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幹部、出会う


「おっぇぇぇぇぇぇ」


 何本木を貫きながら吹き飛ばされたかわからない私は血が流れる腹を抑え、蹲りながら色々と吐き出していた。

 もう意味がわからない。

 この森は危険よ。

 魔王様が欲しがったから手を出したけどおそらくは魔王軍の幹部が数人がかりで挑んでも何人か死にそう。現に私も死にかけてる。

 魔人じゃなかったら絶対死んでるわ。


「この地は手を出すべきじゃないって魔王様に伝えないと……むしろ手を組むべきだわ」


 この森の主はどう見てもあの眠そうな顔をしたエルフみたいね。

 その側にいる精霊、大精霊、竜、それに最後に現れた黒騎士。そのどれもが国をあっさりと傾かせることができる戦力。

 もし、あのエルフと同盟を組むことができたならば魔王軍は計り知れない戦力の強化がされるわ。


 そのためにも早く戻らなくては。

 身体の残りの魔力を傷口へと集め、治癒力を強める。

 これだけの傷を負って魔王軍に戻れば他の幹部達からなにを言われるかわからないけど他の連中が今の私と同じ状況になれば絶対に死ぬと断言できるわ。

 魔王軍の中で一番魔力があり、総合戦闘力がトップであるこのサロメディスでこの有様なんだから他の連中なら即座に死体に変わってるわ。

 そうに決まってる!


 そんなことを考えながら私は痛む体を引きずるようにして移動を開始する。

 どうやら黒騎士が追ってきている気配はない。おそらくは召喚主を守る事を一番に考えているんだろう。今はそれが屈辱的ではあるけどありがたいわ。

 しかし、さっきの黒騎士の攻撃によって吹き飛ばされたせいで居場所がわかる魔道具や方位を知るための魔道具などは全部落としてしまった。しかもあの黒騎士によってどこまで飛ばされたかわからない。


 つまるところ、進むべき方角がわからないわけなのよね。


「魔力もほとんどない。この森を強行突破なんて不可能に近いし」


 なにせ魔人であるはずの私に対しても普通に攻撃してくる魔獣が徘徊するような森だし。

 しかも行きと違いこちらには盾になるゾンビもスケルトンもいない。私が戦えばいいわけだけど一匹二匹ならなんとかなるけどそれ以上はきつい。


「体を休めるしかないわ」


 そう決断した私は手近な木によじ登り、体に纏っていた魔力を全て解き、気配を消して体力と魔力の回復に努めることにした。


「一時間くらいでまともに動けるようになるはず」


 こんな森とはさっさとおさらばしたいわけなんだけど最短を取るならばここでの休息は必須。魔獣が来ないことを祈るしかない。

 瞳を閉じて僅かに微睡んでいると何かを踏みしめるような音が耳に入ってきた。

 本当に嫌になるわ。魔獣が気づかなかったらいいんだけど。

 とりあえずは警戒のために眼を開け、木の上から音がした方へと視線を向ける。

 まさか黒騎士じゃないよね? 黒騎士なら今度こそ死ぬわよ⁉︎

 恐る恐る向けた視線の先には、


「ぴよ」


 巨大な白いもふもふ、ひよこがこちらを見ながら片方の翼を上げてまるで挨拶をするようにしていた。


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