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皇帝、沈む


 イルゼに用意してもらった部屋にボク、アリス、レオンの三人で入る。


「部屋は無駄にあるからどこでも適当にどうぞー」


 なんかこっちを心配そうに見ながらもこの城の主人たるイルゼは欠伸をしながら自分の部屋のある方に向かい歩いて行った。


 部屋の中は皇室が使ってると言われてもおかしくないと思えるような高級感漂う家具が設置されていた。


「やっぱりおかしいよ……そして疲れた」

「俺もだよ」


 もう驚くのに色々と疲れたよ。

 それはレオンも同様だったみたいだけど護衛の為か気は抜いてはいないようだ。


 他の騎士や神官、魔法使い達は精霊達から与えられたポーションが効果を見せたのか動けるほどには回復しているようだが、肉体的ではなく精神的な負担が大きかったようなので休ませている。

 護衛をしようとしていたが無理やり休ませた。

 彼らには悪いけどこの城の中で護衛なんて意味なさそうだし? その気になればボクら一瞬で首と体が分離しそうだしさ。

 いや、更に言うならレオンが護衛していても同じな気がしなくはない。


「はぁ」


 深いため息をつきながら部屋に備え付けられている高級そうなベッドに倒れ込む。いや、沈んでいると言っていいかもしれない。

 すべすべした触り心地のいい布団が眠気を誘ってくる。

 少ししてからベッドが再び揺れる。

 横を見るとアリスもボク同様に疲れたような顔をしてベッドに倒れ込んでいた。


「なんなんですか、この森……」

「災害の森だけど?」

「そういう意味じゃありません」


 うん、知ってた。


「いえ、森だけではありません。この城! さらには世界樹だと思ってたのが精霊樹⁉︎ 世界に三本しかないものなのよ⁉︎」


 アリスが血相を変えて叫ぶ。

 うん、それもよくわかってるよ。

 世界には精霊樹は三本ある。それは正解だけど半分しかあってない。

 厳密にいうならば三本ある精霊樹のうち二本はすでに力を失っている。だから実際に力を持っているのは一本だけということになる。

 その一本もどこにあるかわからないらしいし。

 つまり、ここにあるのは四本目の精霊樹にして居場所がわかる唯一の物ということになるよね。


「加えてこの精霊の数です! 前にリリィに聞きましたが精霊はこの世界から姿を消してかなりの年月が経つはずなんですよ! 極稀にしか姿を見せないはずの精霊が……」


『まてー』

『おにごっこだからまたなーい』

『とらっぷではめるぞー』


 そんな話をしている眼の前を精霊達が楽しそうに遊びながら通り過ぎていった。


 うん、そうだよね。

 この城と外にいる珍しいはずの精霊とかすごい数だし、楽しそうに遊んでるよねぇ。


「それに大精霊様はここをダンジョンとか言ってたねぇ」

「そうだな」


 今まで話を聞いているだけであったレオンが興味を持つ話題だったからか頷いた。


「すでにボク達が認める認めない以前の問題でこの災害の森はイルゼの物になってるってことだよね?」

「正直な話、渡してしまっていいだろ? 災害の森はどこの国も手を出せないような危険地帯であったわけだからな」


 確かに元から手元にないものがなくなったとしても誰も困ることはないんだよね。


「災害の森をイルゼに渡すのは反対しないんだけどね。問題があるんだよ」

「問題だと?」


 そう、問題は別にある。

 ボクとしても災害の森は必要なものではないからね。


「問題なのは」

「イルゼ様が精霊達を御せるかどうかですか?」


 さすがは一応精霊がそばにいる聖女様。ボクが気に掛かっている問題点が分かったみたいだ。

 あといつの間にか様付けになってる。


「そう、イルゼが精霊を制御できないのならあの精霊の力がどこに向くかわからないしね。備えは必要になるよ」

「陛下が気にしている事はおそらく問題ないでしょう」?


 アリスがあっさりとボクの言葉を否定する。

 ふーむ、ちゃんとした理由があるみたいだね。


「大精霊様やエンシェントドラゴンに目が行きがちですがイルゼ様も膨大な魔力をお持ちです。帝国側のエルフの方々が言っていましたがエンシェントエルフと呼ばれる種なのでしょう? そうでなくてもあの魔力量です。見たところ普通ならできない一方的に契約を切るということも可能そうに見えます」


 精霊との契約についてはボクには分からないけど精霊と契約しているアリスが言うならそうなんだろう。

 それにしてもさ、


「ここで唯一弱点ぽいイルゼでそれなんでしょ? これって帝国が属国になるしか生きる道なくない?」

「……神国もそうなんですけど」

「唯一助かるのはイルゼが全く我らに関心を持ってないことだろうな」


 三人しかいない部屋はまるで誰かが死んだかのように暗く沈んだ。

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