精霊、抗議する
「なら意外と今は命の危機なのでは?」
『なんでよ』
不思議そうな表情をしているイーリンスに私はログハウスを指さした。
あれを見れば現状がわかるよね。
「あれとか」
『あれ?』
私の言葉を繰り返すようにしたイーリンスがログハウスの方へと振り返ると精霊さん達がブツブツ何かを呟いているのが目に入ったことだろう。
『これをやけばイーリンスがこまる』
『いままでのうらみがはらせる』
なんて物騒な会話なんだ。
精霊さん達はやる気満々だ。
というかイーリンスはどれだけ恨まれてるの?
ソラウにも冷たい精霊さん達だったけどあれはまだ実害のない冷たさだったんだね。応援されなかっただけだったし。
イーリンスが肩を震わせて多分怒っている事など背後を全く振り返らない精霊さん達は気づかない。
多分、この辺りがよくイーリンスに怒られる理由なんだろうなぁ。
『いるぜこまらない?』
そんな精霊さん達がイーリンスへ秘密の報復(丸聞こえ)を考えている中、精霊さんの一人が不意にそんな事を言った。
そうだよ! ログハウス燃やされたり壊されたりしたらまた私、宿無しになっちゃうじゃない!
よく言ってくれたよ精霊さん!
『『『うーん』』』
そして私が困ると聞いて騒いでいた精霊さん達も困ったように唸ってた。
よかった。もしかしたら「ま、いっか」とか言ってさっくりやるのかと思ってたよ。
『あとであたらしいのつくってわたしたら?』
『『『それだぁ!』』』
眠そうにしていた一人の精霊さんの発言に他の精霊さんがあっさりと同意してしまった。
「いいわけ……」
『いいわけないでしょ!』
そんな精霊さんの戯言に文句を言おうと口を開いた私の言葉を遮ってイーリンスが魔力が込められた怒声が響き、ウキウキしていたであろう精霊さん達はその魔力で悲鳴を上げながら吹っ飛んだ。
怒声を上げたイーリンスの背後にはまるで彼女の怒りを表現するかのように太い樹々が次々と地面から顔を出してきて、まるで槍のように木先を精霊さん達へと向けている。
『ぼ、ぼうりょくにはくっしない』
『ぼうりょくはんたーい』
『そうだそうだ』
『きょうこそぼくらがかつんだぁ』
『たたかいはむなしいよ』
抗議するかのように精霊さん達は声を上げる。
中には魔法をすでに放つ準備までしてる精霊さんもいるわけなんだけど…… 全く説得力がない。
誰も彼もが好戦的になってて暴力反対とか嘘でしょ!
ってか一番危ないのは精霊さん達とイーリンスの間にいる私じゃない⁉︎
『ふふ、ふふふふ』
そんな私の心配など知らないイーリンスの不気味な笑い声?みたいなものが背後から聞こえてきたので私の体は無意識に一度大きく震えた。