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エルフ、暖をとる

 

「家ね! いえ、屋根がある建物がいるわ!」

「きゅぅぅ」


 突然降り出した大雨のせいでびしょ濡れになった服をフィズが掘った穴の中で乾かし、冷えた体を抱きしめるようにしながら私は考えを口にしていた。

 フィズはいつの間にか精霊樹の根元に巨大な空間を掘っていた。

樹が折れなくてよかった……

 入り口の部分が深く掘られているお陰でそこに雨の水が溜まり、穴が水没していない空間みたいね。

 そんなことを考えて穴を掘るなんてフィズ、なんてお利口さんなの。

 どうやらここを巣にしようと考えたのかフィズが寝そべる周りには何処から拾ってきたかわからないようなガラクタ、いや、フィズにとってはお宝が積まれていた。


 竜は財宝を好む。

 それは金銀財宝だったり武器だったり様々らしい。でもまだ子竜であるフィズはとりあえず物を集める所からスタートのようだ。

 本人はいたって気に入ってるようだしね。

 そんな空間でフィズが出した火に木をくべて焚き火にしつつ私は暖を取っていた。


「か、替えの服がないのが辛いわ」

「キュキュ」


 フィズが贅沢言わないと言わんばかりに鳴くと器用に手? を動かして薪を放り込み火が絶えないようにしていた。

 それにしてもこんな空間で焚き火なんてしたら確か息苦しくなって死ぬんじゃなかったかな? でも上に上る煙は精霊樹の根が吸い込んでるみたいだし大丈夫かな?

 フィズも特になにも問題ないかのように寝転んでるし…… 竜が大丈夫ならエルフも大丈夫だよね?


「食べ物、いやその前に家? それよりもまずは家の前にまずは服!」


 幸いなことに火は竜であるフィズが出せるので暖は取れる。

 となれば普通は必要な物は食べ物なんだけど、エルフは食べなくても生きていける。いけるんだけど嗜好品は大切だ。でもこのまま裸族で生活していくわけにはいかないから食べ物は後回しにしてもいいだろう。


「手っ取り早いのは葉っぱかな」


 今私が乾かしている服は世界樹の葉を縫い作られた物だしね。

 世界樹の葉は植物な訳だけど聞いた話では何枚も重ねてエルフの職人が作る物は人間が作る下手な鎧よりも堅いってお父様が言ってた。

 ただ、問題は作り方がわからない。

 世界樹の葉を使うというのは覚えているんだけどさ。その葉をどうやれば服になるかが私は知らないんだよね。


「そうなると毛皮か」

「キュキュ⁉︎」


 暖を取りながら体を丸めて眠っていたフィズが私の視線を受けてか、体を震わせて顔を上げる。

 さすがに召喚獣の皮を剥いで服を作ろうとは思わないかな。でもフィズは竜だし、いい服が作れそうだなぁ。そんな技術はないんだけどさ。


「んー、そうなると見たことはないけど人間ヒュームとか魔族とかと取引するしかないのかなぁ」


 魔力を持つ者は少ないけど変わった技術を持つ人間ヒューム、膨大な魔力を持ち私たちエルフと同じでほぼ不老の魔族。あとはエルフと獣の力を持つ獣人なんて種族がいて他にも色々種族はいるわけなんだけど大体はその四種の種族が国を回しているらしい。

 もちろん、行ったことなどない。

 たまに里に来る人間の商人さんに聞いただけだ。エルフの里は森の奥にあるから来るのは大変だけど世界樹の葉や雫、さらには枝とかも高く売れるから危険を冒してでもやって来るらしい。


「そうなるとお金ってやつが必要ね」


 基本、自給自足の生活をしているエルフの里だけどたまにくる商人さんとは確か金貨とか銀貨とかで色々と買い物をしてたはずだ。

 お父様が持ってるのを見たことがあるしね。


「なにか売るものを考えなくちゃ」


 エルフ印のポーションでもいいかもしれない。

 焚き火で暖まりながらも私は自分の快適なお昼寝ライフの為に思案するのであった。


 へくちっ!


 裸は寒い!


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