大精霊候補、笑う
『ふふ、ふふふふ』
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いぃぃぃ!
なにこの背後から感じる嫌な感じ。
これは絶対に振り返ったらいけないやつだ。
なぜなら背後から感じる気配はソラウを初めて召喚した時に感じたような気配なんだよ。
ソラウはその状態を『大精霊が舐められないように威厳を放つモードじゃ!』とかふざけた感じで言ってたけど今感じてるのはソラウの時よりはるかに危ない感じだ!
『精霊達が束になったらわたしに勝てると?』
イーリンスがどんな表情をしているかわからないけど、私の前にいるいつも明るい精霊さん達の顔色が悪い所を見るとかなり怖い顔をしているのかもしれない。
『た、たぶん?』
『むりかなぁ?』
『さいごまできぼうはすてたらいけないとおもう』
『あいるびーばっく』
だめだ、すでに勝ち目がなさそうな解答ですよそれ。
心なしかあとは発動するだけの魔法の輝きも小さくなってる気がするし。
『まあ、いいわ。あなた達にはまた教育が必要みたいね』
『さんかい!』
背後からの圧力が増した瞬間、精霊さん達は魔法を放ち、蜘蛛の巣を散らすかのように素早く散らばった。
目がいいエルフの瞳だから捉えれたけどものすごい速さだ! いつも遊んでいるときの速さとは比べ物にならない。
『忘れたみたいね』
そんな一瞬にして姿を消した精霊さん達を見たであろうイーリンスへと私は無意識に振り返った。振り返ってしまった。
迫る幾つもの魔法を一気に成長させた植物を盾のようにして防いだ。そうして煙をかき分けるようにして現れたのは口を三日月状にしたイーリンスとその周りでうねるようにして成長している植物の姿があった。
『わたしが植物を司る精霊だって!』
声と同時にイーリンスの周りにあった木がまるで大砲の弾のような勢いで飛び出した。さらには植物も一気に成長をし始め、その逃げる精霊さん達以上速さで成長すると逃げる精霊さんを追っていた。
『『『わぁぁぁぁぁぁ!』』』
森の中に精霊さん達の悲鳴が上がる。
瞳で追うのも難しいほどの速度で必死に立体的な軌道をとる精霊さん達だけど相手が悪すぎる。
飛んでいく木は容易く精霊さんに追いつき吹き飛ばし、鞭のようにしなる植物はあっさりと精霊さん達に巻きついて捕獲していく。
もともとイーリンスは植物を司る精霊なわけなんだから森という彼女のフィールドで戦うというのが間違ってるわけよね。
あれ、森ってエルフの得意な場所だったはずなんだけどなぁ。
そんなことをイーリンスが嬉々として精霊さん達を捕まえていく中、私は考えていた。