大精霊、抗議する
「回復早いね」
『うむ、ポーションのおかげもあるがな!』
「きゅいきゅい!」
ボロボロの一人と一匹が扉を潰して入ってきたことにより再び会話が頓挫したわけなんだけど一人と一匹は全く気にした様子はなく私へと近づいてくる。
でもボロボロのドレスなわけだから女性体であるソラウは色々見えちゃいけないのが見えてたりする。胸とかお尻とかね。
本人は全く気にしてないんだけどね。ソラウの胸は無駄に大きい。それが歩くたびに揺れる。ぷるんぷるんと。
この場で唯一、男性であるレオンさんなんかは顔や耳を赤くして顔を背けたりしている。
「ソラウ、ちゃんとした服を着なよ。精霊樹の側なんだから魔力はあるはずでしょ? ポーションで傷も治ってるみたいだし」
以前のように自前の魔力が枯渇しているという状態でもないみたいだけどカラミティの自爆はそれなりにダメージを負ったみたい。
だけど精霊樹の近辺である事とエルフ印のポーションのお陰で動けるくらいには回復してるわけだし、服を元に戻すくらいすぐにできるはず。
『そうじゃよ! イルゼ! なんじゃあのポーション! すぐに傷口は治ったがめちゃくちゃ痛かったんじゃが! じゃがぁ!』
「きゅうきゅう!」
一人と一匹が抗議するかのように私に詰め寄ってくる。
んん? 作ったのは私だけどそんな痛くなるような成分は入れた記憶はないんだけどなぁ。
『いや、めちゃくちゃ痛かったぞ⁉︎ あまりの痛さに漏らして倒れてしまいそうなくらいじゃった』
「そんなに?」
エルフ印のポーションは苦いのが苦手な子供のために甘く作られているはずなんだけど……
というか精霊って漏らすの?
『それはあたしが弄ったからですよソラウ様』
『なんじゃと』
私の横から声が聞こえてきたのでそちらを向くと何もないはずの空間から滲み出るようにしてイーリンスが姿を見せた。
『あたしがイルゼの作ったポーションの一部に細工してゲキツウ草を混ぜ込んでおいたの小精霊達が持っていったのでしょう。あ、騎士の皆さんにはちゃんとしたポーションを渡していますので激痛で死ぬなんて事はないです』
イーリンスがニッコリと、それはもういい笑顔で嗤ってた。
そんなイーリンスの笑顔も怖いけど、私としてはイーリンスが混ぜ込んだという薬草の名前に顔が引きつった。
ゲキツウ草。名前の通り薬にすれば死ぬほどの激痛が体を襲う草。
そんなリスクというか拷問にしか使い道がないような薬草なんだけど、この薬草。混ぜた物の効果を引き上げるという特性があるんだ。
回復系ポーションに混ぜれば死ぬ程の傷を負ってても全快する、かもしれない。
なにせ回復と同時に死ぬ程の激痛が襲ってくるわけだし? 瀕死の人がその激痛に耐えきれなくて死ぬなんてことはよくある話らしい。
つまりは劇薬なわけ。
もちろん、エルフ印のポーションにはそんな危ない素材は使ってない。
天然素材で作られていて安全です。
『お主、我を虐めて楽しんでおるんじゃな!』
ソラウがイーリンスを指差し、胸をプルプル震わせながら怒ってた。
まあ、ゲキツウ草を混ぜられたポーションをぶっかけられたら怒っていいと思う。
怪我の度合いで激痛の度合いが変わるから死に至るような怪我ならトドメをさせるくらいに痛いらしいしね。
『いつも勝手なことばかりする罰です! 大精霊ならもう少しそれらしい品格を身につけてください!』
『ふふーん! 我、大精霊! 高位精霊なんかに文句を言われる筋合いはないわ!』
『なんですってぇ!』
勝手にヒートアップしていく二人。
正直暴れられると面倒なことになる。部屋とか消し飛びそうだし。
「二人とも静かにしてよ。じゃないと」
契約切るよ。とにっこりと笑いかけた。
一瞬で二人はいがみ合うのをやめ、怯えたように首を上下に振って了承してくれました。