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エルフ、吐きそうになる

 

「うん? 小粒もいたのか」


 私の匂いを嗅いで気持ち悪いくらいのテンションになっていたソラウがようやく落ち着いた状態へとなり、私の他にもフィズがいる事に気付いたようで私の足元で体を震わせている最強種へと視線を向けていた。


「相変わらずちっこいのう? 筋肉が足りんのじゃよ。肉食べてるのか?」


 無駄にポージングを取りながらソラウがドレスの隙間から見えてくる筋肉をアピールしてくる。しかし、フィズはそれを見ても心踊るわけでもなく只々、震えるだけだった。

 そりゃ、顔は美少女顔で身体が筋肉で震えてるような人物、いや、精霊とはあまり接したくないよね。


「ソラウ、まだ男性型なんだね」


 直視すると気分が悪くなるので視界にソラウが入らないようにして会話しよう。姿を直視していたら私も吐く自信がある。


「そりゃ。今の我はディアフロにときめいているからのう! ディアフロは女性型の精霊、だったら恋愛するためには我は男性型になるしかないわ!」


 精霊とは本来性別がない存在らしい。

 でも長年生きた精霊というのは何かしらの世界からの要因を受けて男性型、女性型へと分かれる。

 分かれるといっても別に性別が固定されるわけではなく本人の意思で自由に変えることが出来るって話だ。

 そしてソラウは精霊に恋しやすい精霊で恋に落ちるとその精霊とは反対の性別になるという精霊の中でも変態として見られているような精霊だった。


 ちなみにソラウのいうディアフロというのは光の精霊らしく、ソラウ曰く母性の塊のような精霊との事でソラウはそのディアフロと付き合うべく男らしさを磨いているらしい。

 男らしさ=筋肉という発想はどうかと思うけど本人が楽しいならそれでいいと思う。

 こっちに迷惑が掛からなければ……


「とりあえずさ、その姿だとフィズがずっと吐いてるからいつもの姿に戻ってくれない?」

「なんじゃ、お前も我の姿が気に入らんのか?ディアフロもあまり気に入ってくれんかったしのう」


 そりゃそうだろう。

 筋肉が大好きな人ならいざ知らず、普通の感覚を持つ人や精霊ならドレスがはち切れんばかりの筋肉を持つソラウに好意を持つことなんて皆無だろうしね。

 せめてドレスをやめたらいいと思う。


「まあ、仕方あるまい」


 納得してくれたらしいソラウは体を一瞬だけ光らせると、ムキムキの筋肉が蠢く肉体ではなく、女性らしいほっそりとした体へ、身長が低いとよく言われる私よりも頭一つ分位大きい美少女へと変わっていた。


「うん、その体の方がそのドレスは似合ってるよ」


 先程まではピチピチであった薄い青色々のドレスも少女の体になったおかげでゆとりが生まれ、筋肉も無くなったから吐き気も無くなった。


「なんというか落ち着かんのう」

「いつもの姿に戻っただけじゃない」

「たわけ、この姿は人の子らが勝手に想像した姿に過ぎぬ。我を想像するならもっとナイスバディなのを想像してほしいものじゃな!」


 精霊界ならバインバイじゃぞ、と腰に手を当てて私と同じすとーんな胸を張るソラウ。

 精霊が初めの姿を取る時というのは人や生き物による想像された姿らしい。

 つまり、ソラウの本来の姿はあの吐き気を催すような筋肉質な姿ではなく、今の子供に間違えられそうなチンチクリンな姿なのだ。

 ただ、精霊はある程度は自分の意思で姿を変えることができるらしいのでこれが本来の姿というのはソラウ本人の話を信じればだけど。


「それで? 我を喚び出したのはなんでじゃ? お主も知ってる通り我は氷の精霊。草木の多い場所では害でしかないぞ?」


 ようやく声と容姿があった状態のソラウがそんなことを言ったことに私は笑う。

 ソラウほどの精霊になればこの世界に実体化するだけでも与えるからね。

 現に力を抑えていないソラウの足元の草は凍りついてるわけだし。


「こんなとこで君の力を使おうなんて思ってないよ。単純に見て欲しいものがあったから喚んだんだ」

「そんなことのために喚んだのか…… こう言ってはなんだが世間の召喚術使い泣かせじゃのう」


 何故か呆れられた様な顔をされた。

 え、知りたいことがあれば分かる人に聞くのは普通のことじゃないの?

 頭の上に疑問符を浮かべている私を見てソラウは深いため息を吐き、気にするなと言わんばかりに手を振る。


「で、何が聞きたいんじゃ?」

「ソラウの後ろにある樹について知りたいんだよ」

「後ろじゃと?」


 訝しむようにしてソラウは後ろを振り返り、


「な、精霊樹がなんでこんな所に⁉︎」


 驚きの声を森に響かせた。

 結構大きいんだからもっと早く気付くと思ったんだけどなぁ。

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