麻衣。多分瀬奈には聞こえてるよ?
「この状況はどうして?」
結愛に振り返った瀬奈が問い詰める。
「やっぱり好きってそういうことなんだ」
その答えに瀬奈の眉間に皺が寄っていくのがわかった。
「わたしって凛のこと好きなんだ」
まるで独り言のように話す結愛に瀬奈は何かを察していたようだった。




