エルフ、とる
魔法が効かないスケルトン。
これは魔獣と言っていいのか? ゾンビもそうだけどさ。
『魔獣とは獣の凶暴性が上がったもののことをさすわけじゃからのう。あれらは死霊系の魔獣、言わばアンデッドじゃろう』
「なるほど」
ソラウの説明に納得していると攻撃した精霊さん達が唸るようにして悔しがってた。
『むーほねのくせにー』
『もっとかりょくあげるー』
『かそうかそう』
告げるとともに精霊さん達は再び魔法を連射し始めた。放たれる魔法は先程よりも魔力が多く込められてるしデカイ。
それらが爆音を立てながらスケルトンへと飛んでいき、直撃する。
その度に火柱や強烈な風が発生したりしているから私は思わず木の背後へ隠れた。
隠れていても木が魔法の余波で震える。
精霊さん、本気出したのかな。
少ししてから木が震えたり、魔法が放たれたような気配がなくなったので覗き込むようにして木の横から顔を出して魔法の爆心地を見る。
そこには全く傷などを負ってないスケルトンの姿があった。対照的に魔力をかなり使った精霊さん達は肩で息をしていた。
『もえなーい』
『きれなーい』
『かたーい』
精霊さん達の本気の魔法でも潰せないスケルトン。骨なのに……
「ふ、ふふん!その程度の魔法なんて効かないんだから!それにそのスケルトンは通常のスケルトンの十倍は硬いんだから!」
ふむ、硬くて魔法も効かないとは厄介。
「行きなさい!スケルトン達! 諸悪の根源たるあのエルフを殺すのよ!」
誰が諸悪の根源ですか。
サロメディスさんの声と共にスケルトンがカタカタと音を立てながら動き出した。なんか間抜けな絵面だけどそれなりに動きが速い。
木にしがみつくとあっという間に登ってくる。
『こんどこそー!』
壊れないスケルトンに珍しく怒り、ムキになっている精霊さん達は私がいるにも関わらずに三度魔法をスケルトンが登る木に向かい放つ。
『我もじゃー!』
壊れないスケルトンに興味を持ったのかソラウまで魔法攻撃に参加し始めた。
まぁ、ソラウなら潰せるんじゃないかなぁ。
呆れていると私の立つ木から嫌な音が響きました。
容赦なく木を登ろうとするスケルトン達に向けて魔法を乱発するものだから木が折れそうになってるんだ!
気づいた私は慌てて横の木へと飛び移るとほぼ同時に、先程まで私が立っていた木はへし折れた。
危ない危ない。
「逃がさないわ!」
額の汗を拭っているとサロメディスさんが両手に骨で作られたであろう剣を振るいながら迫ってきた。
慌てて後ろに下がり躱す。
「精霊達はスケルトンに夢中、今の貴方を一人倒すくらい私でもできるのよ!」
まるで精霊がいない私一人なら大したことが無いような言い草! いや、まあ、確かに私は強く無いですからね?
ちょっと考えている間にサロメディスさんはさらに速度を上げて私へと切りかかってきます。
それを私は体を捻ったり、木から木へと飛び移ったりして躱します。
「ところで気になったんですけど……」
「死ね死ね死ね!」
躱しながら気になった事があったので尋ねようとしたのですが私の言葉など耳に入ってないかのように呪いの言葉を吐きながら切りかかってきます。
気になった事というのはサロメディスさんの武器です。
彼女は両手に骨の剣を持っていますがそれとは別に腰に剣を一振り備え付けているみたいなんだよね。
あれが凄く気になる。
「死ね!」
「しつこい」
同じ言葉ばかりで全く会話にならない事にイライラした私はいらただしげに告げると迫る剣を頭を低くして躱す。
ギリギリだったから髪の毛が何本か切り裂かれた。
しかし、お陰で剣を振り切りお腹ががら空きのサロメディスさんが見えたから斬られた髪の毛の恨みを晴らす!
「てい!」
がら空きのサロメディスさんのお腹を思いっきり押す。ついでに気になっていた腰の剣へと手を伸ばし引き抜く。
「へ?」
何が起こったかわからないと言う表情を浮かべたサロメディスさんは空を飛んだ。