恋とは違うパートナーの在り方
「真希が動き出すなんてね」
私が知る限りのことを緒方さんに話した。
A-Zから脱退希望のすみれと茅場凛の二人を連れて新たな事務所を立ち上げたいという真希さんの思惑を知った由真さんは、意外と冷静だった。もしかしたら真希さんの思惑に薄々気づいていたのかもしれない。
向かいに座る由真さんはハイボールだけを飲みながら天井を仰いでいる。
「聞いても驚かないんですね」
由真さんの表情が気になり、私は無意識のうちに声に出していた。無意識って怖いけど。
「そうだね、そんな気はしていたよ。ほら、真希は一人狼なところがあるからね」
真希さんと付き合いが長いから、私もその点は理解できる。ただ、その一点で気づいているとは思わなかった。
「まだ戦いたいんじゃないかな、この業界で」
そう漏らす由真さんの表情は何故か楽しそう。
「真希さんがそう動くのに期待してたみたい」
「そう見えるかい?」
「はい」
楽しそうに笑う由真さん。クロノや私たちを擁した今のアイドル業界では敵もいなくなった。
もしかしたら由真さんにとってその状況がつまらないのかもしれない。そして、それを感じていた真希さんが由真さんの新たなライバルとして件の独立を図ろうとしているのかもしれない。
そんな考えに行き着いた瞬間、由真さんが私を見つめてきた。
「ど、どうしたんですか?」
「もう何かに気づいたみたいだね」
鋭い。一体、私の何を見ているんだろう。
「なんとなくですけど、真希さんも由真さんもちゃんと話し合えば済む話のような気はしてます」
簡潔にまとめた私の考えを伝えると、由真さんは声を出して笑い出した。
「そうだね、そうすれば佐奈さんたちを巻き込むことはなかったかもしれないね。ただ、スタープロを吸収してから時間が浅すぎる。今回のことは容認できない。私から真希に話すよ」
「あの、話すって?」
私はすみれと茅場凛のことがどうなるんだろうと聞いてみた。
「私の事務所でその二人の面倒を見るよ。頃合いを見て真希には独立しもらって、私たちの望んだ状況をもう一度」
私の考えは当たっていたらしい。瀬奈と私の関係とは違うけど、この二人の間にも誰にも入ることのできない壁がある。
ハイボールに口を付ける由真さんを見て、私は改めてそう確信していた。




