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エルフ、気付かず


 サロメディスさんを黒騎士が吹き飛ばして一ヶ月。

 私はログハウスの私室でだらだらと過ごす日々を送っていた。


「だから痛いって」


 しかし、私はまたベッドから放り投げられて床を転がった状態で呻いた。

 やはりこのベッドは私を安眠には導いてくれないみたい。

 むしろ健全な生活を送るように促している気さえするわ。毎日のように朝早くにベッドから私を放り出すんだから。

 窓から見るお日様は上に来た所だしまだお昼前なのに起こすの早すぎない?


 とりあえずもぞもぞと動きながら壁に立て掛けてある剣、黒騎士こと魔王の剣を腰にさす。

 サロメディスさん撃退後、私の言いつけを守った黒騎士はログハウスまで辿り着くと剣の姿へと戻った。武具精霊は本来の姿が武器とか防具といったものだからね。

 でも私が指示を出せば瞬く間に黒騎士は姿を現してくれる。頼りになる護衛だね。

 魔王さん、会ったことはないけど有効に使わせてもらいます。


 初めは刃が剥き出しだったサロメディスさんから奪った魔王の剣なんだけど精霊さん達がキャーキャー言いながら楽しそうに鞘を作ってた。

 見た感じ普通の鞘じゃない。

 やたらとキラキラしてるし、なんか俗物ぽい。精霊さん達に言うとショックを受けそうだから言わなかったけどね。

 頭の中に森の地図を浮かべてみるけど特にここに向かってくるものは存在しない。うん、平和ね。


 ログハウスの外に出て軽く伸びをする。

 森からたまに爆音が聞こえたりするけど平和だ。さらにたまに魔獣の悲鳴みたいなのも聞こえてくる気がするけど平和だ。


「問題はやっぱり服かしら?」


 なにかの本で読んだけど人が生きていくには衣食住が必要って書いてあったわ。

 衣服は騎士の皆さんからもらったサイズの合わない服があるけど、使ってみてわかったのだけど肌触りが悪い。なんか肌がチクチクするし。

 結局、破れてはいるけど慣れ親しんだエルフの服を着ているわけだし、服は早めに対処しなければいけない問題だわ。


 次に食なわけだけどこれは私、というかエルフにはあまり関係ないかな。

 なにせ食べなくても生きては行けるわけだし。陽の光が流石に何ヶ月も当たらないと辛いけどそんな事は滅多にないし。


 最後に住。

 これも問題はない。なにせログハウスがあるし。

 私の安眠を妨害するベッドがあるわけだけど雨風は凌げる。

 まあ、精霊さん達は自由気ままに飛んでるから家なんていらないし、フィズやフェルコーネもあれば家に入るというだけで別に必要ないわけなんだけど。


「やっぱり服と安眠するためのベッドを手に入れるために行かなきゃいけないのかなぁ」

『いるぜどっかいくのぉ?』


 私のぼやきを耳に止めたらしい精霊さんが近づいてきた。

 それに気づいたらしい他の精霊さん達も何か楽しいことなのかと瞳を輝かせながら私の方に集まってきた。


「ええ、私の安眠を常に妨害するベッドではなく、私の安眠をサポートしてくれるベッドを買いに行こうかと思って」


 私がそう告げると集まっていた精霊さん達はなんとも言えないような目で私を見ていた。

 なぜそんな眼で私を見るんでしょう?


『それってさー』

『いるぜきづいてないのー?』

『せいれいのしわざだよー?』

「な、あなた達ですか! 私の安眠を妨害するのは!」

『『『ちがーう』』』


 カミングアウトされた事に私は怒りをあらわにして怒鳴りましたが精霊さん達は慌てたように否定してきます。

 そのあまりの慌てっぷりに嘘はついていない気がします。


「精霊さんの仕業なんでしょ?」

『そうだけどちがーう』


 そうだけどちがう?

 何やら言ってる意味がわからなくなりそうです。

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