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エルフ、認識される

 

「いたぃ……」


 なんか足が削れてるような感じの痛みを受けて私は目を覚ました。いや、

 というか実際足が引きずられてた。ついでに服の首元が掴まれているからか微妙に首が絞まって呼吸がしにくい。


「痛いんだけど⁉︎」


 とりあえず体をばたつかせると私を引きずっていたらしい物は動きを止め、服の首元が解放されてようやくまともな呼吸ができるようになった。空気が美味しい!

 しばらく深呼吸を繰り返して落ち着いたので私を連れて移動して者を見るべく振り返った。


「あ、黒騎士だ」


 私を引き摺っていたのは私が喚び出した武具精霊の黒騎士だった。

 なんかめちゃくちゃ強そうだなぁ。

 周りにサロメディスさんがいないことから黒騎士が追い払ったみたいだ。背負ってる馬鹿でかい棍棒みたいな物には血がべったりと付いてるけど殺してないよね? 追い払っただけだよね?

 でもよく考えたらこんな剣で殴られたら普通の人なら死んでもおかしくないよね?

 いや、そもそも剣じゃなくて刃が潰されてるから棍棒? 棍棒なんだから騎士ってのはおかしいのかしら?


「殺してないよね?」


 話しかけてから気づいたけど言葉通じるのかしら?

 武具精霊は普通の精霊と違って召喚魔法で作り上げられた人工精霊なわけだから命じた事は理解してるはずなんだけど。


「Va」


 私の問いかけに対して黒騎士は片膝を突くようにして座り、鎧を揺らすようにしてゆっくりと頷いてくれた。

 会話成功!

 よかった。これで森を散歩してていきなり死体と出くわすなんてドッキリと遭遇しないですみそうだ。

 とりあえずはドッキリがなくなったことを喜ぼう。

 でもそうなると黒騎士は私をどこに連れて行こうとしてたのかしら?


「どこに連れて行く気だったの?」

「Va」


 今度の問いにも黒騎士は軽やかに答え、指を指した。その先には樹々が生い茂っていたけど伸びた枝や葉の隙間から精霊樹の姿が見えた。

 なるほど、私の住んでる場所も理解してるってわけね。


「シャァァァァ!ゴァ⁉︎」


 目的地もわかって安堵したと共に気を緩めた瞬間、背後の草むらから何かが私に向かって奇声を上げながら飛びかかってきた。途中で変な音に変わってたけど。

 私は全く反応できなかったわけでゆっくりと振り返ると黒騎士の巨大な腕が私の顔の横へ伸ばされていて何かの首を掴んでいた。

 掴んでいたのは巨大なクマだ。あと目つきが悪い。爪なんて掠めただけで私なら死ねる。そんな凶悪そうな爪を振り回して首を掴んでいる黒騎士の腕に攻撃を仕掛けてるみたいだけど傷一つつかない。


「Vaaa!」


 黒騎士が吼えると同時に首を絞めつけていた指があっさりとクマの喉を絞め潰してついでにエグい音が聞こえたし、骨も砕いたらしい。クマは今まで暴れていたのが嘘みたいに糸の切れた人形のようになり身動き一つ取らなくなった。


「……うん、フィズ達にいいお土産になったと考えよう!」

「Va」


 黒騎士、やばい。

 味方でよかった! こんなのに襲われたら私なら死ねる!


 そんな風に考えながら私は精霊樹に向かって歩き出す。その後ろにクマを肩に担いだ黒騎士も続く。


「戻ったらあなたは剣の姿に戻ってくださいね? 威圧感が凄いですし」

「Va」


 黒騎士が首を縦に振りながら私の歩く方向を修正してきた。

 あれ? 私、黒騎士にも方向音痴って認識されてる?

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