エルフ、話し合いを始める
『ソラウさま、イルゼの言う事は……』
『できるんじゃよあいつ。普通、契約なんて簡単に切れるようなもんじゃないんじゃがなぁ』
『でもさっき明らかに繋がり切られかけたんですけど……』
『じゃからあいつを本気で怒らすのはまずいんじゃ。マジで繋がりを切られかねん。我まだ遊びたいし』
なんか二人がコソコソと喋ってるけど無視。
反論してこなかったフィズの方を見ると精霊さん達に頼んで水を出してもらってそれで煤を落としてた。
賢い。でも床がびしょびしょなのはなんとかして欲しい。
「それでイルゼさん」
「はいはい、なんですか皇帝さん」
そうだ。話し合いだよね。
さっさと終わらせたい私は話しかけてきた皇帝さんへと視線を向ける。
「あー、改めて自己紹介しとくね。ボクの名前はヴィンラント・エナハルト。エナハルト帝国の皇帝をしてる。あ、ヴィンラントって長いからヴィでいいよ」
「その護衛のレオンだ」
「え、えと……神国ローランドの聖女アリスです」
それぞれが律儀に名前を言いながら頭を下げてくる。
正直、あまり長いお付き合いはしたくないから名前も覚えたくないんだけどなぁ。
あと聖女ってなんだろう? ま、どうでもいいけど。
「それで三人、というか他の人もそうですけど何の用ですか?」
「だから同盟だよ」
「和平のために」
だから何のためになの! 私何もする気ないのに!
「私は特に何もする予定はないけど?」
「いや、そりゃね。実際にイルゼさんを見たらそんな感じはするんだよ? でもイルゼさんを見てない人からしたら凄い脅威なんだよ」
ヴィがケラケラと笑いながら椅子に深く座りながらそんなことを言ってきます。
「脅威?」
「そ、脅威さ。考えても見なよ。化け物じみた魔獣がうろつく森の中でそれを簡単に蹴散らす精霊、その中でも高位に位置する大精霊、それに竜、さらには聖獣まで従えて世界樹まで手にしている存在のいる城。そんな物がいきなり近くにいたら普通に脅威を感じるものさ」
そういうものなんですかね?
うちの村の近くにそんなのができたら男性陣は嬉々として挑んでいく気がするけど……
人間とエルフの感性は違うのかもしれない。
となると問題は魔獣が一杯いることなのかぁ。だったら散らせたらいいわけなのかな?
『のみものもってきたー』
精霊さん達が空気を読まずに頭の上にコップを乗せて楽しげにやってた。どうやってるのかわからないけどかなりの速さで動いて、さらには乱雑に置いている、いや中には転がってるコップもあるにも関わらず、たっぷりと入れてある中身が溢れない。
不思議だ。精霊さんパワーだ。
「で、脅威の話でしたね」
「え、うん」
ヴィも横になっても中身が溢れないコップに目線が向かって気になるみたい。
私も転がしていたコップを手に取り口をつける。
蓋みたいなのはなく普通に飲めた。
そして一息ついた私は今まで考えていた事を口する事にした。
「だったら災害の森の結界みたいなの解除しましょう」
「「「は?」」」
なんでそんな三人揃って間抜けな声をだすの?