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エルフ、起こされる

 

 ああ、働かないっていいなぁ。

 あと視線がないというのもいい。

 村にいる時は家にいるとお母様とお父様、さらには弟からの無言だけど働けという圧力が込められた視線が絶えずあったからきちんとダラダラ出来なかったんだよね。

 それが村を追い出されてからはそんな視線感じる事もない! ここはパラダイスだね!

 そんなわけで私は惰眠を貪る……


「いい加減に起きんかい!」

「キュー」

「ぐぇ」


 ……貪るわけにもいかないらしい。

 熟睡していた私はお腹と背中への衝撃に慌てて体を起こした。

 お腹には頭から体当たりしてきたらしいフィズが、背中にはどうやらソラウが蹴りを食らわしてきたみたいだ。


「私の安眠を邪魔するとはいい度胸だ」


 睡眠は大切だ。

 睡眠はきっちりと取らないと頭がちゃんと動かない。

 村にはそんなに眠らなくても大丈夫とか言ってたエルフもいたけど私はきっちり寝ないとだめなのだ。


 ゆらりと立ち上がった私の怒りを感じ取ったのかフィズの方は小さく泣きながら後退り、最後にはソラウの後ろに逃げ隠れた。

 逃げるならやらなきゃいいのに。


「いや、流石に5日は寝すぎじゃろ? いくらエルフが時間の感覚がゆっくりといっても寝すぎじゃよ」


 5日も寝てたのか……

 どうりでお腹が減るわけだよ。


「お腹へったなぁ」


 食べなくてもいいと言っても一応はお腹がへる。

 なにせ食料であるリンゴはもう食べちゃったしなぁ。

 そうなると当然食料を探さなくちゃいけないわけなんだよね。

 幸いと言っていいか疑問だけど転移魔法で飛ばされたのが何処かはわからないけど森であったことが良かった。

 なにしろ私は一応はエルフ。

 森の中ならばなんとかなる。孤島とかじゃなくてよかったよ。


「腹が減ってる所悪いがさらに問題があるぞ」

「問題?」

「うむ、上を見てみよ」


 ソラウが上を指差していたので私は視線を上へと向ける。

 目に入ってきたのは明らかに私が寝る前よりも更に大きくなっている精霊樹だ。寝る前はそこらの木より少し高いというくらいの大きさだったのに今は完全に他の木を凌駕する程の高さになってるし。なんか雲より高くない?


「でっかくなったねぇ」

「うむ、気にしてほしいポイントは違うがまあ、確かにデカくなっておる異常な程の速さでな」

「え、気にする点は違うところなの?」


 精霊樹のバカみたいな大きさが一番に気になると思うんだけど……


「正直な話、お主が寝ている間にこの樹は異常な速さで成長しておったからな。驚いたのは目の前でグングン伸びていく様を見せつけられた初日だけじゃ」

「じゃあ、何を気にするのさ」


 周りには精霊樹以外には異常は見られない。

 別にこちらを襲おうとしようとしている獣の気配も感じられないし。

 強いて言うなら周りに漂う魔力が濃く、且つ澄んだ物になっている気がするくらいかな。


「まあ、精霊樹の大きさに目が行きがちじゃが当たり前のことに気づいておらん。その点、小粒は賢いぞ?」

「小粒ってフィズ?」


 そう言えばと私はソラウの後ろに隠れていたはずのフィズの姿が無いことに気づいた。周りへと視線を巡らせると精霊樹の根元の部分にある小さな穴のような場所に向かいヨチヨチと歩いていくフィズの姿が見えた。


「何してるのあれ?」

「避難じゃろ? 我も霊体化するぞ」


 そう告げるとソラウの身体が少しずつ透けていき、やがて見えなくなっていった。


「ん?」


 そしてフィズが根元の穴へと入り、ソラウの姿が見えなくなってしばらくしてから、私の顔へと何かが当たった。

 それが何かを確かめるべく私は再度空へと視線を巡らせる。

 空には変わらず大きく枝を広げ、雲を突き破っている精霊樹の姿があるだけなんだけど……

 そして私は気づいた。


「これってもしかして……」


 精霊樹が突き抜けているから気にかけなかった。本来なら雲が広がっていればどうなるかを。

 初めは小さな音が、そしてそれは徐々に途切れる事なく降り注ぐ雨音へと変わる。


「のぁぁぁぁぁぁ!」


 空に広がった雨雲から滝のような雨が一斉に降り注ぎ、一瞬にして私をびしょ濡れへと変えた。

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