エルフ、顔をしかめる
クリスマスでも時期ネタはない!
とりあえずは爆破から。
こんな言葉から始まったのはまさにこの世の終わりと言っても誰も文句は言わないような事が起こる予感がしてならない。
そんなソラウのエリアに迷い込んだのはどう見ても悪いことをしていそうな人相、いや、盗賊ぽい方々だ。
人を見た目で判断してはいけないとは思うんだけど歩きながら抜き身の剣に笑いながら舌を這わせる姿を見て正義の味方と思う人は居ないと思う。少なくとも私はそんな事は思えない。というか無理。
『なんだか悪そうな奴らね』
「やっぱりそう見えるよね」
どうも私の側で魔鏡を見ていたイーリンスも同じ感想を抱いていたようで私は笑いながら同意する。
『まあ、見た感じ悪党ぽいしのぅ。こういう奴らなら手加減などせんで済むから楽じゃ』
「きゅきゅ」
魔鏡を操作しながらソラウもカラカラと笑う。
いや、ソラウはそんな手加減とかしてる所って見た事ない気がするんだけどね。
「やりすぎないようにしてよ?」
そう私の住んでる場所まで壊されたら非常に困る。精霊樹があって精霊さん達がいっぱいいるわけだけど、ソラウは一応は大精霊。
他の精霊とは桁が違う。見た目や言動からでは測れない強さがあるわけなんだから。
『わかっておる。そもそも今回は我は魔法を使う気など微塵もないわ。我の作ったエリアで壊滅させてくれるわ』
なんでそんなに自信満々なのかわからないけど魔獣の争いなら問題ないはず。
なにせここは災害の森と呼ばれる場所。
魔獣同士がぶつかり合うなんて普通の場所。
そして弱い人間が生きていくには過酷な場所なわけで、
『では見るがいい!我がエリアのボス! ヘカトンケイルを!』
カモーン!というソラウの掛け声と共に盗賊風の方々の前に巨大な魔法陣が現れていた。
いきなりボスって最強をぶつけるの⁉︎
そんな私の心の疑問をぶつける前に魔鏡の一つに映っていた盗賊風の一部が吹き飛んだ。
いや、エルフである私の眼はしっかりと盗賊風の輩が爆散して肉片が飛び散ったのがしっかりと見えたので少しばかり気分が悪くなった。
『グギャァァァォァ⁉︎』
『なんだ! 何が起こった⁉︎』
『岩だ! 岩が飛んできてる!』
この魔鏡、遠くの光景を見るだけじゃなくて音も聞こえるのか。すごいなぁ。
魔鏡から確認できる慌てて距離を取る盗賊風の連中の数はざっと数えても二十以上。
正直な話、災害の森に住む普通の魔獣すら倒せるような力は感じない。
私でも倒せそうな人達だ。
そんな人達にソラウが、あのソラウが自慢するような最強の魔獣と遭遇したらどうなるか?
その答えが今、魔鏡に映し出されていた。
魔法陣から現れたのはソラウご自慢のヘカトンケイル。
魔鏡に映ったそれは巨大な肉体に、頭が牛、さらにはゴッツイ腕が左右に六本ずつで計十二本も付いていて脚はクモみたいな多脚という異形の魔獣だった。
動きが遅そうな見た目に反して十二本の腕を巧みに使い、そこいらに転がる木を、岩を、魔獣を次々に掴むと盗賊風の方々に向かい凄まじい勢いで投げつけていく。
飛んでいった物体は盗賊風の連中に当たれば圧死を、当たらなければ地面を吹き飛ばして土くれをまるで大砲の弾のように飛ばして負傷者を増産している。
あれはどうやったら勝てるの?
少なくとも私は無理だよ。飛んできたのに潰される自信がある。
あ、また潰された。
『そこじゃ! 当てるんじゃヘカトンケイル!』
「きゅーきゅー!」
『すごーい』
『ばしばしとんでくー』
魔鏡から聞こえる悲鳴や見える場面は結構なグロい状況になりつつあるわけなんだけどソラウやフィズ、さらには精霊さん達は大興奮状態だ。
もう血が吹き出す光景を映す魔鏡に釘付けだよ。
『「悪趣味すぎる……」』
唯一、その場に混じっていなかったらしいイーリンスと私は顔を歪めながらそんな光景を見ていた。
そうして物の数分もしないうちに盗賊らしき方々は森の養分となりました。